成果概要
恒常性の理解と制御による糖尿病および併発疾患の克服[3] ヒトでの生体情報を簡便に取得する技術の開発とヒトデータ解析
2023年度までの進捗状況
1. 概要
本研究開発項目は、プロジェクトの中で、接触・非接触デバイスによる生体情報、ゲノム、呼気を用いた糖酸化レートの解析からできる限り簡便かつ非侵襲的に糖尿病や併発症の早期段階を検出・予測できる手法を開発し、社会実装する(下図参照)というテーマを担っています。この研究開発テーマの達成により、糖尿病や併発症の超早期段階の変調を検出・予測する手法開発や社会実装が成し遂げられ、本プロジェクト、目標2に貢献します。
この達成に向けては、高精度の早期糖尿病検出アルゴリズムの作成、糖尿病オムジーンモデルの精度向上、13CO2呼気試験のデータ収集が課題となっており、これらの点を挑戦的テーマとして取り組んでいます。従来とはまったく異なる、非侵襲デバイスのみから糖尿病や心不全を早期発見するという発想で、高速スペクトルカメラ、AI、コホートデータ解析などの手法を用いて取り組んでいます。

2. これまでの主な成果
(1) 心不全を在宅で早期に検出するアルゴリズムの構築
接触デバイス(在宅で使用できる心電図およびアップルウォッチ)を用いて、心不全を在宅で早期に検出するアルゴリズムを作成し、日本及び海外での知財化を進めました。

(2) 糖尿病を検出するアルゴリズムの構築
非接触デバイス(高速スペクトルカメラ)を用いて、早期の高血圧検出アルゴリズムに加え、糖尿病を検出するアルゴリズムを構築し、知財化を進めています。
(3) 13CO2呼気試験を用いた糖酸化・肝糖処理能の検査
13C-グルコースを摂取後の呼気中に排出される13CO2を測定することにより、個体レベルでの糖酸化能を検査する13C-グルコース呼気試験を知財化しました。
(4) 飢餓を乗り切り、命を守る肝臓からの仕組みを解明
肝臓がキーとなることで飢餓の際に必要以上のカロリー消費を抑え、食欲を高めることで、生命を守る仕組みを発見した成果です。インスリンシグナル低下に伴って肝から可溶型レプチン受容体が分泌されることを明らかにしました。今回の発見は、糖尿病患者が食べ過ぎることを防ぐ方法への応用につながることが期待されます。

3. 今後の展開
今後は、非侵襲デバイスによる高血圧、糖尿病の早期検出を可能とするために、さらにヒトからのデータ収集を進め、アルゴリズムのチューニングに挑戦します。これにより、一般人を対象として社会実装に耐えられるアルゴリズムの構築を目指します。
また、13CO2呼気試験については、大迫コホートで得られた寿命との関連データと結びつけるために、75gの13C -グルコース負荷でのデータを蓄積することに挑戦します。これにより、大迫コホートで得られた寿命関連結果との照合を進めます。