成果概要
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超伝導量子回路の集積化技術の開発[2] 量子ビット集積ハードウエアシステムの研究開発
2025年度までの進捗状況
1. 概要
現在の超伝導量子ビット回路の典型的なセットアップでは、極低温に置かれた量子ビットチップと室温で動作するマイクロ波エレクトロニクスが、量子ビット一つ当たり1本以上の同軸ケーブルにより配線されています。しかし冷凍機のスペースや冷却能力の限界から、この方法では量子ビット数万個以上のスケールアップに対応できません。本研究開発テーマでは、この問題を解決するために、大容量、高冷却能力の希釈冷凍機や、コネクタレスの高密度配線といった量子チップ周辺ハードウェア技術を開発し、集積化に向けたボトルネックを打破することを目指しています。
この開発では、如何にして量子ビット近傍で制御・信号処理を行い、異なる温度ステージ間の配線を削減出来るかが鍵になります。そのために、量子ビットの制御・読出しを行う信号処理回路と量子ビットチップがハイブリッド集積された“縦方向の集積化”量子ビットモジュールの開発を行っています。希釈冷凍機については、目標に設定した100 mKでの冷凍能力1.5 mWの達成と、テストベッド希釈冷凍機にて純国産量子コンピュータのとしての実証を完了させました。

2. これまでの主な成果
① 透過型実装構造の開発
縦方向に積み重ねた構造の電気接続として垂直透過型実装モジュール実装構造の実現を目指し、設計・試作と評価実験を進めています。具体的には、基板貫通電極(TSV)を用いた基板内同軸構造の作成技術、基板間接続用微小インジウム半田バンプ作製技術、超伝導電極作製技術、積層のためのフリップチップ実装技術を開発しました。さらに、積層チップによる垂直透過型実装モジュールを収納する磁気遮蔽の製作、極低温電気特性を評価するための冷凍機と電気特性計測環境を構築しました。量子ビットを含む積層型超伝導量子ビット構造を設計・試作し、量子ビット共振を確認するとともに、読み出し共振器を用いた垂直読み出しに成功しました。透過型実装構造上で量子ビットが実際に動作することを実証しました。

② 希釈冷凍機の開発
これまでの実験データを元に、希釈冷凍機の性能を正確に再現するシミュレーション技術を発展させました。このシミュレーション技術を設計に反映させた試作機を製作し、目標に設定した1.5 mWを上回る1.6 mWの性能を達成することに成功しました。また、大阪大学に設置したテストベッド機では量子コンピュータとしての実証に成功し、大阪・関西万博での純国産量子コンピュータの展示成功に貢献することができました。さらに、この量子コンピュータ実機での連続運転により、長期安定稼働に向けた課題の抽出とそれらの解決策を確立することができました。

3. 今後の展開
積層型超伝導量子ビット構造については、量子ビット共振の確認および垂直読み出し実験に成功し、積層構造上で量子ビットが動作することを実証しました。量子ビットのエネルギー緩和時間の評価を通して、積層構造特有の課題や測定上の制約を明らかにし、誤り耐性量子計算に向けた量子ビット設計および制御技術の研究開発につなげます。
希釈冷凍機については1.5 mW機とテストベッド機で培った技術をさらに発展させ、誤り耐性超伝導量子コンピュータの実現に必要な冷却装置としての技術確立を目指し、研究開発を推進いたします。