成果概要

多様な環境に適応しインフラ構築を革新する協働AIロボット[2] 複数台ロボットの動的協働システム

2023年度までの進捗状況

1. 概要

「複数台の建設ロボットによる多様な環境に適応したインフラ構築の実現」のためには、変化する環境に臨機応変に対応する必要があります。この実現には、各ロボットのパフォーマンスを自己分析しながら、想定外の事象に対応するために、動的にチーム編成を変更しつつ目標タスクを達成する、複数台建設ロボットによる協働作業が有効と考えられます。しかしながら、このようなロボットのアーキテクチャやアルゴリズムは、これまで存在しませんでした。
そこで、本研究開発項目「複数台ロボットの動的協働システム」では、チームの再編成を実現する「動的協働AI」の体系化を進めました。まず、河道閉塞災害に応用可能な土砂運搬タスクの実現を対象とし、変化する環境下で動的にチーム編成が可能な「動的協働AI」の実現を目指しました(図1を参照)。また、複数台の3tクラスの建設ロボットを使用して、「動的協働AI」の検証を行いました。

図1  変化する環境下における動的なチーム編成
図1 変化する環境下における動的なチーム編成

2. これまでの主な成果

研究開発項目「複数台ロボットの動的協働システム」では、現場の状況に応じて臨機応変なチーム編成を行う「オープン自己組織化」アルゴリズムを構築しました。対象とするタスクは、油圧ショベルとダンプトラックによる土砂運搬を対象としました。このタスクに対し、土砂量や、土砂山・土捨場の位置、ロボットの性能、納期などをパラメータとして、運搬可能な土砂量(予測パフォーマンス)と実際に運搬した土砂量(実パフォーマンス)に基づいてチームを再編成するアルゴリズムを構築しました。
このアルゴリズムの有用性を示すため、複数台の油圧ショベルならびにダンプトラックの動作をシミュレート可能な三次元土工シミュレータ(Vortex Studioベース)を構築しました。このシミュレータ上で、提案アルゴリズムを基にした、油圧ショベル4台、ダンプトラック16台による土砂運搬タスクを実装しました。その結果、ダンプトラックが故障した場合でも、現場の状況に応じてチームの再編成を行う提案アルゴリズムの有用性を確認しました。
次に、このアルゴリズムの実機への実装を行う前に、模型ロボットを用いた屋内試験を実施しました。この試験では、1台の油圧ショベルと3台のダンプトラックが1チームとなり、2チームによる土砂運搬動作を行いました。この動作検証により、アルゴリズム検証のみならず、建設ロボットの実動作や無線通信の問題点などを確認することができました(図2)。

図2 複数模型建設ロボットによる土砂運搬作業の動作
図2 複数模型建設ロボットによる土砂運搬作業の動作

さらに、このアルゴリズムを建設ロボットに実装しました。各ロボットは3トン未満の小型建設機械であり、遠隔操縦型の油圧ショベル1台と、自動ホイールローダ1台ならびに、自動クローラキャリアダンプトラック4台で構成されています。これらの建設ロボットが2チームを形成し、九州大学フィールドにて、土砂運搬作業を実現しました(図3)。途中、機械の故障を模擬するため、1台のキャリアダンプトラックを強制停止しましたが、残りの建設ロボットがチームを再編成することで作業を継続し、当初の目標作業を達成できたことを確認することができました。

図3  複数建設ロボットによる土砂運搬作業の動作
図3 複数建設ロボットによる土砂運搬作業の動作

3. 今後の展開

本研究プロジェクトの2030年の目標は、複数台の小型ロボットを使用して、時々刻々と変化する状況下における災害応急復旧作業を実現することです。そこで本プロジェクトでは、2025年までに、河道閉塞災害環境に対応可能なロボットシステムのプロトタイプのインテグレーションを進めると共に、様々な作業を実施することが可能な動的協働システムをシミュレーション上で実現する予定です。