成果概要

多様な環境に適応しインフラ構築を革新する協働AIロボット2. 複数台ロボットの動的協働システム

2022年度までの進捗状況

1.概要

「複数台の建設ロボットによる多様な環境に適応したインフラ構築の実現」のためには、変化する環境に臨機応変に対応する必要があります。この実現には、各ロボットのパフォーマンスを自己分析しながら、想定外の事象に対応するために、動的にチーム編成を変更しつつ目標タスクを達成する、複数台建設ロボットによる協働作業が有効と考えられます。しかしながら、このようなロボットのアーキテクチャやアルゴリズムは、これまで存在しませんでした。そこで、本研究開発「複数台ロボットの動的協働システム」では、チームの再編成を実現する「動的協働AI」の体系化を進めます。まずは、河道閉塞災害に応用可能な土砂運搬タスクの実現を対象とし、変化する環境下で動的にチーム編成が可能な「動的協働AI」の実現を目指します(図1を参照)。また、複数台の3tクラスの建設ロボットを使用して、「動的協働AI」の検証を行います。
開発された技術は、地球上の自然災害等にも応用できます。

図1 変化する環境下における動的なチーム編成
図1 変化する環境下における動的なチーム編成

2.2022年度までの成果

これまでに、現場の状況に応じて臨機応変なチーム編成を行う「オープン自己組織化」アルゴリズムを構築しました。具体的なタスクとしては、前述の通り、ショベルとダンプによる土砂運搬を対象とし、土砂量、土砂山・土捨場の位置、ロボットの性能、納期などをパラメータとして、運搬可能な土砂量(予測パフォーマンス)と実際に運搬した土砂量(実パフォーマンス)に基づいてチームを再編成するアルゴリズムを構築しました。
上述のアルゴリズムの検証には、土砂特性を考慮した三次元の土工シミュレーションが必要です。そのため、複数台建設ロボットの三次元 土工シミュレータ(Vortex Studioベース)を構築しました。このシミュレータ上で、オープン自己組織化アルゴリズムを基にした、ショベルによる土砂の掘削・積載、ダンプトラックによる運搬・放土を実現するアルゴリズムを構築し、複数台のロボット群による土砂運搬タスクを実装しました(図2を参照)。その結果、このアルゴリズムが適切に動作し、ダンプトラックが故障した場合でも、現場の状況に応じてチームの再編成を行うアルゴリズムが正常に機能することを確認しました。

図2 土砂運搬シミュレーション(4チームによる動作の実現。故障車のあるチームは、応援のトラックが合流している。)
図2 土砂運搬シミュレーション(4チームによる動作の実現。故障車のあるチームは、応援のトラックが合流している。)

また、このアルゴリズムの実機検証を目指し、複数個のセンサポッドを使用した複数建設ロボットの同時位置姿勢推定技術の開発を行いました。この建設ロボットの位置推定技術は、GNSSが捕捉不可能な環境でも利用することができるだけでなく、対象環境の状況をリアルタイムに把握することができるという利点があります。また、この位置推定技術を使用して、複数の建設ロボットによる土砂運搬作業の動作を実現しました。(図3参照)。

図3  複数建設ロボットによる土砂運搬作業の動作
図3 複数建設ロボットによる土砂運搬作業の動作

3.今後の展開

本研究開発の2025年の目標は、複数台の建設ロボットが状況の変化に対応しながらチームを再編成し、土砂運搬タスクを含む目標タスクを実施することです。この目標を達成するために、 2023年までに「オープン自己組織化」アルゴリズムに関する研究開発を更に進めると共に、2023年の夏には「オープン自己組織化」アルゴリズムを搭載した実建設ロボット6台による土砂運搬作業のデモンストレーションの実現を目指します。