成果概要
子どもの好奇心・個性を守り、躍動的な社会を実現する[2] 芸術介入効果の「見える化」
2023年度までの進捗状況
1. 概要
本課題では、自閉スペクトラム症(ASD)の特性や社会性に課題のある思春期の児童生徒が、安心しながら、社会性を向上させるような芸術活動を提供することを目的に、芸術活動がもたらすこころの安寧や社会的好奇心の向上を捉えることができる内分泌的、生体工学的な客観的指標の確立を目指す。

- 子どもを対象に美術または音楽の対面/リモートアートワークショップ(AWS)を開催し、唾液中ホルモンの変動や身体同調、心拍データ収集を継続
- ウェアラブル小型心電計測システムの小型化、実装応用
- 対面検知アプリのアップデート、リアルフィードバックシステムの開発
- 成人を対象とした対面AWSにおける唾液中ホルモンの変動について、論文にまとめ、投稿
- 芸術活動のコンテンツや実施プロトコル検討
- 地域のホールと連携しAWSイベントにて保護者カフェを開催し、作品展示や知見のフィードバック
2. これまでの主な成果
<アートワークショップ>
定型発達の同年代の子どもに比べ、ASDの子どもは、対面/リモートAWSに参加した際の唾液中オキシトシン、コルチゾール濃度変化が大きいことが2022年度までの取り組みでわかってきている。これを踏まえ、2023年度は、ASDの子どもを対象としたAWS中の唾液中オキシトシン、コルチゾール濃度変化のデータ収集を継続した。その結果、ASDの特性のある子どもの場合、リモートのAWSは4名以下の人数で実施することでストレスが緩和し、またより満足感が得られる可能性が示唆された。これにより、少人数でよりインタラクションが生じやすい環境での芸術作品作りが、内在性のオキシトシンの分泌を高めると考えられる。
なお、Ethernetでは通信レイテンシが大きく、将来的にはより低遅延な通信機構を用いることが必要になることも明らかになった。従来よりも低レイテンシの高速シリアル通信に関する研究開発を進めており、これをさらに推進することで、将来のより大規模かつ実用的な量子誤り訂正システムの実現に貢献できる。

また音楽コンテンツ(Desktop Music)を用いた対面形式のAWSを個別、協働創作の2種類実施した。個別と協働創作いずれにおいても、参加前後に実施したVisual-Analog Scaleでは、創作活動後に幸福度が高まり、リラックス度が増したと回答した。また唾液中オキシトシン濃度の上昇と、コルチゾール濃度の下降が見られた。特に、じっくり創作し、かつファシリテーターとのやり取りが多くなる個別創作活動において、唾液中オキシトシン濃度が有意に上昇した。この成果をまとめ、論文を投稿した。

<対面検知アプリ>
機能開発を追加しより運用に適した形に改善した。またリアルフィードバックシステムを開発し、AWS中の同調性の高まりを促進する仕組みの検討を開始した。
<心電計測器>
子ども向け、またプライバシーに配慮した計測への応用のため、計測機器やソフトウェアの改変を行なった。
3. 今後の展開
これまでの結果では、唾液中ホルモンの変動がAWS中の参加者同士のインタラクションや絆を反映する可能性が示されている。ASDの子どもにより適したAWSの開発を進めながら、今後、音楽鑑賞等のコンテンツを追加し、芸術活動そのもののストレス緩和作用や満足感、達成感を捉えられるかも調べる。これにより、芸術活動がもたらす効果を示す指標としての有用性の検討を継続し、加えて、学校をはじめ、社会実装を促進するための地域ホール等との連携も強化する。