成果概要
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主体的な行動変容を促すAwareness AIロボットシステム開発[E] Peripheral Electrical Stimulationを用いた介入法の確立
2025年度までの進捗状況
1. 概要
これまでに開発されてきたAwareness AIを活用した介入アプローチは、主に医療技術を用いた治療的介入や、Robotic Nimbusを活用したハードウェアによる動作支援という形で実装されてきました。今後は、EUの研究チームとの国際共同研究を通じて、Awareness AIに基づく“第三の介入アプローチ”として、Peripheral Electrical Stimulation(PES)による神経系への介入技術の実装に取り組んでいきます。
これまで、電気刺激によって筋肉を直接収縮させ、実際の運動を生み出す技術はFunctional Electrical Stimulation(FES)と呼ばれ、対象者が刺激によって生じる運動を意識的に認識・制御できるという特徴があります。一方、PESは筋肉ではなく末梢神経を対象とし、知覚されないレベルの微弱な電気刺激を用いて神経系に調整を加える技術です。これにより、対象者が意識しないまま神経系の状態を変化させ、結果として自発的な運動能力を高めることができるという、新しい形の介入法です。
PESはすでに、振戦(Tremor)などの神経疾患に対する非侵襲的な治療法として有効性が示されており、物理的に運動を外部から作り出すFESと比べて、より高い主体性と神経系の自然な運動生成を引き出す点で優位性を持つとされています。また、PESによる刺激は意識に上らないため、解剖学的な神経ネットワークに基づいた定量的モデル化が可能であり、我々が目指す脳神経活動とリンクしたAwareness AIとの統合に極めて高い親和性を持つ点も大きな特長です。
本国際連携では、PESを用いた神経疾患患者の歩行能力の改善を目的とした介入を行い、その結果をもとに、Robotic Nimbusによる“Dynamic健診”における最適な無意識下への介入戦略の確立を目指します。これにより、Awareness AIを活用した次世代の運動支援・治療技術の新たな地平を切り拓くとともに、個別最適化された介入モデルの実現に向けた基盤を築いていきます。
2. これまでの主な成果
Awareness AIを用いたPESの応用に向けた研究開発において、私たちはWearable Force Plate(WFP)を活用し、歩行状態をリアルタイムに検出するシステムの開発を進めてきました。本取り組みでは、特にパーキンソン病をはじめとする運動障害を伴う神経疾患を対象とし、患者の歩行状態を正確に把握したうえで、適切なタイミングでPESを与えることにより、より自然で安定した歩行を支援することを目指しています。
2025年度は、これらの成果を発展させ、WFPを用いたリアルタイム歩行解析システムを、実際のパーキンソン病患者に適用しました。パーキンソン病では、歩き出しや方向転換、立ち上がり後の第一歩などにおいて、動作開始が困難になる症状が見られます。本研究では、WFPによって患者の足底荷重や重心移動の変化を計測し、Awareness AIによって動き出しの兆候や歩行状態を推定したうえで、適切なタイミングでPESを与える実験を行いました。
その結果、PESによって、患者が動作を開始しにくい場面においても、より自然な第一歩を引き出せる可能性が示されました。特に、患者本人が強く意識して努力するのではなく、神経系に対して非侵襲的かつタイミングよく刺激を与えることで、動作開始を補助できる点は、本技術の重要な特徴です。これにより、Awareness AIに基づくPESが、パーキンソン病患者の歩行支援や動作開始支援に応用可能であることを、実患者データに基づいて確認することができました。
さらに2025年度は、PES単独の応用に加えて、外骨格ロボットとの連携システムの構築にも取り組みました。WFPによって検出された歩行状態をもとに、Awareness AIが現在の運動状態や次に必要となる支援を推定し、その結果をPESおよび外骨格ロボットの制御に反映させることで、神経刺激と機械的支援を組み合わせた新しい運動支援システムを構築しました。この連携システムにより、PESによって神経系に対する動き出しのきっかけを与え、外骨格ロボットによって実際の関節運動や歩行動作を補助するという、より統合的な支援が可能となりました。すなわち、患者の状態をWFPで計測し、Awareness AIで解析し、PESと外骨格ロボットによって介入するという、計測・解析・介入を一体化した閉ループ型の歩行支援システムの基盤を構築することができました。以上の成果により、2025年度は、Awareness AIに基づくPES研究を、健常者での技術検証段階から、実際のパーキンソン病患者への応用段階へと発展させることができました。また、外骨格ロボットとの連携により、PESによる神経系への介入と、ロボットによる身体運動の支援を組み合わせた、新しい個別化歩行支援システムの可能性を示しました。
3. 今後の展開
今後は、2025年度に構築したWFP、Awareness AI、PES、外骨格ロボットを統合した歩行支援システムをさらに発展させ、パーキンソン病患者をはじめとする運動障害患者に対して、より実用的で効果的な支援技術として確立していきます。特に、実患者を対象とした検証を継続し、PESが歩き出し、方向転換、立ち上がり後の第一歩、Foot Dropなどの症状に対してどの程度有効であるかを定量的に評価します。評価には、Timed Up and Go Test(TUG)などの臨床的指標に加え、WFPから得られる歩行周期、足底荷重、重心移動、左右差などの詳細な運動指標を用いることで、介入効果を多面的に解析していきます。
