成果概要
最終更新日:
恒常性の理解と制御による糖尿病および併発疾患の克服[4][5] 数理モデル解析による恒常性の理解とその応用、糖尿病や併発疾患の未病段階の理解とデータ基盤の構築
2025年度までの進捗状況
1. 概要
2つの研究開発項目(項目4と5)は、プロジェクトの中で、(i)2型糖尿病や併発疾患である心不全を中心に、正常状態や未病段階から疾病状態への移行について、経時的に様々なデータを収集する(項目5)、(ii)これらの動物実験データ、ヒト生体データを用いて、数理モデル解析を進め、重要要素の抽出による包括的な理解につなげる(項目4、下図参照)という役割を担っています。これらの研究開発項目の達成により、数理モデルをもとに実験科学だけでは見出し得ない機序の発見やターゲットの創出につなげ、真に重要なメカニズムを明らかにします。

この達成に向けては、数理科学者と医学、生物学の研究者との密な連携が課題となっており、この点を挑戦的テーマとして取り組んでいます。従来とはまったく異なる、実験・データ取得とモデル解析を連動させるという発想で、生化学、遺伝子発現解析、エピゲノム、メタボローム、臓器別機能解析、数理モデル解析など種々の手法を用いて取り組んでいます。
2. これまでの主な成果
(1) 経口糖負荷試験シミュレーターの実装
手軽にパラメータ操作できる9コンパートメントモデルを用いた経口糖負荷試験シミュレーターを開発しました。このシミュレーターにより様々なパラメータ変化によって血糖値やインスリン濃度の変化や各臓器の代謝状態を評価することが可能になりました。

(2) 甘いもの好きの人の肥満を抑える腸内細菌の発見
ヒト健常者および肥満症患者の便検体を指標に、砂糖(スクロース)誘発性の肥満を抑制するバイオマーカーとして、難消化性菌体外多糖(EPS)を高産生するヒト消化管常在細菌を特定しました。EPSやEPS産生菌は、腸内環境の改善を指標とした糖尿病等を含む肥満症を超早期の未病段階で検出する技術や、新しいタイプの肥満予防・治療に繋がることが大いに期待されます。

(3) 心電図の測定だけで糖尿病予備群を発見
健診などで行われる一般的な心電図検査のデータを用いて糖尿病予備群を発見することができる新たなAIモデルの構築に成功しました。さらに、腕時計型ウェアラブル端末で計測される心電図のみでも、糖尿病予備群を発見し得ることを示しました。本成果を発展させることにより、健診や病院を受診して血液検査を行わなくても、いつでも、どこでも、誰でも糖尿病予備軍を発見し、糖尿病の予防に役立つことが期待されます。

3. 今後の展開
前半5年の糖代謝・循環系を中心とした数理モデル構築の成果を、今後は、「数理学的・情報科学的アプローチによる恒常性や病態の理解」に継承し、バイオ研究を融合させ、代謝・循環系の解析を横串的に進めるとともに、実験動物モデルから得られた高解像度な基礎的知見を、ヒトにおける複雑な糖尿病病態の解明および超早期予防・治療法の開発へと昇華させます。