低炭素社会の実現に向けた技術および経済・社会の定量的シナリオに基づくイノベーション政策立案のための提案書

LCS-FY2016-PP-10

低炭素電源システムの安定化と技術・経済性評価
—2050年CO2排出量80%削減に向けた日本の電源システムの課題—

概要

 低炭素社会の実現に向けて再生可能エネルギーの大規模導入が期待される一方、自然条件に依存する出力変動は、系統システムの安定運用に悪影響を及ぼすことが懸念されている。このため、出力変動に対応する新しい電源システムの構築が必要となる。

 本稿では、技術開発と経済性の観点から、低炭素電源システムを評価する。LCSでは、将来の技術開発を考慮した独自のデータに基づく定量的技術シナリオの構築手法と、システム安定化を考慮した多地域電源構成モデルを開発している。この手法を用いて、2050年の低炭素電源システムの技術課題を、CO2排出量とコストの面から評価した。分析対象は2050年に電力起源のCO2排出量が2013年比で80%削減となる低炭素電源システムとした。このCO2制約下において、再生可能エネルギーの低コスト化技術、省エネルギー技術、システム安定化に寄与する発電システムの技術開発などを考慮したシナリオ分析から、以下の結果を得た。再生可能エネルギーのコスト低下により、2050年に電源起源のCO2排出量を80%削減することは、現状の発電コストと同等で実現可能である。そのためには特に、太陽光発電システム、蓄電池システム、高温岩体地熱発電システムの技術開発が重要である。また、省エネルギーによる電力需要の削減は、発電コストの低下とシステム安定化に寄与する。電源システム系統安定化に重きをおき、短期および長期の出力変動と過渡安定度の維持に寄与する系統安定化のための、技術課題と低炭素電源システムの精緻な評価、および実証と検証を進めていくことが重要である。

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