プロジェクト紹介

下田 真吾PM 写真

目標3 研究開発プロジェクト主体的な行動変容を促すAwareness AI ロボットシステム開発

プロジェクトマネージャー(PM)下田 真吾名古屋大学 大学院医学系研究科 特任教授

概要

人はどうすれば、常に前向きに生きていけるのでしょうか。その一つのキーワードは「気づき」です。「勉強しなさい!」と言われて、やる気をなくしたといったことは誰しもが経験することです。他人から言われたことに、人はなかなか前向きに取り組めないのです。しかし、自分で勉強をする必要性や重要性に「気づく」と、私たちはそれに主体的かつ前向きに取り組むことができ、とても大きな成果を得られることが分かっています。勉強に限らず、「自分にはどんな能力があるのか」「どんなことに取り組めばうまくいくのか」、そんなことに気づかせてくれるロボットがいたら、私たちの今よりも前向きに活発な生活になるのではないでしょうか。このプロジェクトでは、ロボットが陰ながら我々を見守り、能力に応じた適切な気づきのサポートをしてくれるAIを開発し、皆が前向きに生きていける社会を目指します。

2030年までのマイルストーン

Awareness AIの汎用化に必要な気づきや違和感といった人の内面を表すもののモデル化を完了させる。「Awareness AI Lab」を活用することで身体状態を、デジタル技術を利用して可視化した上で、Awareness AIを用いて、新しい医療分野である認知介入療法を確立する。その成果をもとに違和感を覚えることなく人工物からの補助を、日常生活の中で受けられるシステムを構築し、特定状況に特化した違和感のない補助システムの応用を開始する。

「気づき」とは、いったい何なのでしょうか。私たちは、自分には「意識がある」と思っていますし、その意識は主に私たちの脳で作られていることは間違いないでしょう。しかし脳の中は、意識できるものよりも意識できないもの、すなわち無意識に処理されているものの方がはるかに多いのです。意識は、過去の経験を基に論理的な思考を行い、やるべきことを決めるのが主な役割なのに対し、無意識は周囲の状況に素早く対応し、適応することが目的となります。論理的に考え適切な結論を導ける意識は、とても高い知性を持っています。それに対し、周囲の状況に反射的に対応する無意識ですが、この処理は単純でパターン化されたものではなく、未知の環境変化に素早くかつ的確に対応できる、極めて知的なシステムであることが分かっており、無意識の知性と呼ぶにふさわしい能力を持っています。私たちは、意識の知性と無意識の知性のバランスの下で成り立っているといえます。
無意識の処理の中で、時間をかけた論理的な処理が必要な場合、その内容が意識に上ります。これが「気づき」です。すなわち気づきは、無意識の知性と意識の知性のやり取りだということができます。ロボットを用いて無意識の知性に働きかけ、適切な気づきを生み出す、それが2030年までに私たちが行いたいことです。そのためには何が必要でしょうか。一つは、私たちの脳内で無意識の知性を司る部分を解明しモデル化すること、もう一つは無意識の知性に働きかけるロボットを構築することです。近年の科学技術の進歩により、脳がどのように活動しているかを、脳の奥深いところまで可視化することができるようになってきました。脳活動と様々な生体信号、身体運動を一つのシステムにまとめることで、無意識の知性を解明していきます。

2025年までのマイルストーン

難治性疼痛緩和や先天性神経異常者の発達、健康維持や老化といった、「自分ではどうすることもできない」とあきらめていた問題に対し、ロボットの助けを借りてその問題に主体的に取り組めることに気づかせ、前向きに行動できるようになれるシステムを構築する。さらに、その実証の場として、ショッピングモールに「Awareness AI Lab」を構築し、多くの人がAwareness AIの有効性を実感できる場を提供する。

気づきには様々な種類があります。例えば、重要なものが得られたため明示的に記憶に残す場合、無意識の知性の反射的な処理では完全に対処できず、経験と記憶に基づいた論理的な処理が必要な場合、意識的な目的と実際が大きく異なる場合などが挙げられます。その中でも、意識と無意識の不一致により、疾患の前兆のような気づきを生み出すことがあります。ちょっと腰が痛い、肩に違和感を覚えるなど、意識と無意識のずれにより生み出されるこのような気づきを基に、適切な処置を施すシステムを構築することが2025年までに目指すものになります。フレイルや未病などといった言葉はこれまでにも耳にしたことがあるかと思います。その中には、意識の知性と無意識の知性のアンバランスが原因のものがあると考えられます。それを解決することで、気づきの制御のメカニズムを解明していきます。

研究開発の概要

研究開発テーマ構成

研究テーマ構成

課題推進者リスト

村井 昭彦 産業技術総合研究所 人間拡張研究センター 研究チーム付
川上 英良 理化学研究所 情報統合本部 チームリーダー
安 琪 東京大学 大学院新領域創成科学研究科 准教授
下田 真吾 理化学研究所 脳神経科学研究センター ユニットリーダー
平田 仁 名古屋大学 大学院医学系研究科 特任教授
上田 彩子 日本女子大学 人間社会学部 准教授
藤原 武史 豊田合成株式会社 ライフソリューション事業本部 主監
村井 昭彦 産業技術総合研究所 人間拡張研究センター 研究チーム付
川上 英良 理化学研究所 情報統合本部 チームリーダー
安 琪 東京大学 大学院新領域創成科学研究科 准教授
下田 真吾 名古屋大学 大学院医学系研究科 特任教授
平田 仁 名古屋大学 大学院医学系研究科 特任教授
上田 彩子 日本女子大学 人間社会学部 准教授
藤原 武史 豊田合成株式会社 ライフソリューション事業本部 主監

代表機関

名古屋大学

研究開発機関

理化学研究所、産業技術総合研究所、東京大学、名古屋大学、日本女子大学、豊田合成株式会社

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