成果概要

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子どもの虐待・抑うつ・自殺ゼロ化社会[4] 技術実装・普及に向けたELSI課題への対応

2025年度までの進捗状況

1. 概要

子ども・若者の高ストレス状況を解明・解消する先端技の社会的実装においては、新技術のガバナンスに関わる問題、当事者・関係者のケア、新しいバイオマーカーが社会に及ぼす影響(例:保険制度への影響など)、高すぎる期待のマネジメントなど多様な問題が予想されます。そのため、関連技術の開発とその利活用に潜む倫理的・法的・社会的課題(ELSI)や責任あるイノベーション(RRI)への対応が必要不可欠となります。本研究では、複数の分析アプローチを併用したELSI/RRI議題抽出を行い、生理的・心理的マーカーによるストレスやレジリエンスの測定に対する社会的認識の把握と専門家の意見とのギャップの特定による社会的受容の障壁の理解、差別・スティグマ化などを含む潜在的なリスクや、センシティブなデータの管理に関わる課題群の早期の探索的分析を進め、ELSI/RRI議題抽出を実施し、当該研究のシーズ活用に関わるELSI社会的インパクトの可視化・言語化を行います。

当事者(子ども・若者)及び関係者(家族・ケアギバー・専門家等)への適切な普及

2. これまでの主な成果

2025年度は、国内外の先行研究調査、日本における関連法制度・指針の現況整理、定量的メディア分析、質問紙調査、インタビュー調査等を通じ、関連技術に内在するELSI/RRI上の課題抽出を段階的に進めてきました。特に、エピジェネティクス指標や自殺・抑うつに関わる研究成果が社会に提示・活用される際に生じ得る倫理的・社会的影響について、海外における議論動向と日本の制度的・社会的文脈との差異に着目した整理を行いました。
 特に重要な調査の一つとして、子どもの頃にメンタルヘルスの不調を経験したことのある当事者とそうした子どもを持ったことのある親、計32名を対象としたグループインタビューがあります。

研究開発項目4の実施状況(実用化検討)

インタビュー調査からは、「支援につながるのであれば知りたい」という前向きな受け止めがある一方で、「責任を個人や家庭に帰されるのではないか」「将来が決めつけられるのではないか」といった懸念が強く存在することが明らかとなりました。さらには当事者グループと親グループで同意や子どもの自己決定への考え方、さらに教師への情報共有の是非に差異があったほか、エピジェネティクスに遺伝性を想定する理解が市民の間で想像以上に強固であること、またネガティブな検査結果を「特性」としてニュートラル・ポジティブな形で取り扱ってほしいという期待など、多くの示唆を得られました。
そして、一連の調査・検討を踏まえ、本課題では、研究段階から社会実装段階までを視野に入れた倫理・行動ガイドラインの作成を行いました。本ガイドラインは、研究成果や生体指標を扱う際の抽象的な倫理原則を示すものではなく、「どのような情報を、誰に、どの段階で、どのように伝えるか」という実務的観点から整理しています。さらに、ガイドラインで規定した本プロジェクトとしての倫理・行動指針をより市民が容易に理解・想像できるよう、「生体データによる子どものメンタルヘルス検査の社会実装に伴って私たちが避けたい未来のシナリオ」を作成しプロジェクトWebサイトにて公開しています。

研究開発項目4の実施状況(ガイドライン骨子)

3. 今後の展開

今後の展開としては、今年度得られた成果を学術的知見としてまとめるだけでなく、ワーストシナリオにも対応できる制度的スキームの洞察を行っていきます。更に、コンソーシアムの構築を行い、本プロジェクトの成果がより広く普及するような社会的基盤の作成を行っていきます。

(標葉 隆馬:慶應義塾大学)