低炭素社会の実現に向けた技術および経済・社会の定量的シナリオに基づくイノベーション政策立案のための提案書

LCS-FY2021-PP-01

情報化社会の進展がエネルギー消費に与える影響(Vol.4)
-データセンター消費電力低減のための技術の可能性検討-

  • SDGs7
  • SDGs9
  • SDGs13

概要

 前報において、情報化社会の進展に伴う世界の情報量(IPトラフィック)は2030年には現在の30倍以上、2050年には4,000倍に達すると予想され、現在の技術のまま、全く省エネルギー対策がなされないと仮定すると、データセンターだけで2030年には年間3,000TWh、2050年には400PWhという膨大な消費電力が予測された。

 本提案書では、このようなIT社会の消費電力の増大をどのような技術で抑制することが可能か、データセンターの省エネルギー技術について、その消費電力の大部分を占めるサーバを中心にできるだけ定量的に検討した。特にサーバを構成するデバイスの中でもエネルギー消費の大きいプロセッサーに重点を置き、次いでメモリとストレージについて、改善幅の小さい場合(Modestケース)と大きい場合(Optimisticケース)について検討した。2030年におけるModestケースでは今後5~10年における現行技術の改善、特にCPUにおけるマルチコア技術、微細化技術、統合化技術などを、またOptimisticケースではアクセラレータ技術の進展を織り込んで検討した。この結果2030年のデータセンターの消費電力はModestケースで国内24TWh、世界670TWh、Optimisticケースで国内6TWh、世界190TWhと推定された。このうちサーバ消費電力はModestケースで国内17TWh、世界510TWh、Optimisticケースで国内5TWh、世界140TWhと推定された。2050年は遠い将来のため、その予測の信頼性は高くはない。Modestケースは2030年までと同等の改善率で進捗するとした。Optimisticケースでは、新計算原理としての非ノイマン型CMOSコンピューティング、量子アニーリングが寄与するとした。この結果2050年のデータセンターの消費電力推定としてModestケースで国内500TWh、世界16,000TWh、Optimisticケースで国内110TWh、世界3,000TWhと推定された。このうちサーバ消費電力はModestケースで国内330TWh、世界で11,000TWh、Optimisticケースで国内50TWh、世界1,600TWhと推定された。
 結局、2030年までは現行技術の改善によりデータセンターの消費電力は許容不可能な状態にまでは達しないと考えられる。一方で、今後10年程度で現行技術は限界に到達すると考えられることから、AIの社会への浸透がさらに進んで自動運転なども実用化されるであろう2050年を見通すときには革新的な新技術の開発が求められ、特にCPUおよびCPUを補完する計算機能の研究開発が極めて重要である。このためには基礎研究、応用研究、人材育成への長期的継続的投資が必要である。

提案書全文

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