成果概要

多様な環境に適応しインフラ構築を革新する協働AIロボット[7] 河道閉塞対応を支える技術

2024年度までの進捗状況

1. 概要

本研究プロジェクトでは、「協働AIロボットシステムによる多様な環境に適応したインフラ構築」の実現を目指しております。特に、「河道閉塞」という自然災害現場で活用可能なロボットシステムの実現という具体目標を設定し、「河道閉塞緊急調査のシステムインテグレーション」「河道閉塞応急復旧作業のシステムインテグレーション」「河道閉塞対応を支える技術」の三分野における研究開発を分担して進めています。この中の緊急調査ならびに応急復旧作業のためのシステムインテグレーションは、災害対応技術の早期の社会実装を目指しているものですが、多様な環境に適応したシステムを実現するためには、更なる技術開発が欠かせません。そこで、本研究開発項目「河道閉塞対応を支える技術」では、河道閉塞対応を念頭においた次世代ロボットシステムの研究開発について、そのProof of Conceptを中心とした研究開発を実施しています。以下に、2024年度における主要な成果について記します。

2. これまでの主な成果

この研究開発項目では、様々な状況に臨機応変に対応し、河道閉塞対応を可能とするロボット技術を中心に、研究開発を進めています。以下に、2024年度の主要な成果について紹介します。
排水ポンプの設置は、河道閉塞応急復旧作業のシステムインテグレーションにおいて、熊谷組が小型重機を用いたシステム開発を進めていますが、災害現場の地盤状況によっては、これが活用できない場合があります。そこで大阪大学の研究グループは、時々刻々と変化する現場の要求に応じて柔軟に合体・分離可能な、作業機と移動機が合体・分離する輸送コンテナ「BRAINS」および、そのコンテナに応じた作業機と移動機のコンセプト機の開発を行いました。コンテナ内は二層に分かれており、上側には作業機、下側には移動機が格納されております。災害環境に応じて移動機を入れ替えて、上下を合体させることで、様々なバリエーションの建設ロボットを実現することが可能となります。2024年度には、このコンセプトをスケールモデルで実現し、屋内環境において動作試験を実施しました。図9は、移動機と作業機の合体分離を可能とするコンテナBRAINSの概観(左上)、不整地走行性能が高い移動機d-FlexCrawの概観(右上)、ホース敷設を行う作業機i-CentiPot Ammonite(下)です。なお、この図におけるホース敷設作業機は、通常のクローラ移動機に搭載されています。

図9
図9 合体・分離する輸送コンテナ「BRAINS」(左上)と移動機(右上)ならびに、ホース敷設を実現する作業機の概観(下)

一方、仮排水路建設の土工事における掘削作業には、現状では油圧ショベルが活用されておりますが、小型の油圧ショベルでは、作業効率を挙げることができないという問題が生じます。そこで、本プロジェクトでは、これまでにない新たな掘削手法を実現するための研究開発も進めております。具体的には、掘削を「ほぐし」と「すくい」の機能に分割し、これらをそれぞれ実施する2台の小型建設ロボットによる掘削技術の確立を目指しています。2024年度には、小型建設ロボットに設置したチラー(地面を耕すツール:図10の左上)を活用して地面をほぐし(図10の右上)、ほぐされた土砂を別のスキッドローダが回収するという動作の自動化を、個別に実現しました。

図10
図10小型建設ロボットによるチラーを用いた地盤のほぐしと土砂の回収の実現

これ以外にも、小型建設ロボット群によって河道閉塞対応を実施する複数台建設ロボットの動的協働技術や、多様な地盤強度に対応可能な掘削戦略のAI学習手法についても、本研究開発項目内で、研究開発を進めました。

3. 今後の展開

本プロジェクトの2030年の目標は、 自然災害環境に代表される多様な環境におけるインフラ構築を実現することです。この実現を目指し、本研究開発項目では、特に「多様な環境」に対応可能な新たな技術に関する研究開発を継続して進め、2025年の終了時には、各技術の有用性検証を行うことで、Technical Readiness Level 4(制御された環境下において、技術・システムの基本的な機能・性能が実証された状態)を達成する予定です。