成果概要

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恒常性の理解と制御による糖尿病および併発疾患の克服[2] 糖尿病における多臓器変容メカニズムの解明と制御

2025年度までの進捗状況

1. 概要

本研究開発項目は、プロジェクトの中で、糖尿病における多臓器変容(下図参照)のメカニズムの解明と制御法の開発に向けた研究を担っています。この研究開発項目の達成により、糖尿病併発疾患の予防・診断・治療法が開発され、本プロジェクト、目標2に貢献します。
この達成に向けては、心・肝・脳・腎などの臓器や血管において、臓器の変容を機能・形態の両面から解析すること、さらに、炎症細胞などの制御機構との関連やケトン体の投与効果などの検討が課題となっており、これらの点を挑戦的テーマとして取り組んでいます。従来とはまったく異なる、併発疾患の間には密接な相互作用が関与するという発想のもと、シングルセルRNAシークエンス、フローサイトメトリー、二光子顕微鏡、走査型電子顕微鏡、光シート顕微鏡、組織透明化技術などの手法を用いて取り組んでいます。

糖尿病の主な併発症

2. これまでの主な成果

(1) 心不全の再発と多病のメカニズムを解明

糖尿病の主な併発疾患として知られる心不全は、「一度心不全を発症すると入退院を繰り返す」、「他の病気にも影響する」という特徴をもっています。このような心不全の再発、多病のメカニズムを明らかにした画期的な成果です (Science Immunology)。心不全の再発予防の開発につながります。

東京大学、千葉大学とJSTとのプレスリリース(2024年5月25日)
(2) 全臓器・全身の全細胞を網羅する3次元アトラスを構築

糖尿病における多臓器変容を解明するため、全ての細胞を3次元かつ1細胞解像度で記録した3次元全細胞アトラスを構築しました (Cell)。これを活用して糖尿病モデルマウスで超早期に生じる形態的変化などを網羅的に解析します。

東京大学、大阪大学、久留米大学とJSTのプレスリリース(2026年2月26日)
(3) 肝臓の糖新生が運動能を決める

運動の強さに応じて、肝臓での糖新生に使われる基質が異なることを明らかにしました(Nature Metabolism)。 ゆっくり走る軽い運動ではグリセロール、速く走る激しい運動では乳酸を基質とした肝臓の糖新生が活発化します。肝臓の酸化還元反応を促進させると、糖新生が亢進し、運動持久力が向上します。この仕組みは、運動能の向上法や肥満を改善し、サルコペニアを予防する手法につながることが期待されます。

東北大学とJSTとのプレスリリース(2025年9月18日)

3. 今後の展開

今後は、高脂肪食負荷による造血・免疫系への影響を明らかにするため、心臓組織マクロファージ、造血幹細胞、末梢血のシングルセルRNAシークエンス解析に挑戦します。これにより、代謝異常がどのように造血・免疫系へ作用するのか、そのシグナル経路を含む機序を明らかにし、糖尿病併発疾患の診断・治療標的の同定につなげます。
また、肝細胞でのインスリン作用や糖取り込みとその協調で行われるグリコーゲン合成を効率よく進め、食事由来のブドウ糖の末梢血流入を減らすことが糖尿病の予防・治療に重要です。肝での糖取り込み制御に関わるメカニズム解明から制御法開発につなげます。