プロジェクト紹介

下田 真吾PM 写真

目標3 研究開発プロジェクト(2022年度採択)主体的な行動変容を促すAwareness AIロボットシステム開発

プロジェクトマネージャー(PM)下田 真吾名古屋大学 大学院医学系研究科 特任教授

概要

人はどうすれば、常に前向きに生きていけるのでしょうか。その一つのキーワードは「気づき」です。「勉強しなさい!」と言われて、やる気をなくしたといったことは誰しもが経験することです。他人から言われたことに、人はなかなか前向きに取り組めないのです。しかし、自分で勉強をする必要性や重要性に気づくと、私たちはそれに主体的かつ前向きに取り組むことができ、とても大きな成果を得られることが分かっています。勉強に限らず、「自分にはどんな能力があるのか」「どんなことに取り組めばうまくいくのか」、そんなことに気づかせてくれるロボットがいたら、私たちの今よりも前向きに活発な生活になるのではないでしょうか。このプロジェクトでは、ロボットが陰ながら我々を見守り、能力に応じた適切な気づきのサポートをしてくれるAIを開発し、皆が前向きに生きていける社会を目指します。

2030年までのマイルストーン

Awareness AIの汎用化に必要な気づきや違和感といった人の内面を表すもののモデル化を完了させる。「Awareness AI Lab」を活用することで身体状態を、デジタル技術を利用して可視化した上で、Awareness AIを用いて、新しい医療分野である認知介入療法を確立する。その成果をもとに違和感を覚えることなく人工物からの補助を、日常生活の中で受けられるシステムを構築し、特定状況に特化した違和感のない補助システムの応用を開始する。

「気づき」とは、脳神経科学ではどのようにとらえられるのでしょうか。上述のような、私たちを前向きにしてくれる「気づき」のサポートに先立ち、私たちはまず脳内での気づきの起こり方を解明し、それによる最初のステップとして、気付きにより治療が可能な疾患の解決から挑むことにしました。そしてその中で、気づきをサポートすることが、これまで治療法が確立されていない疾患に役立つことが分かってきました。その一例が慢性的な「痛み」です。
気付きとは、無意識の中で起きたことが「意識に上る瞬間」であると考えることができます。この現象はときに私たちにとって都合の悪いことも引き起こします。近年の研究で慢性的な痛みなどは、脳が作っている私たちに都合の悪い気づき、すなわち具体的にどこが悪いわけではないけども、意識的に「痛い」と感じてしまうものであることが分かってきました。私たちはAwareness AIを利用し、Robotic Nimbusによる介入を実施することで、これまで治療法が確立していなかった慢性的な痛みを解決することに部分的に成功しています。
さらに、これらの技術を基に「未来の診察室」の運用も始まりました。今まで直すことができなかったいろいろな疾患をAwareness AIを利用して治療することを目的としており、まずは痛みや運動麻痺を中心に展開していく予定です。
さらにその診察室では、気づきを深く研究することで、歩行のように私たちが普段行う「自然な動き」から、将来の疾患予測もできるようになってきました。 ヒトが意識的に気付く前に、実は体には多くの問題が表れていることが明らかになってきたのです。これを利用した新しい健診システムを完成間近です。これらを活用し、2030年までには、心身の健康状態を気付きにより作るAwareness AIを完成させます。

2025年までのマイルストーン

難治性疼痛緩和や先天性神経異常者の発達、健康維持や老化といった、「自分ではどうすることもできない」とあきらめていた問題に対し、ロボットの助けを借りてその問題に主体的に取り組めることに気づかせ、前向きに行動できるようになれるシステムを構築する。さらに、その実証の場として、ショッピングモールに「Awareness AI Lab」を構築し、多くの人がAwareness AIの有効性を実感できるDynamic健康診断システムを作り上げる。

2025年までに、未来の診察室での治療を確立していきます。最初に導入するのは中東遠総合医療センターです。自然な運動観察に基づく疾患の予測から、気付きにより治療が可能な慢性疼痛や運動麻痺の治療効果などを実証していきます。Robotic Nimbusを活用することで、より効果的な気づきを生み出し、これまで直らなかった疾患を治療・リハビリし、またそのような疾患に陥らないように軽度の介入健康状態を維持可能なロボットの導入なども進めていきます。これらを利用してみんなが明るく過ごせる街づくりも一つの目標としていきます。

研究開発項目(クリックすると、それぞれの成果概要ページに遷移します)

課題推進者

研究開発項目[1] 村井 昭彦 産業技術総合研究所 人間拡張研究センター 研究チーム長
研究開発項目[1] 川上 英良 理化学研究所 情報統合本部 チームリーダー
研究開発項目[1] 安 琪 東京大学 大学院新領域創成科学研究科 准教授
研究開発項目[2] 下田 真吾 名古屋大学 大学院医学系研究科 特任教授
研究開発項目[2] 平田 仁 名古屋大学 大学院医学系研究科 特任教授
研究開発項目[2] 松田 雅弘 順天堂大学 保健医療学部理学療法学科 教授
研究開発項目[3] 上田 彩子 日本女子大学 人間社会学部 准教授
研究開発項目[3] 藤原 武史 豊田合成株式会社 開発本部新価値開発部 主監
研究開発項目[3] 藤本 健治 京都大学 大学院工学研究科 航空宇宙工学専攻 教授
研究開発項目[E] Seths Vijayakumar The University of Edinburgh, School of Informatics, Professor
研究開発項目[E] Juan Moreno Spanish National Research Council, Aplied Robotics, Doctor

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関連情報このプロジェクトのプレスリリース、イベントなど