成果概要

台風制御に必要な予測と監視に貢献する海の無人機開発3. 強風雨波浪環境にある熱帯北西太平洋域での試験運用

2022年度までの進捗状況

1.概要

台風発生発達域である熱帯北西太平洋にてVM(Virtual Mooring)ドローン試作機を展開後、所要の短期運用試験を実施後に回収し、その後の技術改良に供する(第2年度)と共に、台風中心周辺域での位置制御機能や観測データ取得を評価検証する長期外洋試験を実施(第3年度)する研究開発テーマです。
初(2022)年度は、VMドローン試作2号機による短期外洋試験を行う海洋地球研究船「みらい」2023年度熱帯北西太平洋航海(6~7月予定)に対し、当該試験観測に係る関係国との国際事前調整を行った上で、MSR申請(Marine Scientific Research、外国の管轄水域における海洋の科学的調査の同意申請)を行いました。

図1 VMドローン試作機の外洋試験に用いる海洋地球研究船「みらい」。VMドローンの海上展開や揚収作業には船尾甲板上のAフレームクレーン(青破線)等を用い、船体中央のCバンド二重偏波レーダー(黄破線)ほか大気海洋観測装置によりVMドローン試作機の取得データ検証を実施予定です。
図1 VMドローン試作機の外洋試験に用いる海洋地球研究船「みらい」。VMドローンの海上展開や揚収作業には船尾甲板上のAフレームクレーン(青破線)等を用い、船体中央のCバンド二重偏波レーダー(黄破線)ほか大気海洋観測装置によりVMドローン試作機の取得データ検証を実施予定です。

2.2022年度までの成果

2022年度における具体的な実施肉容とその成果は次の通りです。

  • ①VMドローン試作2号機による初の外洋試験を行うため、海洋地球研究船「みらい」2023年度熱帯北西太平洋航海(MR23-05、6~7月予定)の準備作業として、試験観測に係る関係国との国際事前調整を行った上でMSR申請を文部科学省(経由で外務省)へ提出しました。
  • ②当該「みらい」航海にて同時に展開予定のWave Gliderや漂流ブイなど、主課題や相乗り課題担当者と緊密に情報交換の上で、MSR申請と過不足や矛盾がないようVMドローン短期外洋試験計画案を策定しました。
  • ③航海中におけるVMドローン試作機の海上展開や揚収など、「みらい」甲板作業手順を設定し、代表機関内における研究安全委員会(研究観測の実施内容を機関内の専門家委員が安全上の観点から検討し、機関として当該観測の実施可否を判断する会議体)と事前調整を行いました。
図2 気候学的な台風発生地点(赤丸、1951-2021年、デジタル台風*1より作成)(左図)です。海洋地球研究船「みらい」2023/2024年航海の予定航路とVMドローン外洋試験を行います。フィリピン東方沖の定点候補海域(右図)です。
図2 気候学的な台風発生地点(赤丸、1951-2021年、デジタル台風*1より作成)(左図)です。海洋地球研究船「みらい」2023/2024年航海の予定航路とVMドローン外洋試験を行います。フィリピン東方沖の定点候補海域(右図)です。
*1 http://agora.ex.nii.ac.jp/digital-typhoon/reference/birthplace.html.ja
図3 2020年「みらい」航海に用いられたWave Gliderのフロート上にある大気観測センサー類(左図)、および Wave Glider 3機の配置図(右図)。停船中の「みらい」(赤丸)の東西および北の各50kmにWave Gliderを配置し、観測データ検証を実施(R/V Mirai Cruise Report MR20-E01*1)。2023/2024年の外洋試験でも類似した構成でVMドローン観測の検証を計画中です。
図3 2020年「みらい」航海に用いられたWave Gliderのフロート上にある大気観測センサー類(左図)、および Wave Glider 3機の配置図(右図)。停船中の「みらい」(赤丸)の東西および北の各50kmにWave Gliderを配置し、観測データ検証を実施(R/V Mirai Cruise Report MR20-E01*1)。2023/2024年の外洋試験でも類似した構成でVMドローン観測の検証を計画中です。
*1 https://www.godac.jamstec.go.jp/cr_catalog/external/metadata/MR20-E01_all/file/MR20-E01_all.pdf

3.今後の展開

海洋地球研究船「みらい」熱帯北西太平洋航海(6~7月予定)におけるVMドローン試作機の短期外洋試験(フィリピン東方沖、約1週間)を実施します。試験実施に当たっては、代表機関における試験実施に係る事前の安全性の評価検討手続きや、船上におけるVMドローン試作機の展開や揚収に関わる甲板作業、ならびに外洋試験実施中における「みらい」操船に係る乗組員調整等を行います。
さらに、最終(2024)年度に実施する長期外洋試験(約1ヶ月間)に用いる「みらい」熱帯北西太平洋航海(6~7月予定)に対しても、当該試験観測に係る関係国との国際事前調整を行った上でMSR申請を文部科学省(経由で外務省)へ提出します。