成果概要

生体内サイバネティック・アバターによる時空間体内環境情報の構造化[2] 時空間体内環境情報の構造化と遠隔操作

2023年度までの進捗状況

1. 概要

本研究開発項目では、個人の生体情報と履歴情報(診療、服薬他)が紐づいた、生体内の“時空間体内環境情報”を、わかりやすく提示する技術の研究開発を行います。また、小型サイバネティック・アバター(小型CA)群を自由自在に操作するために、操作性に優れたインタフェースの技術の研究開発を行い、評価に必要な患者シミュレーション環境を設計し、試作します。これまで、生体内の環境状態や生体内の振る舞いを詳細にシミュレートしたサイバー空間、生体内CAを操作するインタフェースや、生体特性を忠実に再現した臓器モデルの研究を実施しました。

2. これまでの主な成果

生体内サイバネティック・アバター(生体内CA)の制御に必要な、時空間体内環境の情報を取得する手法を開発し、内視鏡画像から腸管の3次元形状を復元しました(図1)。また、個人の外形情報と健康診断などで取得されるCT/MRI画像、内視鏡映像、生体内CAからの情報を基に、簡易的な消化管内環境モデルを構築する手法を実現しました(図2)。少数データによる腸管セグメンテーションモデルを構築し、1000例以上の大規模データベースに適用しました。
また、腸管の健康機能に関する情報をマッピングできる手法の開発を進めました。位置情報をもとにした健康機能情報マッピングができるように、大腸形状の芯線を抽出し、芯線と変曲点に基づく1次元座標として表現できるようになり、これに様々なセンシング情報を容易にマッピングすることが可能となりました。さらに、1年程度の間隔を経て撮影される画像から構築される時空間体内環境情報が解剖学的特徴点において適切な精度で対応付けられることが可能となりました。これらの時空間環境情報技術は、生体内CAから得られる情報を統合する基盤となるとともに、人の健康を長期間モニタリングする方法へとつながります。

図1 内視鏡画像から腸内形状復元
図1 内視鏡画像から腸内形状復元
図2 腸管の時間変化モデル
図2 腸管の時間変化モデル

操作インタフェース技術として、生体内CA操作を直感的に行う操作インタフェース、着衣型能動デバイスを用いた生体内CA操作インタフェースの開発を進め、着衣型能動デバイスの布地・人工筋の配向や構成の検討や遠隔操作実験系の構築を行いました(図3)。また、内視鏡カメラと汎用ロボットアームを用いた遠隔操作実験系を構築しました。長時間の内視鏡操作に適用し、負担軽減に貢献します。

図3 着衣型能動デバイスを用いた操作インタフェース
図3 着衣型能動デバイスを用いた操作インタフェース

評価に必要な臓器モデルとしては、ハイドロゲルの材料組成を評価し、生体特性に忠実なモデルの設計と評価を行いました.また、ハイドロゲルの内部溶液を人体の電気インピーダンスを模擬した溶液に置換する模擬技術を開発しました。アメリカ国立衛生研究所が無償配布している消化管のCADデータや市販の解剖図に基づいたCADデータを用いて、ハイドロゲル製消化管モデルを作製し、各研究課題で評価に利用しています。

3. 今後の展開

生体内CAを実現するには、システムからの情報を呈示し、小型CAを操作する人を繋ぐためのインタフェースや、評価技術が必要です。必要な要素技術が徐々に開発できていますが、システム統合に向けたチャレンジングな技術課題が残されています。今後もシステム統合を念頭において、要素技術の研究開発を継続し、設計、試作、基礎実験を行っていきます。