成果概要

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生体内サイバネティック・アバターによる時空間体内環境情報の構造化[4] 生体内CAの基礎研究・技術

2025年度までの進捗状況

1. 概要

本研究開発項目では、生体内サイバネティック・アバター(生体内CA)に関連する競合技術、新規技術の動向を把握することを目的としています。生体内CAの動向に基づき、現行のコンセプト・計画を適切な状態にアップデートします。競合技術、新規技術の動向を把握するため、最新の論文誌の精査や、学会等への参加により、調査活動を行いました。
また、これまでの調査結果により、2024年度からIgA抗体応用技術に関する研究をスタートしました。IgA抗体の中でも、腸内細菌を標的とするモノクローナルIgA抗体を生体内CAと組み合わせて、腸管内の腸内細菌叢の状態を診断する技術の開発を目指しています。我々が臨床応用を目指しているモノクローナルIgA抗体(W27 IgA)は、マウスの腸管由来のIgA抗体です。この抗体は炎症性腸疾患や大腸がんなどの原因となる炎症惹起菌を特異的に認識して結合し、それらの病因菌の増殖を抑制しますが、一方で、短鎖脂肪酸産生菌などの有用菌には結合せずその増殖を抑制しないという性質を持ちます。この性質を持つW27 IgA抗体を臨床応用することができれば、腸内細菌叢の状態を診断するキットの開発、腸内細菌叢の乱れ(dysbiosis)によって起こると考えられているさまざまな疾患に早期介入する治療や予防が可能となります。

2. これまでの主な成果

これまで、本プロジェクトが提案している生体内CAのコンセプトに類似するような研究事例や、本プロジェクトの計画を大きく変える影響を有するような研究事例は見つかっていませんが、生体内CAと関連するカプセル型デバイスにおいて、高機能な検出・診断機能の付加が進められていることがわかりました。
本年度は、生体内CAの基礎研究・技術に関し、本プロジェクトの後半5年に向けた重要な知見が得られ、社会実装に向けた研究計画を適切にアップデートしました。また、昨年度は、生体内CAに不足している技術として、外部制御による移動機構に着目しました。そこで、今年度は外部磁場により腸管表面を移動する数mm以下の小型クローラー方式を採用した新規移動機構を考案しました。プロトタイプを作製し、永久磁石を先端に固定したロボットアームを用いて生体内CAの操舵や移動が可能であることを確認しました。本成果に関連し、特許仮出願、および国内・国際学会で発表を実施しました。
IgA抗体応用としては、大腸がんの超早期病変を内視鏡観察下で可視化することを試みました。前段階として、早期前がん病変部の組織を約30名の患者から提供を受けて調べたところ、早期前ガン病変部にはIgA抗体産生細胞が減少していることをRNA-seq解析から見出しました(MS7との共同研究)。IgA抗体の減少に伴い、病因菌が病変部に集積しているのではないか、との仮説を立て、蛍光標識したW27 IgA抗体でマウスの大腸発がんモデルの大腸を染色したところ、腸内細菌が集積している部分にW27 IgA抗体も集積する像が得られました。

IgA抗体を臨床応用するもう一つの試みとして、腸内細菌叢の中の病因菌に強く結合するというW27 IgA抗体の特性を生かして、早期大腸がん患者の腸内細菌叢へのW27IgA抗体の結合割合を調べました。その結果、健常人の腸内細菌叢に対する結合割合と比較して、早期大腸がん患者の腸内細菌叢に対するW27 IgA抗体の結合割合は有意に高値を示す(図1)ことから、dysbiosisの診断技術になると考えています。W27 IgA抗体の実用化により、dysbiosisが早期に診断可能となれば、消化管疾患以外の多くの疾患と関連することがわかっているdysbiosisに早期介入することが可能となり、多くの疾患の発症を予防することができる画期的な医療技術となります。W27 IgA抗体を臨床応用するためにはELISAキットなどのハイスループットな検査技術の開発が必要と考えており、検討を進めています。

以上から、早期大腸がんのバイオマーカーとして、W27 IgA抗体だけではなく、腸管IgA抗体の重要性が明らかになりました。

図1
図1 W27 IgA抗体が腸内細菌に結合する割合=dysbiosisの指標

3. 今後の展開

今後も、生体内CAに関連する現行の競合技術・新規技術に関する技術調査を行い、不足技術の有無、解決案を検討します。IgA抗体応用技術に関しては、腸内細菌が集積している部分にW27 IgA抗体も集積する像が得られたことから、今後は早期がん病変を検出する技術に応用するべく、生体適合性のある蛍光W27 IgA抗体の開発を目指します。また、早期大腸がん診断への貢献として、便を使ったIgA抗体量の測定やW27 IgA抗体結合菌割合をキットで測定することが可能となれば、より簡単に早期大腸がん、あるいはdysbiosisを診断できます。これにより、疾患の早期の段階で内視鏡検査を実施することが可能になり、患者数の減少へつながると期待しています。