成果概要
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主体的な行動変容を促すAwareness AIロボットシステム開発[3] Awareness AIの社会実装
2025年度までの進捗状況
1. 概要
「Awareness AIの開発」および「Awareness AIの応用」において構築されたシステムを、現実の社会に実装していくには、どのようなアプローチが必要なのでしょうか。そして、それによって実現されるロボットと共存する社会は、私たちの生活にどのような恩恵をもたらすのでしょうか。本研究開発項目は、こうした問いに対し、Awareness AIシステムを用いた検証と実証実験を通じて答えを導き出すことを大きな目的としています。
なかでも、私たちが目指す「気づき(Awareness)」の管理は、従来の技術開発とは一線を画す複雑さを伴っています。気づきとは多くの場合、意識の深層で起こる微細な変化によって引き起こされるため、本人の主観的な認知と、実際の神経活動や行動変化とが必ずしも一致しないからです。
たとえば、「Awareness AIの応用」でも示された通り、Awareness AIが検出する変化の多くは、身体に現れる微細な生理的兆候に基づいています。また、「Awareness AIの開発」において議論された“空気を読む”といった能力も、主観的には捉えにくい曖昧な現象に、一定の論理性を与える試みであり、AIにとっては極めて高度な推論能力が求められる分野です。
このような「意識では感じられない変化」をいかにして客観的に評価し、社会に実装可能な形に落とし込んでいくのか。それは、従来の人間工学的・心理学的な評価手法の枠組みを超えた、新たな評価軸と実装指針の確立を意味します。さらに重要なのは、Awareness AIが誘導する変化が、対象者にとって“望ましい”ものであることです。これは、単に身体的な改善だけでなく、本人が無意識下で潜在的に求めている方向性と一致している必要があります。従来のアンケートや主観評価に依存するのではなく、本人が自覚していない行動や生体信号の変化を解析し、それをもとに適切な気づきを促すというアプローチが求められます。
そのためには、気づきの発現と変容を理論的に捉えるための数学的な枠組みの構築も不可欠です。本研究開発項目では、心理学的知見と数理モデルの統合を進めながら、実際の社会実装の中で発生する課題を抽出し、それらの解決に向けた具体的な戦略を検討しています。
最終的には、Awareness AIによって本人の主観を超えて心身の状態を正確に把握し、本人が自然に望む方向へと変化を促すような介入が可能となる社会の構築を目指しています。その実現は、ロボットと人が共に生きる未来において、個人のQOL向上、疾病の早期発見・予防、そして人間らしさを支える社会設計に大きく貢献することになるでしょう。
2. これまでの主な成果
「Awareness AIの開発」項目でも述べたとおり、Awareness AIによって人の行動変容を促すためには、その取り組みが一時的な介入で終わるのではなく、日常生活の中で自然に継続される仕組みづくりが欠かせません。その鍵を握るのが「内的報酬」です。内的報酬とは、行動そのものが「楽しい」「成長を実感できる」「好奇心が満たされる」といった心理的価値を持つことで、外的な報酬がなくても人がその行動を続けたくなる仕組みを指します。
2025年度は、この理論的アプローチを、実際に取得した歩行データや行動データに基づいて検証する段階へと発展させました。Awareness AIを搭載した歩行解析システムを用いて、利用者の歩行パターン、変容過程、フィードバック後の行動変化を計測し、提案してきた歩行カテゴリや変容モデルが実データ上でどのように現れるかを解析しました。これにより、「なりたい自分」に向かう歩行変容の枠組みを、実際の人の運動データに基づいて評価できるようになりました。
また、運動変容を支える心理的要因についても解析を進めました。単に歩行が改善したかどうかを評価するだけでなく、フィードバックを受けた本人がどのように自分の身体を認識し、どのような気づきや達成感を得たのか、それが継続的な行動変容にどうつながるのかを検討しました。これにより、Awareness AIが提示する情報が、単なる数値評価ではなく、本人の内的報酬や自己理解を促す要素として機能する可能性が示されました。
さらに、Awarenessを引き起こす無意識下の運動パターンを数学的に捉える取り組みについても、実データを用いた検証を進めました。これまでリアプノフ関数などを用いて、人間の無意識的な運動の安定性や変容の方向性を定量化する理論的枠組みを検討してきましたが、2025年度は実際の歩行データに対してこれらの指標を適用し、運動状態の安定性や変化の方向性を評価しました。
加えて、企業の健康経営や一般市民向けの健康増進活動など、研究室内に閉じた実験ではなく、実際の生活環境に近い場面でAwareness AIを用いた歩行解析とフィードバックを行いました。これにより、利用者が日常の中で自分の身体の状態に気づき、楽しみながら健康行動を継続できるシステムとして、本技術を社会実装していくための実証を進めました(図1参照)。

3. 今後の展開
今後は、2025年度までに進めてきた実データに基づく検証、心理的解析、実環境への実装をさらに発展させ、Awareness AIによる内的報酬提供システムを、より実用的で継続可能な健康支援システムへと洗練させていきます。特に、歩行データや行動変容データを継続的に蓄積し、どのようなフィードバックが本人の気づき、楽しさ、達成感につながるのかを明らかにすることで、個人ごとに最適化された介入方法の構築を目指します。
また、数学的アプローチについても、実データとの対応をさらに検証し、人間の無意識的な運動変容を定量的に評価できる指標として確立していきます。これにより、現在の歩行状態を評価するだけでなく、どの方向に介入すれば自然で望ましい変容が生じるのかを予測し、運動補助や行動介入のアルゴリズムに反映させることを目指します。