成果概要
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安全で豊かな社会を目指す台風制御研究[2] 工学的アプローチ
2025年度までの進捗状況
1. 概要
気象学的アプローチによって、気象モデルを活用した台風制御のための効果的な介入方法が研究されています。しかしながら、想定している台風介入方法が現実的に可能かどうかを判断するためには、具体的な介入装置に関する検討を同時に実施する必要があります。また、影響評価チームが台風制御によって削減できる被害額を算定していますが、実際に制御するかどうかを判断するためには、台風への介入を実施するための費用の算定や実施可能性を検討する必要があります。工学的アプローチは、上記の課題に取り組むための研究を実施しています。
2. これまでの主な成果
気象学的アプローチの研究において、台風への有望な介入手段の一つとしてクラウドシーディングが挙げられています。2025年度からは、この手法を現実に実施するための工学的検討として、主に船舶および航空機を用いた介入手段についての検討を中心に行っています。
まず、台風下層においてクラウドシーディング等の介入を実施するための海上プラットフォームとして、船舶の活用に関する検討を行いました。横浜国立大学の大型実験水槽を用いた模型実験(図1)および数値解析により、強風・高波条件下における船舶運動を評価し、荒天環境下におけるオペレーション成立性について検討しました。その結果、台風環境下においても一定条件のもとで船舶運用が可能であることを示すとともに、船底の付加装置が動揺特性に与える影響について検討し、運用安定性向上に関する知見を得ています(図2)。また、過去の台風進路履歴データを活用し、船舶による台風介入の可能性を評価するシミュレータを開発しました。これにより、台風の進路や移動速度に応じて、どの程度介入が可能であるかを定量的に把握することが可能となっています。台風の移動に追従した運用を想定し、出港タイミングや接近経路、作業継続時間といった運用条件についての検討も進めています。


次に、台風上空からのシーディング物質投入手段として、大型輸送機等の航空機を用いた方法について検討を行いました。想定される機体性能を基に、投入可能量、航続距離、運用形態について整理し、広域かつ迅速な介入が可能であることを確認しています。また、台風内部に航空機を進入させた場合の機体挙動について、シミュレーションにより検討を行い、強風場における飛行特性や制御に関する基礎的な知見を得ています(図3)。さらに、台風周辺の風速分布の影響を考慮し、介入位置やシーディング物質の投入タイミングに関する検討も進めています。

さらに、これらの手法を実際に適用する際には、シーディング物質をどの程度輸送し、どのように台風内部へ投入するかが重要となります。このため、船舶および航空機それぞれについて、輸送能力や噴射装置の構成、ならびに必要となるコストの試算を行っています。加えて、噴射装置について検討を行い、適用範囲や技術的課題を整理しています。
その他、台風への摩擦増加や海水散布、熱環境制御、海面からの蒸発抑制について、実施を想定した場合に必要な技術成熟度の評価と費用を試算しています。
3. 今後の展開
これまでに検討してきた各種介入手法について、引き続き実現に向けた検討を進めていきます。特に、クラウドシーディングの実施を念頭に、船舶および航空機を用いた手法の具体化や適用条件の整理を行います。また、気象学的アプローチとの連携を通じて、実際の台風条件に基づいた介入の成立性について検討を進めるとともに、新たな手法についても幅広く検討を行っていきます。