成果概要

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身体的能力と知覚能力の拡張による身体の制約からの解放[3] IoB コア技術

2025年度までの進捗状況

1. 概要

高精度な脳信号を安全に長期間安定して計測できることは、すべてのBMI開発のコアとなる基盤技術です。我々は、侵襲的および低侵襲な手法を組み合わせ、動物およびヒトを対象とした神経計測・解読・入力 技術の開発を進めています(図1)。特に、長期安定計測、AIを用いた脳情報解読、光および電気刺激による入力技術を統合し、身体機能や意思伝達能力の補綴・拡張を可能とする基盤技術を構築しています。さらに、これらの成果を社会実装するために、複数のスタートアップ企業を設立し、臨床応用に向けた研究開発を加速しています。

図1
図1 侵襲的BMIの開発

2. これまでの主な成果

霊長類における長期・自然環境下での脳活動計測と解読

高精度な脳信号の長期安定計測のために、東京科学大学の小松三佐子特任准教授らのグループは、音声コミュニケーションを行う霊長類であるマーモセットを対象にして、動物が人のようにオンラインでコミュニケーションを取ることができるシステムを開発しました。マーモセットの広域皮質脳波の無線計測システムを立ち上げ、他個体との音声コミュニケーション中の発話・行動・神経活動を計測し、行動カテゴリと発声の種類という異なる情報の読み取りに成功しました(図2)。

図2
図2 マーモセット広域皮質脳波無線計測と解読
(Komatsu et al, BCI Meeting, 2023)
神経細胞レベルでの情報伝達に成功

脳へ詳細な情報を入力できるようにするため、生理学研究所和氣グループはホログラフィック2光子顕微鏡を用いて、これを光遺伝学的手法(オプトジェネティックス)と組み合わせ、人為的な感覚の創出に成功しました(図3)。さらに個体間の情報伝送に成功しつつあります。

図3
図3 光遺伝学的情報伝送装置(左)、複数のマウス間の情報伝送(右)
人が意図した画像や言葉を出力するBMIを開発

AIを用いて人の意図を解読し意思伝達に応用するため、大阪大学栁澤琢史教授らのグループは、てんかん患者の頭蓋内脳波を用いて、ヒトが画像を想起することで、意図した画像を画面に提示するBMIを開発しました(図4)。今後、IoBミドルウェアグループと共同で、多様な概念を抽出して意思伝達する技術へ応用します。また同様に、UCSF Edward Chang教授らのグループは、病気で発話が難しい患者の脳に電極を留置し、皮質脳波を計測し、患者が発声を意図した際の皮質脳波をAIが解読することで、毎分78単語の速さで文章が生成され、これをアバターが発声することに成功しました(図5)。

図4
図4 想起内容を出力するBMI
(Fukuma et al., Comm.Biol., 2022)

さらに、発話と同時にアバターを制御しマルチモーダルな意思伝達を可能としました。この成果はBMIによる意思伝達が実用的レベルになったことを示しています。

図5
図5 侵襲BMI-CAによる発声
(Metzger et al., Nature, 2023)

また、これらの成果をもとに、栁澤グループでは、血管内脳波BMIの社会実装を目的とした株式会社ivecを設立し、ヒトへの応用に向けた開発を推進しています。