成果概要
一人に一台一生寄り添うスマートロボット[4] スマートロボットの実用化方策
2023年度までの進捗状況
1. 概要
本研究開発項目は、スマートロボットの実用化方策の提案を目的としています。この研究開発項目の遂行により、プロジェクトが目指す「一人に一台一生寄り添うスマートロボット」がグローバル社会において実現可能となり、ムーンショット目標3で目指すスマートロボットと共に暮らす未来の人間社会のよき実現に貢献します。この達成に向けては、地域や文化によるスマートロボットのニーズおよび社会受容性の差異が国際的な課題となっており、この点を挑戦的なテーマとして取り組んでいます。従来とはまったく異なる「ヒューマンファーストイノベーション」の発想で、倫理的・法的・社会的な課題(ELSI)の視点から、ケンブリッジ大学やスタンフォード大学などと連携し、理論的研究と国際比較調査を用いて取り組んでいます。
プロジェクトが目指すスマートロボットの世界的な受容には、次の4つのステップが必要となります。
1)国際比較調査により、地域や文化の違いによるスマートロボットに関するニーズの抽出、社会受容性の理解。2)多様性とインクルージョンならびに倫理的・法的課題に配慮したスマートロボット開発原則の作成。3)実証実験による設計・制御への反映。4)利用者のスマートロボットリテラシーを向上するためのツールキットの開発。

2. これまでの主な成果
ELSIの視点から世界に通用するスマートロボットの社会実装を実現する要件を明らかにするために、倫理・法・社会それぞれの観点から研究を進めてきました。
- 1)昨年度に開発したスマートロボット倫理基本方針案(「ヒューマンファースト」「責任ある開発・運営」「漸進的な開発」「安全性とセキュリティ」「多様な人の可能性の多様なままの支援」「一人ひとりの権利の保護」「適切な親密性の確保」「地球環境問題への配慮」の8箇条からなるスマートロボットELSIの基本的な考え方)を発展させ、プロジェクトが開発しているスマートロボットAIRECの設計・制御に反映させるとともに、国際的に通用する普遍的なスマートロボット開発原則案として一般化を進めました。
- 2)AIRECに関連する法規範を、行政法規・民事法・刑事法に分類して検討し、物理的リスクと心理的リスクについてのケーススタディを作成することで、AIRECの設計・制御、社会実装やデモンストレーションに関わる法的課題の抽出と検討を進めました。
- 3)ELSI研究の成果をAIRECの設計・制御に反映させるためのツールとして、倫理的リスクアセスメント(ERA)を試作しました。これは、ロボット倫理研究におけるERAの先行研究を、本研究でのELSI研究成果に基づいて応用したものであり、スマートロボット開発原則案を下敷きにして、AIRECの利用場面に即してより細かく具体的に検討したものです。リスクを、物理的、心理的、プライバシーとセキュリティ、環境、その他に大分類し、各リスクの各細目についてリスクレベルと緩和策をプロジェクト内で案出しました。
3. 今後の展開
今後は、1)実践的課題:人との相互作用の観点からのAIロボットの現状分析、及び実践的方策・原則の作成とAIRECへの反映、2)法的課題:AIロボット時代における決定・責任の主体のあり方の考察、3)理論的(原理的)課題:人間の善き生にとってのAIロボットの条件についての考察に取り組むことになります。

