成果概要

身体的能力と知覚能力の拡張による身体の制約からの解放[4] 共通基盤技術

2024年度までの進捗状況

1. 概要

本研究開発項目では、他チームの研究活動を支える共通基盤の整備を進めています。体制強化に向け、海外チームも含めた課題推進者の選定と追加を行い、ブレインテック・ガイドブックやエビデンスブックの作成を通じて、BMI(Brain Machine Interface)技術に関する理解の促進を図っています。法制度面では、神経技術の進展が法理と実務に与える影響を整理し、国内外に向けた提言や発信を継続しています。また、非侵襲BMIの一般理解を深めるためのアウトリーチや、国際的な認知の向上にも取り組んでいます。Cybernetic Avatar(CA)技術を操作・拡張・再利用可能にするためのオープンプラットフォームであるOpenCAでは多信号統合やオープンソース化、国際連携の枠組みを構築し、信頼ある社会実装を後押ししています。

2. これまでの主な成果

<共通課題の検討と社会実装に向けた研究開発>

SFプロトタイピング『Neu World』では、漫画・小説・ショートショートの新作計11点を制作・公開しました。これらは、BMI-CA技術をめぐる倫理や社会受容の課題を市民と共有・対話するためのものであり、科学と社会をつなぐ手段として位置づけています。体験型作品については、WIRED Sci-Fiプロトタイピング研究所と連携し、次年度の展開に向けた世界観構築を進めました。建設現場におけるデジタルツインの活用では、工事責任者らへのヒアリングを通じて現場課題を整理し、点群データと360度画像によって進捗を可視化。CAによる遠隔操作と知覚支援の可能性を探る実証として、バーチャル空間で1名のCAが移動可能なシステムを整備し、画像認識AIによる物体検出の有効性も検証しました。

<Trusted BMIを実現する社会基盤整備>

一般消費者向けBMI製品の信頼性を評価する基盤として、『ブレインテック・ガイドブック vol.2』を日英で公開し、仮想製品5例と実質的なチェックリストを掲載しました。本書はOECD「Neurotechnology Toolkit」にも採用され、国際的な指針整備にも貢献しています。また、ニューロフィードバックや脳波活用など12項目を対象としたシステマティックレビュー(SR)※1のうち、10項目の調査を完了し、9項目を反映した『エビデンスブック』も更新・公開しました。さらに、レビュー作業の効率化をめざして自動化ツールの開発を進めており、LLMとの比較により分類精度や作業時間短縮の効果を確認済みです。今後も、信頼性と透明性の両立に向けた基盤づくりを継続していきます。

※1 公開研究を体系的に収集、評価し、その結果を統合するための科学的方法

<BMI-CA活用における法学的検討>

ELSIに関する国際的な議論を深め、日本から具体的な提言を発信するため、複数の取り組みを行いました。Marcello Ienca氏を招いた国際ワークショップでは、主要なELSI課題について意見を交わし、翌年の国際登壇についての合意も得られました。また、IoB-S研究会の成果をもとにレポートを改訂・刊行し、発刊記念会合を通じて広く紹介しました。国際神経倫理学会ではプレナリーセッションを主催し、国連人権理事会から報告書への意見提供も求められました。こうした活動により、国際的なELSIネットワークの深化と、Neurolawを含む新たな規範づくりに向けた基盤の形成が進みました。

<AI支援型BMI-CA技術の国際アウトリーチ>

AI支援型BMI-CA技術の社会実装を視野に、認知度と体験品質の向上を目的として、7か国からの留学生18名と障害当事者6名が参加する国際ブレインピックを実施し、操作性や装着性に関する意見を収集しました。これを踏まえ、脳波計の装着性やキャリブレーション設計、CAとの動作連携を見直し、4人同時対戦型の新システムを開発。大阪・関西万博での展示に向け、スライド機構の導入や耐久性の強化を進めました。あわせて、個人差に対応する自動校正機能を実装し、OpenCAとの接続も進展しています。さらに、中高生・大学生向け教材の改訂と授業導入により、正規教育での活用とAYA世代への普及にも取り組みました。

図
<OpenCA実現に向けたBMIの研究開発と国際的実証実験の推進>

今年度はその基盤づくりとしてBMI-CAのプロトタイプを開発しました。EEG(脳波)やEMG(筋電位)など複数の生体信号を扱い、ユーザー自身が操作インターフェースを構築できる柔軟なシステムを構成し、実機ロボットや仮想空間での使用にも対応しています。ROS2(Robot Operating System 2)を用いたオープンソース化を視野に、汎用性の高いアーキテクチャを採用しました。あわせて、研究者向けワークショップを開催し、操作性や信号の安定性に関する具体的なフィードバックを収集。さらに、Dubai Future Labと連携し、国際展開に向けた体験設計を進め、今後の共同研究の枠組みづくりにも着手しました。

3. 今後の展開

CA技術の社会実装には、実用性・信頼性・倫理性の両立と、国際的な枠組みでの展開が重要な柱となります。

  • OpenCAの国際連携や建設現場での実証を通じて、開発フレームワークの実装を加速します。
  • ガイドブック改訂、チェックリスト運用、SR自動化ツール、生体影響評価などを通じて信頼基盤を整備します。
  • 模擬裁判や国際シンポジウムにより、制度提言・人材育成・学会設立を推進します。
  • 大阪万博での実証機会を活かし、AI支援型BMI-CAとその実装ガイドの対外発信を行います。
  • ドバイでの展示や国際連携を通じて、BMI-CAの認知拡大と国際展開を進めます。