成果概要
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一人に一台一生寄り添うスマートロボット[2] スマートロボットの知能システムの構築
2025年度までの進捗状況
1. 概要
現在の人工知能技術において、最大の課題の一つとして「モラベックのパラドックス」が存在します。このパラドックスは、大人になって可能になる対話や論理推論に比べ、子供でも半無意識的に実行可能な作業が、最新の人工知能にとって非常に困難であるという矛盾を指摘しています。この問題は、近年のChatGPTなどのLLM(大規模言語モデル)の発展によってより顕在化し、Google DeepMind、OpenAI、テスラなど世界のAIのトップ企業が、LLMの次のターゲットとしての”(人型)ロボット”に着目し、2023年には非常に大きな分野に発展しました。
本研究では、脳神経科学の知見を背景とした独自のアプローチである「深層予測学習」を活用し、人間の手作業、特に家事を支援するロボット知能の実現を目指します。深層予測学習は、深層学習技術を応用し、リアルタイムで高次元の感覚と運動の変化を予測し、予測誤差を最小化するためのフレームワークです。既に本手法によって、衣類や食材のハンドリング、家屋内での移動などのタスクを実現しており、今後も研究成果を拡大していく計画です。
2. これまでの主な成果
プロジェクトで開発した人間協調ロボットDry-AIREC、その他のロボット群を用いて、複数の動作学習研究を展開しました。以下にその一部を示します。
1)多指ハンドの制約的・局所的接触状態に基づく注視型ブラインド切り替え操作:
多指による高自由度の運動と膨大な触覚情報を利用した運動の切り替え手法として、接触状態の制約を課した損失関数と接触状態に応じて重要なモダリティに注視するためのアテンション・メカニズムを提案しました。物体のスライドとキャップ開放のサブタスクからなるキャップ開放操作により検証したところ、提案手法は多様な物体を用いたリアルタイムのキャップ開放操作において、最も高い成功率を達成しました。

2)強化学習による非把持物体操作の獲得:
シミュレーションでの動作学習をマニピュレーションに適用する研究として、非把持物体操作にフォーカスした研究を進めました。強化学習の問題としての定式化の工夫、システム同定、ドメイン乱択化などを行なうことで、シミュレーションで箱上物体の搬送のみを学習したにもかかわらず、強化学習をオフラインの動作生成器として利用し、ゼロショットで実環境における様々な物品の搬送が可能であることを示しました。

3)複数種類の衣類の折畳み:
衣類の種類識別による動作選択と衣類の形状状態の正確な把握による適切な折畳み動作生成を実現するため、赤いTシャツ、青いジーンズの2種の折畳みを行うタスクを単一モデルに学習させました。この深層予測学習モデルを用い、30回程度×2種の少データを学習して自律動作を実現しました。この研究成果は、2025年8月6日~18日に大阪・関西万博のムーンショットパークにてデモを行いました。連日400~500回の連続デモを実施し、成功率は約95%でした。

4)潜在状態の不確実性を考慮した高次元・多モーダル深層予測学習モデル:
ロボットのRGB視覚画像、関節角度・トルクを事前処理なしで自由エネルギー最小化(予測誤差最小化)だけで予測学習する手法を提案しました。本手法は特定のタスクに依存した処理を仮定しないため、容易に他のタスクへの転用等が可能となります。体位交換タスクに加えて、清拭タスクデータを加えたマルチタスクでの学習実験を行い、提案モデルは「起こす/拭く」動作のタイミングや、タオルの位置・ベッドの高さといった条件の違いに対しても汎化が可能であることを確認しました。

3. 今後の展開
今後は現実的な社会実装に向けて、多様なタスクの学習とデモンストレーションを行う予定です。