成果概要

台風制御に必要な予測と監視に貢献する海の無人機開発1. 強風雨波浪環境対応のVirtual Mooring(VM)技術開発

2022年度までの進捗状況

1.概要

海上無人観測機(USV: Unmanned Surface Vehicle) として、台風中心付近で運用可能な船体、マスト、セイル等の基本設計に加え、海上風および海流に基づき自律的な航行と仮想係留(VM: Virtual Mooring)を可能とする技術開発であり、本プロジェクトの最も基本的な研究開発テーマです。VM機能や船体単体の技術開発はもちろんのこと、大気海洋観測センサー運用試験のために船体艤装が必要なため、研究開発テーマ2とも緊密に連携しています。
初(2022)年度は、台風中心周辺の強風波浪環境下でも自律的な船体制御を可能とするVM機能および帆船型船体の基本設計を行い、試作ゼロ号機による水槽試験(船体強度確認等)や、試作l号機による国内沿岸海域試験(船体制御機能確認等)を繰り返し実施して改良を重ねた上で次(2023)年度夏季に計画している熱帯北西太平洋(フィリピン東方沖)における短期外洋試験(1週間程度)に向けた準備を進めました。

図1 VMドローン試作機の本体概要。今後の検証により仕様変更の可能性あり。
図1 VMドローン試作機の本体概要。今後の検証により仕様変更の可能性あり。

2.2022年度までの成果

2022年度における具体的な実施肉容とその成果は次の通りです。

  • ① 民間企業からの協力も仰ぎ、CFD(数値流体力学)シミュレーション等に基づく無人帆船型船体の基本設計を行い、試作ゼロ号機(船体構造のみ)および試作1号機(マスト、セイル、キール、ラダー、船体制御用電装品など帆船型無人機としての基本装備を艤装)を製作しました。
  • ② 強風波浪環境下における船体強度や帆走時の船体周りに掛かる外力等を確認するため、代表機関の持つ多目的水槽(長さ 40m×幅 4m×x深さ 2m)を用い、試作ゼロ号機による水槽試験を実施しました。例えば、波高 10mを模擬した高さから水槽へ落下を繰り返し、船体の変形や破損など船体強度を確認したほか、自走計測代車により速度や角度を変えて試作機を高速曳航し、帆走時における造波低抗やマスト周りの六軸応力等を計測しました。
図2 VMドローン試作ゼロ号機による水槽試験の様子です。クレーンで天井付近まで吊上げた試作機(白破線)を水槽へ落下させる強度試験(左図)です。試作機マスト位置に六軸カセンサーを付け、計測台車を高速で水槽上を走らす曳航試験(右図)です。
図2 VMドローン試作ゼロ号機による水槽試験の様子です。クレーンで天井付近まで吊上げた試作機(白破線)を水槽へ落下させる強度試験(左図)です。試作機マスト位置に六軸カセンサーを付け、計測台車を高速で水槽上を走らす曳航試験(右図)です。

③ 研究開発テーマ2で改良された大気海洋観測センサーを試作1号機に艤装の上で、基本的な船体性能や航行性能等を確認するため、駿河湾(静岡県沼津市三津浜)にて2回の国内沿岸海域試験を実施しました(2022年12月および2023年2月、各約1週間)。いずれの試験も天気が良く弱風環境ではあったものの、試験海域まで輸送した計測船(約17 トン)の甲板上Aフレームから試作機を展開(着水)および揚収する作業手順の安全確認に始まり、基本的な帆走性能やセイル/ラダーによる船体制御等の確認を行うことができました。

図3 VMドローン試作1号を用いた駿河湾における国内沿岸海域試験の様子(左図)、および当該試験に向けたセイル/ラダーの動作確認や通信試験など陸上整備作業(右図)です。
図3 VMドローン試作1号を用いた駿河湾における国内沿岸海域試験の様子(左図)、および当該試験に向けたセイル/ラダーの動作確認や通信試験など陸上整備作業(右図)です。

3.今後の展開

次(2023)年度は、新たな設計で製作する試作2号機を用いて、研究開発テーマ2と連携した国内沿岸試験(駿河湾)を行い、さらに改良を進めます。その上で。研究開発テーマ3が主体となる海洋地球研究船「みらい」熱帯北西太平洋航海を用い、台風発生多発域であるフィリピン東方沖にて短期外洋試験(約1週間)を実施する予定です。