低炭素社会の実現に向けた技術および経済・社会の定量的シナリオに基づくイノベーション政策立案のための提案書

LCS-FY2022-PP-04

蓄電池システム(Vol.10)
―定置用蓄電池の供給可能量と鉛蓄電池のコスト評価―

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概要

 2030年、2050年にかけて再エネ発電が大量に導入されると同時に、その電力安定化のため蓄電池も大量に導入される。また、自動車のEV化でEV用の蓄電池も大量に導入される。本提案では、科学技術振興機構低炭素社会戦略センター(以下、LCS)の定量化プラットフォームとコストエンジニアリング手法を用い、将来の定置用蓄電池の供給可能量調査と鉛蓄電池のコスト評価を行った。

 EV用に最適な高エネルギー密度のLiNi0.85Co0.12Al0.03O2(NCA)を正極活物質に用いるリチウムイオン電池(LIB)は、2030年頃までに原材料となるCo、Ni資源が枯渇に近づくため、Co、NiフリーのLi1.2Ti0.4Mn0.4O2、Li2Mn1/2Ti1/2O2F正極の、新たな高エネルギー密度のLIBへの変更が求められる。一方、再エネ定置用には低システムコスト13円/WhでLIBの1/4の低CO2排出量8g/Whの鉛蓄電池の導入がLCSで示唆された。鉛蓄電池の原材料となる鉛は、世界の鉛製造再生化率を現状の60%から90%にすることで、2050年の日本の電力需要量の3500TWhに対応する全蓄電池量12TWh の75%の8TWhを鉛蓄電池で供給可能であり、全世界で必要な117TWhを鉛蓄電池で供給可能であることが分かった。
 本提案は、再エネ定置用蓄電池に、持続的資源循環可能で低コスト、低CO2排出の鉛蓄電池の導入活用を進めるとともに、鉛蓄電池に代わるコスト競争力のある蓄電池システム、例えば中国、韓国メーカーに後れを取っている、低コストのリン酸鉄系正極リチウムイオン電池の研究開発が必要であるとするものである。蓄電池産業の育成と市場創出のための国の早急なる支援が望まれる。また、ここで得られた鉛蓄電池の性能、仕様を電源構成モデルに適用し、水素や揚水発電よりコストパフォーマンスの点で優位であることが示されたことを付記する。

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