成果概要
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超伝導量子回路の集積化技術の開発[1] 誤り耐性量子コンピュータ用量子ビット回路の研究開発
2025年度までの進捗状況
1. 概要
誤り耐性型汎用量子コンピュータ(FTQC)実現に向けたハードウェア上の課題の一つは、誤り訂正符号実装のために多数の物理量子ビットが必要となることで、超伝導量子ビットの場合、典型的なエラーレート(0.1%)ではその数は莫大(108個)になると言われています。
本研究開発テーマでは、この問題を解決するために、エラー率の低減に向けて、量子ビットの寿命、コヒーレンス時間の改善を目指した、高品質量子ビットの製造技術を開発し、FTQC実現に必要な量子ビット数を低減することに貢献します。加えて、将来大規模回路化する際の生産性や量子ビット均一性向上の観点で、光学露光や積層プロセスを用いた量子ビット作製技術の開発を行います。
また現在主流の表面符号と比較して、より少数の物理量子ビットで誤り耐性量子計算が可能と期待されているボゾニックコードについても探索的研究を行い、その可能性や有望方式の見極めを行います。

2. これまでの主な成果
① 超伝導量子ビットコヒーレンスの改善
超伝導量子ビットのエネルギー緩和時間(T1)の短縮要因として、量子ビット電極表面などの各種界面における誘電損失が大きな寄与を持つことが明らかになっています。我々はニオブ(Nb)を電極材料として、上述の各種界面における清浄性を意識した量子ビット製造プロセスの改善に取り組んでいます。2025年度は、特にNbのエッチングプロセスに注目し、エッチングに用いるガス種や圧力等の条件の最適化を試みました。下図左はエッチングガスとして、SF6を用いた場合のエッチング後の電極の断面図の一例です。比較的平滑でオーバーエッチの抑制されたSi表面が得られていることを確認しました。この条件を用いてトランズモン量子ビットを作製しT1の評価を行ったところ、下図右のように平均して200 usを越える値を得ることが出来ました。これは、エッチング条件の改善によりSi表面の平滑性の向上やSi表面およびNb超伝導電極側面に付着、残留する汚染源が抑制されたためと推察されます。

② 超伝導共振器を用いたボゾニックコードの研究開発
ボゾニックコードと呼ばれる誤り訂正符号は、原理的には無限にある共振器のエネルギー準位の自由度を活かし、量子情報をエラーから守る方式で、従来に比べてハードウェアとして実際に必要な物理量子ビットの数を減らすことが出来ると期待されています。ボゾニック量子ビットの構成要素であるNb製の同軸型(空洞)共振器のQ値向上を目指して、表面処理を改善した結果、世界最高の3x109を達成し、サーマルサイクルに対して安定であることが確認されました。さらに、ボゾニック量子ビットにおいては、自動微分を用いて最適化パルスを生成し、binomial (1,1) codeの論理状態 , の符号化およびゲート操作に成功しました。本成果では80-90%の忠実度が得られています。

3. 今後の展開
量子ビットの長寿命化については、これまでに得られたプロセス、設計に関する知見を活かして、量子ビット集積回路の作製を行います。また、Nbを用いたプロセスのさらなる改善を試みるだけでなく、タンタルや窒化物超伝導体などNb以外の電極材料についても検討を開始します。
ボゾニックコードの研究開発についても、特にこれまでの開発で得られた高品質量子ビット、共振器の設計、製造に関する知見を、今後プロジェクトで実施する量子ビット集積回路の設計、製造に活用します。