JSTトップ>JSTnews>バックナンバー一覧 2013年度>2013年4月号
JSTnewsは、独立行政法人科学技術振興機構(略称JST)の広報誌です。JSTの活動と、最新の科学技術・産学官連携・理数教育などのニュースを、わかりやすくご紹介します。
P.03 低炭素社会の実現を目指す挑戦的研究開発
ゲームチェンジング・テクノロジー
この200年余にわたって人類社会が排出し続けた温室効果ガスを着実に削減していくには、新たな発想や研究手法、画期的な原理の構築が求められている。JSTの「先端的低炭素化技術開発(ALCA※事業)」は、ハイリスクだが独創的な「ゲームチェンンジング・テクノロジー」によって低炭素社会を実現しようという挑戦的な試みである。化石資源に頼り切ってきたこれまでのエネルギー社会の“ゲーム”に終わりを告げ、全く新しい概念とルールを自ら作り出し、低炭素社会の実現を確実なものとしようとするのがゲームチェンジング・テクノロジーだ。例えば、500キロ走れる電気自動車を目指して、新しい材料を利用する新型の高性能なバッテリーの開発。テレビやパソコンなどの利用者の両目だけに集中的に画像情報を送ろうという賢い超低消費電力のディスプレイ(表示装置)の開発が進む。これまでの世界をひっくり返すようなゲームチェンジングを目指す研究を紹介する。※Advanced Low Carbon Technology R&D Programの略
P.08 特許出願とチョコ菓子缶のデザインも
脳をだます「錯視」を数学的に解明
まずは、本誌表紙をご覧いただきたい。ここに描かれた画像は静止画像であるにもかかわらず、ハートが動いて見えるような不思議な感覚を引き起こす。これが「錯視」の世界だ。錯視の多くはこれまで研究者が試行錯誤の中で発見してきたものだが、「数学的処理とコンピューターの活用」という科学的なアプローチでそのメカニズムの解明に挑戦しているのが、東京大学大学院数理科学研究科の新井仁之(ひとし)教授だ。その研究は、錯視の数学的解明に終わらず、チョコレートのパッケージデザインに応用され評判となっている。
P.12 「エッジ効果」を抑制して遮音壁を低くできる装置を開発
新理論で騒音を大幅に低減
道路や鉄道、工事現場などの騒音対策として用いられている遮音壁。背の高い壁は威圧的で、近隣に圧迫感を与え、日照を遮り街の美観も損ねてきた。この問題を解決する優れものが登場する。関西大学環境都市工学部長の河井康人教授が提唱する「エッジ効果抑制理論」に基づいて開発した遮音壁用の先端装置だ。
P.14 科学技術振興機構の最近のニュースから…… News Clip
P.16 戦略的創造研究推進事業さきがけ「 光エネルギーと物質変換」領域研究課題「光合成による高効率エネルギー変換と水の酸化機構の解明」
趣味も遊びもすべて研究につながる
愛媛大学プロテオサイエンスセンター 生体超分子研究部門 杉浦 美羽 准教授
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ハートがちりばめられた絵。よく見ると中央の大きなハートが浮き上がっているように見える。さらに手に取って斜めに動かすと、大きなハートがドキドキと鼓動を始める。この不思議な絵は「錯視」と呼ばれるもので、東京大学の新井仁之教授とパートナーの新井しのぶさんの作品。新井教授はこれまで経験的に作られてきた「錯視」のメカニズムを数理モデル化し、コンピューター処理で作成できる方法を確立した。(→P8-11 特集2に詳細記事)