12/3(日)HITE2023カンファレンス「HITE RE-UNION!」
科学技術振興機構(JST)社会技術研究開発センター(RISTEX)が2016年から発信してきた公募型研究領域「HITE(Human Information Technology Ecosystem=人と情報のエコシステム)」が、2023年度で8年間の幕を閉じます。ビッグデータを活用したAI、ロボット、IoTなどの情報技術がいよいよ浸透してきた現在において、より豊かで効率のよい社会が実現する期待が高まる一方で、急速な情報技術の発達はさまざまな問題を私たちの社会にもたらすとも考えられています。その正と負の両面を予見し、いかに人間社会や自然環境といった私たちを取り巻く環境となじませていくか、社会の理解のもとに技術と制度を設計していくための本研究開発領域に、AI、哲学、法学、サイエンスコミュニケーションまで、多様な領域の精鋭が集まり、24の研究プロジェクトが誕生しました。
人とAIがよりよい関係を築ける方法とは何か。これからの環境課題、社会課題に対して、人とAIはどのような共進化を構築できるのか。この度、8年にわたりそれらのテーマを探求してきたHITE研究プロジェクトが再結集し、これまでの実績を振り返るとともに、新たな未来提言を行います。提言では、近代以降の倫理観にとどまらず、動植物やAIも一種の社会の構成要員と捉えたマルチスピーシーズ的・脱人間中心主義の視点など、ユニークな研究事例などをもとに、これからの知のありかたとは何かを問いかけます。
開催概要
■日時:2023年12月3日(日)10:00~18:00 ※オンラインは15:40まで
■会場:森ビルアカデミーヒルズ49F または オンライン(※リアル/オンラインのハイブリッド開催)
■参加費:無料
■申し込み:事前申し込み必要
【会場参加】お申し込みはこちらから
【オンライン参加】お申し込みはこちらから
■主催:科学技術振興機構社会技術研究開発センター
■企画:HITE-Media/一般社団法人Whole Universe
■お問い合わせ先:「人と情報のエコシステム」研究開発領域事務局
e-mail: info-ecosystem《at》jst.go.jp 【《at》を@に変更してください】
プログラム
A. HITE 2016-2023 活動報告|10:00 - 12:00
B. エコシステム創出への未来提言|13:00 - 15:45
C. HITE研究者フラッシュトーク|16:00 - 18:00
A. HITE 2016-2023 活動報告|10:00 - 12:00
(1)10:00 - 10:15「HITE総括 人とAIが共進化するエコシステム」
HITEの研究領域を総括することで、発足当時にHITEが掲げたビジョンとその活動実績を振り返ります。
登壇者:國領二郎(慶應義塾大学 総合政策学部 教授)
(2)10:15 - 10:55「人とAIの8年間 - 2016~2023」
HITEが発足した2016年から2023年まで、人とAIの関係は驚くべきスピードで変化してきました。AIを取り巻く「倫理」に深く関わってきた専門家3名が8年間の動向を読み解きます。
登壇者:松原仁(東京大学 大学院情報理工学系研究科 教授)
江間有沙(東京大学 国際高等研究所 東京カレッジ 准教授)
モデレーター:城山英明(東京大学大学院 法学政治学研究科 教授)
(3)10:55 - 11:05「 HITE外部連携事例① ムーンショット、他」
HITEは、研究プロジェクトでの知見を社会に生かすべく、さまざまな外部連携を行ってきました。ムーンショット型研究開発制度(かつてのアポロ計画のように未来社会を展望し、困難だが実現すれば大きなインパクトが期待される野心的な目標を掲げた研究開発)をはじめ、さまざまな連携事例を紹介します。
登壇者:萩田紀博(大阪芸術大学 アートサイエンス学科教授)
國領二郎(慶應義塾大学 総合政策学部 教授)
(4)11:05 - 11:45「HITE外部連携事例② ERATO~ 脳AIとELSIの実践」
外部連携事例のひとつ、脳とAIを接続することによって人間の脳がもつ可能性を広げることを目指す「ERATO 池谷脳AI融合プロジェクト」では、約2年間にわたってELSI(Ethical, Legal, and Social Implications=倫理的、法的、社会的問題)についての議論と実践を行いました。そこではどんな方法論が見出されたのか、プロジェクト参加者たちが紹介します。
登壇者:池谷裕二(東京大学 薬学部教授)
標葉隆馬(大阪大学 社会技術共創研究センター 准教授)
鈴木貴之(東京大学大学院 総合文化研究科 教授)
モデレーター:城山英明(東京大学大学院 法学政治学研究科 教授)
(5)11:45 - 12:00「HITEのメディア・コミュニケーション戦略」
HITEは研究者にとどまらず、広く多くの人とのコミュニケーションを図るメディア戦略をとってきました。その広報活動に始まり、研究プロジェクトの一環で発表され、想定を超える大きな反響を得た「END展 死から問うあなたの人生の物語」(主催|東急株式会社、東急ラヴィエール株式会社、一般社団法人Whole Universe)のキュレーターがその戦略の意義と成果について語ります。
登壇者:塚田有那(一般社団法人Whole Universe 代表理事)
12:00 - 13:00 休憩
B. エコシステム創出への未来提言|13:00 - 15:45
(6)13:00 - 13:55 クロストーク①
「生成AIと人間の共進化を促すプラットフォーム」
生成AIが研究開発や産業、教育、芸術にいたるまでさまざまな影響を及ぼすなか、今後はどんなELSI(倫理的・法的・社会的な課題)が求められるのでしょうか。人工知能学会倫理委員会委員長の栗原聡氏を迎え、HITE総括の國領二郎氏、副総括の城山英明氏とともに議論します。
登壇者:國領二郎(慶應義塾大学 総合政策学部 教授)
城山英明(東京大学大学院 法学政治学研究科 教授)
栗原聡(慶應義塾大学理工学部 教授)
(7)14:05 - 15:40 クロストーク②
「マルチスピーシーズ視点で考える、人とAIのエコシステム」
人とAIが関係するうえで、よりよい状態とはどのようなものか。その問いに対し「人間とは何か」、「人間にとってのウェルビーイング(個人が肉体的、精神的、社会的に満たされた状態)とは何か」といった議論が度々なされてきました。一方、そこで語られる「人間」という観点自体が、近代社会や西洋哲学が築いたものだとすれば、いま日本で暮らす私たちは、アジア起点、または脱人間中心の視点をもって新たな「倫理」を目指すことができるかもしれません。法学から人類学、情報学、そして美術家が集い、AIという異種とともに生きる時代の知のありかたを問いかけます。
登壇者:稲谷龍彦(京都大学 大学院法学研究科 教授)
石倉敏明(秋田公立美術大学 准教授)
ドミニク・チェン(早稲田大学文化構想学部 教授)
大小島真木(美術家)
モデレーター:塚田有那(一般社団法人Whole Universe 代表理事)
15:40 - 16:00 休憩
C. HITE研究者フラッシュトーク|16:00 - 18:00
HITEに集まった24の研究プロジェクトの多様な研究者たちが、「いま」の研究活動を3分で発信していくフラッシュトーク。人とAIのエコシステムの創出を目指してきた、異領域の研究者が再び一堂に会します。また同会場では来場された参加者との歓談の時間も交えるなど、この場が新たなネットワークづくりの契機となるでしょう。
(※本プログラムのオンライン配信はありません)
登壇者: 永瀬伸子(お茶の水女子大学 人間生活学科 教授)
松浦和也(東洋大学文学部 教授)
大澤博隆(慶應義塾大学 理工学部 准教授・SFプロトタイピング)
鷲田祐一(一橋大学大学院経営管理研究科 教授)
橋田浩一(東京大学 大学院情報理工学系研究科 教授)
小長谷明彦(恵泉女学園大学 人文学部 客員教授)
葭田貴子(東京工業大学工学院 准教授)
川口大司(東京大学大学院経済学研究科 教授)
尾藤誠司(内科医、東京医療センター)
高瀬堅吉(中央大学 文学部 人文社会学科 教授)
庄司昌彦(武蔵大学 教授)
登壇者
國領二郎(こくりょう・じろう)
慶應義塾大学 総合政策学部 教授
「人と情報のエコシステム」領域総括
1982年東京大学経済学部卒。日本電信電話公社入社。1992年ハーバード・ビジネス・スクール経営学博士。1993年慶應義塾大学大学院経営管理研究科助教授。2000年同教授。2003年同大学環境情報学部教授、2006年同大学総合政策学部教授(現在に至る)などを経て、2009年より2013年総合政策学部長、2013年より2021年5月慶應義塾常任理事を務める。
城山英明(しろやま・ひであき)
東京大学大学院 法学政治学研究科 教授
「人と情報のエコシステム」領域総括補佐
公共政策大学院、未来ビジョン研究センター教授。専門は行政学で、国際行政、科学技術と公共政策、政策形成プロセスについて研究している。主要著作に、『国際行政論』、『科学技術と政治』、『中央省庁の政策形成過程』、『福島原発事故と複合リスク・ガバナンス』、『グローバル保健ガバナンス』等がある。
松原仁(まつばら・ひとし)
東京大学 大学院情報理工学系研究科 教授
「人と情報のエコシステム」領域アドバイザー
1986年東大大学院情報工学専攻博士課程修了。工学博士。同年電子技術総合研究所入所。2000年公立はこだて未来大学教授。2020年東大次世代知能科学研究センター教授。元人工知能学会会長。現情報処理学会副会長。著書に「鉄腕アトムは実現できるか」、「AIに心は宿るのか」など
江間有沙(えま・ありさ)
東京大学国際高等研究所東京カレッジ 准教授
2017年1月より国立研究開発法人理化学研究所革新知能統合研究センター客員研究員。専門は科学技術社会論(STS)。人工知能やロボットを含む情報技術と社会の関係について研究。主著は『AI社会の歩き方-人工知能とどう付き合うか』(化学同人2019年)、『絵と図で分かるAIと社会』(技術評論社、2021年)
多様な価値への気づきを支援するシステムとその研究体制の構築
萩田紀博(はぎた・のりひろ)
大阪芸術大学 アートサイエンス学科 教授 工学博士
1976年慶應義塾大学工学部卒。1978年同大学院工学研究科修士課程修了。1978年電電公社武蔵野通研入所、NTT基礎研・コミュニケーション科学研、ATR知能ロボティクス研究所長等を経て2017年から大阪芸術大学アートサイエンス学科教授。この間、大阪大学大学院招聘教授、奈良先端科学技術大学院大学客員教授を歴任。2017年から2023年日本学術会議会員(情報学)。2015年環境大臣賞等を受賞。
池谷裕二(いけがや・ゆうじ)
東京大学 大学院薬学系研究科 教授
1998年に東京大学にて薬学博士号を取得。コロンビア大学への留学をはさみ、2014年より東京大学薬学部教授。神経生理学を専門とし、脳の健康や老化について探究する。2018年よりERATO脳AI融合プロジェクトの代表を務め、AIチップの脳移植により新たな知能の開拓を目指す。
ERATO脳AI融合プロジェクト
標葉 隆馬(しねは・りゅうま)
大阪大学 社会技術共創研究センター 准教授
専門は科学社会学・科学技術政策論。科学技術の倫理的・法的・社会的課題 (ELSI) の可視化、メディア分析、コミュニケーションデザイン、政策分析などを組み合わせながら、複数のプロジェクトを主宰。主著に『責任ある科学技術ガバナンス概論』(ナカニシヤ出版 2020)など。
情報技術・分子ロボティクスを対象とした議題共創のための
リアルタイム・テクノロジーアセスメントの構築
鈴木貴之(すずき・たかゆき)
東京大学大学院総合文化研究科 教授
専門は心の哲学。RISTEX-HITEプログラムで、2018年より2022年まで「人と情報テクノロジーの共生のための人工知能哲学2.0の構築」プロジェクトに取り組む。主な著書に『人工知能とどうつきあうか--哲学から考える』(編著、勁草書房、2023年)など。
人と情報テクノロジーの共生のための人工知能の哲学2.0の構築
栗原聡(くりはら・さとし)
慶應義塾大学理工学部 教授 共生知能創発社会研究センター・センター長
博士(工学)。NTT研究所、大阪大学、電気通信大学を経て、2018年より現職。JSTPRESTO「社会変革基盤」領域統括、人工知能学会・副会長、TEZUKA2023総合プロデューサーなど。著書『AI兵器と未来社会キラーロボットの正体』(朝日新書)、編集『人工知能学事典』(共立出版、2017)等、多数。
稲谷龍彦(いなたに・たつひこ)
京都大学大学院法学研究科 教授
理化学研究所AIP客員研究員。グローバル化する企業犯罪対応とAI・ロボットなどの先端科学技術のガバナンスが主要な研究テーマ。認知科学・経済学・文化人類学・現代思想など、多様な分野の成果を法学研究に応用する学際的な研究手法を採用している。学外公益活動として、デジタル庁デジタル関係制度改革検討会委員などを務める。
マルチ・スピーシーズ社会における法的責任分配原理
石倉敏明(いしくら・としあき)
秋田公立美術大学 准教授
人類学者。1974 年東京都生まれ。秋田公立美術大学アーツ&ルーツ専攻准教授。 ダージリン、シッキム、カトマンドゥ、東北日本各地でフィールドワークを行う。環太平洋の比較神話学や芸術人類学の研究に基づき、神話集、論考等を発表。美術作家、音楽家らとの共同制作活動も多数。2019年、第58回ヴェネチア・ビエンナーレ国際美術展の日本館展示「Cosmo-Eggs 宇宙の卵」に参加。 共著に『野生めぐり列島神話の源流に触れる12の旅』『Lexicon 現代人類学』など。
ドミニク・チェン
早稲田大学文化構想学部 教授
1981年生まれ。博士(学際情報学)。NTT Inter Communication Center研究員、株式会社ディヴィデュアル共同創業者を経て、現在は早稲田大学文学学術院教授。カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)Design/Media Arts専攻を卒業後、NPOクリエイティブ・コモンズ・ジャパン(現・コモンスフィア)を仲間と立ち上げ、自由なインターネット文化の醸成に努める。近年では、21_21 DESIGN SIGHT括「トランスレーションズ展ー『わかりあえなさ』をわかりあおう」(2020/2021)の展示ディレクター、グッドデザイン賞審査員(2016〜)を務めるほか、人と微生物が会話できる糠床発酵ロボット「Nukabot」(Ferment Media Research)の研究開発や、不特定多数の遺言の執筆プロセスを集めたインスタレーション「Last Words/Type Trace」(遠藤拓己とのdividual inc. 名義)の制作等、国内外で展示を行いながら、テクノロジーと人間、そして自然存在の関係性を研究している。
大小島真木(おおこじま・まき)
東京を拠点に活動するアーティストおよびアートユニット
異なるものたちの環世界、その「あいだ」に立ち、絡まり合う生と死の諸相を描くことを追求している。インド、ポーランド、中国、メキシコ、フランス等で滞在制作。2017年にはTera Ocean財団が率いる科学探査船タラ号太平洋プロジェクトに参加。近年は美術館、ギャラリー等における展示の他、舞台美術等も手掛ける。主な出版物として『鯨の目』(museum shop T)等。2023年より、かねてより制作に関わっていた編集者・辻陽介との本格的な協働制作体制に入り、以降、名称をそのままに、アートユニットとして活動している。
塚田有那(つかだ・ありな)
一般社団法人Whole Universe 代表理事 編集者、キュレーター
世界のアートサイエンスを伝えるメディア「Bound Baw」編集長。2010年、サイエンスと異分野をつなぐプロジェクト「SYNAPSE 」を若手研究者と共に始動。 2016~2021年、JST/RISTEX 「人と情報のエコシステム(HITE)」のメディア戦略を担当。2021年、展覧会「END展 死×テクノロジー×未来=?」(ANB Tokyo)、翌年「END展 あなたの人生の物語」(東急ラヴィエールと共催)を主催する。2021年より、岩手県遠野市で民俗・芸能・音楽をつなぐカル チャーイベント「遠野巡灯籠木(トオノメグリトロゲ)」を主催。近著に『RE-END 死から問うテクノロジーと社会』(高橋ミレイと共同編著、 2021年人工知能学会AI ELSI賞)、『ART SCIENCE is. アートサイエンスが導く世界の変容』(共にビー・エヌ・エ ヌ)、共著に『情報環世界 - 身体と AI の間であそぶガイドブック』(NTT出版)、 編集書籍に長谷川愛『20XX年の革命家になるには-スペキュラティヴ・デザインの授業』(ビー ・エヌ・エヌ)がある。