成果概要

多様なこころを脳と身体性機能に基づいてつなぐ「自在ホンヤク機」の開発4 and 5. 「自在ホンヤク機」の社会実装(発達障害 / GIGA端末)

2022年度までの進捗状況

1.概要

研究開発テーマ4と5では、「自在ホンヤク機」の社会実装を目指し、それぞれの利用場面に応じて生じる課題を明らかにします。
研究開発テーマ4では、自閉症スペクトラム(ASD)など発達障害がある人々のコミュニケーション支援の場面で「自在ホンヤク機」を活用します。これによって、障害がある人々の社会的包摂という観点から「自在ホンヤク機」の社会実装を試みます。

「自在ホンヤク機」はコミュニケーションを支援します。
▲ 「自在ホンヤク機」はコミュニケーションを支援します。

研究開発テーマ5では、小中学校などの教育現場で「自在ホンヤク機」を活用することを目指します。文部科学省の主導で、全国の小中学校では学習用のタブレット端末が配布され、児童生徒の個性に応じた教育が目指されています。「自在ホンヤク機」の一部機能を搭載し、教育現場における社会実装を試みます。
こうした社会実装のためには、発達障害当事者、支援者、児童生徒、教員などにとって有益な機能を開発することが課題となっています。研究開発テーマ4と5は、発達障害当事者や教員との緊密な連携を通して、「自在ホンヤク機」の社会実装上の課題を解決します。

2.2022年度までの成果

  1. 当事者の声を研究開発者に届ける方策のデザインと実践
  2. 被験者への負担が小さくリアルタイム計測が可能な脳波・行動計測のシステムを構築

成果1では、専門家間の合意形成法「デルファイ法」を応用し、発達障害がある人々(当事者)と開発者が「自在ホンヤク機」の開発に共同参画する手法をデザインしました。
これを実践することで、開発者の考えや知識・経験に加えて、当事者の豊かな観点・経験知を研究開発に反映させるモデルケースとなります。

デルファイ法の概要(成果1)
▲ デルファイ法の概要(成果1

成果2では、脳波計測の手法を改善して、小さな負担で多角的に脳波や行動データを同時記録するシステムを開発・導入しました。
「自在ホンヤク機」の研究開発では、発達障害当事者など利用者の脳波を、主要なデータとして使います。これまでの計測手法では、電極設置に時間がかかり、当事者にとって高負担でした。
そこで、頭に被るだけの脳波計測器材を導入するとともに、リアルタイム計測や複数人の同時計測を可能にしました。これにより、対人コミュニケーションをしている最中の利用者の脳波のより多角的な分析が期待されます。
このように、発達障害当事者などと密に連携することを通して、利用者に寄り添った「自在ホンヤク機」の研究と開発を進めています。

導入した脳波計測器材(成果2)
▲ 導入した脳波計測器材(成果2

3.今後の展開

引き続き、発達障害当事者との連携・協働を進め、「自在ホンヤク機」に搭載すべき機能の選定および性能評価を、当事者とともに進めていきます。
学校における実装(GIGA端末)についても、関係機関と連携を深め、モデル校にて試験的に導入することを中長期的に計画しています。
(東京大学・熊谷晋一郎、昭和大学・中村元昭
東北大学・筒井健一郎)