成果概要
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生体内サイバネティック・アバターによる時空間体内環境情報の構造化[1] 生体内CAの構築
2025年度までの進捗状況
1. 概要
本研究開発項目では、生体内サイバネティック・アバター(生体内CA)の要素技術の研究開発を行います。また、応用課題として、分散遠隔操作による生体内CA(分散CA)および協調遠隔操作による生体内CA(協調CA)に対して、システム統合を念頭において、設計、試作、基礎実験を行います。これまで、生体内CAに必要となる要素技術の研究開発を行いました。また、上記の応用課題に対して、システム統合に関する研究開発を行い、成果を2025年日本国際博覧会(大阪・関西万博)にて公開展示しました。
2. これまでの主な成果
分散CAでは、錠剤型、カプセル型、ヘリカル・リング型、ステント型に関して基盤技術を開発し、体内環境を動的かつ正確に計測、モニタリングし、腸内細菌叢を採取し、ピンポイントに投薬するために必要な、デバイス、計測、通信、加工、材料等のハードウェアの技術を開発しました。
タブレット型デジタル錠剤を、消化器官内、特に小腸・大腸内の温度・pHセンシングへと活用していくためには、電力の確保が必要になります。タブレット型デジタル錠剤は、集積回路と胃酸発電用電極のみが搭載されており、従来は胃内のみでの限定的な動作による服薬モニタリング機能が搭載されていました。そこで、胃酸発電で得られた電力を集積回路チップ内のコンデンサに充電・蓄電し、その電力をチップが胃を通過した後に生体モニタリングに利用するための基盤技術の開発に世界で初めて成功しました。65nmの低電力CMOSプロセスにおいて、提案回路の有効性を実証しました。
生体内CAの位置計測に関しては、飲みこみ可能なカプセル型生体内CAなどの位置を、体外から正確に推定する技術を開発しました。人体などの生体内では、生体の電気特性が空気中と大きく異なり、また個人差の影響も無視できず高精度な位置推定が困難であるという課題があります。そこで、生体組織の電気特性の影響を受けづらい磁界計測に基づく位置推定の研究を行っています。飲み込み可能なサイズの小型準静磁界発生器をカプセル型生体内CAに組み込みました(図1)。ここから放射される微弱な磁界を、体外に設置した磁気インピーダンスセンサ(MIセンサ)によって検出する計測システムを開発しました。機械学習を用いた手法を導入し、生体内CAの姿勢変化が生じる場合や複数の生体内CAが存在する場合でも平均誤差10 mm以下の推定精度を達成しました。MIセンサによる小型・高感度な体外計測システムは、生体内CAからの情報伝達と位置計測の両立を可能とするものとして期待されます。

分散CAの留置技術に関しては、飲み込み後に腸内の適切な場所で周囲の樹脂が熔けてリング形状に自己展開し腸内壁に固定される方式と、温度応答性形状記憶ポリマー製のヘリカル構造体を用いた方式を開発しました。ヘリカル構造体では、生体ブタにて食道内展開実験を行いました。また金井プロジェクトとの連携により、ヘリカル構造体表面の電気的インピーダンス変化による変形検出の基礎原理を検証しました。
ステント型では、ピンポイント投薬システムに必要な柔軟性に富んだ直径が50 nm以下のナノ細孔多孔膜の開発に成功しました。
協調CAでは、通常では採取が困難な組織・細胞の生体組織診断のための機構、計測、制御、通信、エネルギー供給、材料などに関して基盤的な技術を開発し、システム統合を行いました。
協調CAの位置決め・操作技術においては、内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)を想定したシステム統合を進め、牽引機構に力センサを組み込んだ牽引力の計測に成功しました。人工腸管モデル内に設置した粘膜モデルを用いて、医師操作によるESD操作検証実験を実施しました。腸管モデル内に定置したモジュールにより、切除部位の別視点観察および切除部位端部のワイヤ牽引補助を行うと同時に、内視鏡を介して電気メスで患部切除を行う協調操作に成功し、協調操作システムの有効性を確認しました。さらに、牽引機構を用いて組織を採取する際の遠隔操作性を向上するため、体内無線通信技術を松村プロジェクトと共同で開発しました。生体ブタによる動物実験により、体内無線通信による遠隔操作の有効性を確認しました。また、狭窄防止材料の原料として有望なアルギン酸誘導体の開発に成功し、実際に内視鏡下で使用する注入針つきカテーテルで注入することに成功しました。
さらに、軟組織操作に伴う組織変形を定量的に解析することを目的とし,鉗子および組織を同時に再構築・追跡可能なビジョンベース手術環境モデリングフレームワークとデジタルツインを開発しました。さらに,観測された組織形状および鉗子位置に基づいて、剥離・切開に適した部位を画像計測により同定可能であることを示しました。
3. 今後の展開
生体内での健康モニタリング、診断・治療技術の開発において、時空間的な制約が大きな課題です。生体内CAの構築に必要な要素技術を開発し、システム統合にも取り組みました。今後は要素技術を改良し、社会実装も見据えたシステム統合を進めます。