成果概要
安全で豊かな社会を目指す台風制御研究[3] 台風制御の影響評価
2024年度までの進捗状況
1. 概要
台風制御によって生じる影響には、気候的影響と被害軽減の影響があります。台風制御の社会的および経済的な受容性を評価するためには、両者の影響を計量化する必要があります(図1)。
影響評価では、台風制御を行うことによる環境場・社会へのサイドエフェクトが微小であることを示す必要があります。影響評価グループでは、これら気候環境場と台風に関連する風水害である強風、内水氾濫、外水(河川)氾濫、沿岸浸水についての被害を総合的に評価可能な統合的風水害被害評価モデルを開発し、台風制御による経済被害を推計しています。また、台風制御が中長期的な社会経済活動へ与える影響の分析も実施しています。

2. これまでの主な成果
気候学的影響については、台風の減勢による周辺環境場への影響をより定量的に調べました。4つの台風事例について、再現実験と1~15hPaの介入模擬実験を行い、周辺環境場の影響を見積もりました。その結果、何れの台風事例においても、台風の中心気圧を変化させた場合の変化量は図介入後5~6日の間、極めて小さく、人的な介入として想定される範囲の台風強度変化に対しては、どの事例にする有意な広域場への影響はないことが示唆されました。
風災について、都道府県レベルの広図リスク評価モデルに「地域係数」を導入することで、地域ごとの特性を反映させるモデルに高度化しました。風速を±5%、10%変化させたときの建物被害棟数と被害額への影響を調べ、わずか5%風速を増加/減少させることで、建物被害棟数と被害額が概ね2倍/半分となることを確認しました
河川水災について、気象水文被害連成予測システムの開発を進め、特定の台風に対して人為介入を行った場合の洪水浸水面積推計を実施しました。図2はその一例であり、気象学的研究からHagibisの経路を変化させたアンサンブル実験結果(TPES)の各メンバーについて浸水被害額に対する影響を推計しました。降水量が50%減少させると浸水面積がゼロになることを推計しました。

高潮災害について、高潮の大規模浸水による被害額を推計可能とするため、東京湾を対象に津波浸水計算モデルの高度化と被害額推計のフレームワーク構築を行いました。2019年台風19号Hagibisを対象に計算を行い、直接被害額を推計しました。続いて、仮想的にHagibisの中心気圧を変化させ、台風強度の変化と高潮偏差、浸水範囲、直接被害額の関係を求めました。図3はその結果であり、30%の中心強度の正負の変化は、約70%の被害額の増減になることを明らかにしました。また、浸水特性に依存する高潮偏差と被害額が非線形の関係を持つことを明らかにしました。
また、台風制御が社会経済活動へ与える影響の分析を行いました。特に今年度は、江東5区の住民を対象に、アンケート調査を行いました。その結果、首都圏大規模水害の特殊性を理解し、的確な避難行動をとることができると考えられる住民は極めて少数であることが確認されました。
3. 今後の展開
被害推計のための各種風水害モデルの高度化・広域化と統合化を進めます。気象制御グループの成果をもとに台風制御効果の被害額への影響を計量します。さらに、地方自治体へのヒアリング、研究者とのミーティングにより、台風制御による社会影響についてより広範囲に調査します。
