成果概要

多様な環境に適応しインフラ構築を革新する協働AIロボット[6] 河道閉塞応急復旧作業のシステムインテグレーション

2024年度までの進捗状況

1. 概要

本研究プロジェクトでは、「協働AIロボットシステムによる多様な環境に適応したインフラ構築」の実現を目指しております。特に、「河道閉塞」という自然災害現場で活用可能なロボットシステムの実現という具体目標を設定し、「河道閉塞緊急調査のシステムインテグレーション」「河道閉塞応急復旧作業のシステムインテグレーション」「河道閉塞対応を支える技術」の三分野における研究開発を分担して進めています。二番目の河道閉塞応急復旧には、重機を用いた作業が必須ですが、対象とする環境は通常山間部に存在するため、大型の重機は運搬が困難です。そこで、本プロジェクトでは、ヘリコプターで運搬可能な小型建設ロボット(3t未満)を複数活用した、排水ポンプ設置作業を中心とする河道閉塞応急復旧システムの実現を目指すこととしました。応急復旧のシステムインテグレーションの概要について図6に示します。以下に、2024年度における「河道閉塞応急復旧作業のシステムインテグレーション」の主要な成果について記します。

図6
図6 河道閉塞環境における応急復旧技術

2. これまでの主な成果

この研究開発項目では、これまで、プロジェクト概要の図1に記した河道閉塞災害対応シナリオの「応急復旧作業の準備」ならびに「応急対策」(中断および下段)に該当する技術開発を統合した応急復旧システムの構築を進めてきました。河道閉塞災害においては、斜面崩壊によって堆積した閉塞領域(天然ダム)が河川の越流によって崩壊することで大きな土石流が発生する可能性がありますが、これを起こさせないためには、上流に蓄積した水を、安全に下流に流す緊急工事が必要となります。そこで、閉塞領域において、上流の湛水部から下流への水の移動を実現するための、排水ポンプ設置に関するシステムの実現を目指し、2024年度、応急復旧システムの構築を進めてきました。
対象とする河道閉塞は、山岳地帯で発生することが多いですが、応急復旧を行うための重機を運搬するヘリコプターには、重量制限があります。これまでは、重機を分割して運搬し、現地で組み立てるという工夫がされていましたが、現場での重機の組立作業には時間がかかります。そこで、本プロジェクトでは、ヘリコプターで運搬可能なサイズの建設ロボットで構成される複数台システムを開発しました。これらの建設ロボットを活用することで、数名の監督者(作業員0人)による応急復旧作業が可能となります。
なお、河道閉塞環境では、応急復旧の作業に伴う環境変化や突発的な環境変化の可能性があるため、環境情報をリアルタイムに把握する必要があります。そこで、本研究開発テーマでは、杭型データ収集センサ(センサポッド)を開発すると共に、微細な作業を行うことが可能な、遠隔操縦型の建設ロボットで設置することとしました。図7は、ヤンマーが有する模擬環境において、建設ロボットにより杭型センサポッドを地面に挿入する様子ならびに、設置したセンサから得た九州大学フィールドの画像情報です。

図7
図7 杭型センサポッドの設置(左)と得られた環境情報(右)

次に、排水ポンプを設置するシステムについて紹介します。小型の重機は、分解せずに運搬が可能であるため、迅速な対応を可能としますが、排水ポンプの水中投入作業においては、水際において、アーム長さが足りなくなる可能性があります。そこで、本プロジェクトでは、軽量フレームを用いた水中ポンプの投入システムを開発しました。図8に、水中ポンプを搭載したフレームに2段の延長フレームを継ぎ足し、左側のフレームを押すことで、右側のポンプを水中に投入するツールの動作概要を示します。このシステムは、熊谷組の技術研究所が有するフィールドの模擬河道閉塞盛土において、遠隔操縦による動作確認が行われました。なお、これらのツールを運搬するためのクローラキャリアダンプの走行には、一部、自動走行機能を活用しています。

図8
図8 押出しツールを用いた水中ポンプ投入の動作試験

3. 今後の展開

本プロジェクトの2030年の目標は、 自然災害環境に代表される多様な環境におけるインフラ構築を実現することであり、2025年終了時の目標は、 模擬自然災害環境にてこれを実現することです。そこで、2025年には、河道閉塞応急復旧作業のシステムインテグレーションを完了し、夏には、九州大学内に構築する河道閉塞模擬環境において災害対応デモンストレーションを実現することで、本研究開発テーマで統合する応急復旧システムのTechnical Readiness Level 5(模擬的な環境下において、技術・システムの基本的な機能・性能が実証された状態)を達成する予定です。