[情報担体]情報担体を活用した集積デバイス・システム

戦略目標

情報担体と新デバイス

研究総括

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研究総括:平本 俊郎(東京大学 生産技術研究所 教授)

概要

 本研究領域は、デバイス内で情報の鍵を握る「情報担体」の特性を活用した高性能・高機能デバイスを創出し、さらにこれらを集積化・システム化することにより社会実装可能な情報システム基盤技術を創成します。超スマート社会やさらにその先の次世代情報化社会を実現するには、情報処理を担うデバイスやシステムのさらなる高度化が不可欠です。一方で、CMOSの微細化に代表される従来のエレクトロニクスでは情報処理能力向上に限界が見え始めており、限界を突破するための新しい材料・デバイス技術やそれらをシステム化するための革新的な基盤技術が求められています。
 そこで本研究領域では、デバイス内での情報処理の鍵となる情報担体に着目します。ここで情報担体とは、状態変数として定義される情報を表す物理量や物理系のネットワーク構造・分子構造等、広く情報を担い得る自由度を包含した概念とします。本研究領域では、多くの既存デバイスで情報担体の役割を果たしている電荷に限らず、スピン状態や分子構造、物質相変化、量子、構造ネットワークといった情報を担いうるあらゆる情報担体を対象とします。情報の取得、変換、記憶、演算、伝達、出力等のデバイス機能の根幹をなす多様な情報担体を深く掘り下げ、かつ高度に利用することによって革新的なデバイスを創出します。さらに社会実装可能なシステム構築へと導くため、単体デバイスによる機能発現にとどまらず、集積化・システム化を行うことにより、回路・アーキテクチャ・システム・アプリケーションレイヤーとの協働を進め、革新的な情報システム基盤のイノベーションを目指します。

 本研究領域は、文部科学省の選定した戦略目標「情報担体と新デバイス」のもとに、2020年度に発足しました。

募集・選考・領域運営にあたっての研究総括の方針

1.背景

 あらゆるモノやヒトがネットワークでつながり、今までにない新たな価値を生み出すSociety5.0の実現に向けて、フィジカル空間(物理空間)とサイバー空間(仮想空間)との密接な結合が求められています。さらなる結合の進展には、フィジカル空間の多様な情報を幅広く収集し、高度な情報処理による価値抽出や、フィジカル空間への物理的なフィードバック手法の開拓が必要となります。つまり、フィジカル空間とサイバー空間を結合したCPS(サイバーフィジカルシステム)を構築するために、基盤となる各種デバイスの性能向上や新たな機能開拓、インターフェイスの多様化などが求められます。
 また、情報システムの進化を支えてきた半導体デバイスの二次元微細化・低コスト化技術は限界も見え始めており、従来の情報処理システムやそこに用いられる材料・デバイス・回路集積・アーキテクチャなどの質的な転換、新たな概念や基盤技術の創出、それらを支える学理の構築が必要になると考えられます。

2.募集・選考の方針

2020年度説明会動画

 そこで本研究領域では、デバイスにおける情報処理の鍵となる情報担体に注目し、情報担体の特性を最大限に引き出した革新的なデバイス創出と、その集積化・システム化による情報基盤技術の創成を掲げます。ここで情報担体とは、情報を発現しうる物理量・物理状態・物理現象等を広く意味するものとします。一般にデバイスは、情報担体を用いて情報を表現し、それらを操作することにより各種情報の処理や伝達を行います。従来の多くのデバイスにおいて情報担体は電荷であり、電荷を用いてビットやアナログ量を表現し、電荷を操作することで各種の情報処理を行っています。どのような情報担体を、どのような材料や構造でどのように集積化し、デバイスの機能や特性を引き出すのか、さらには、センシング、コンピューティング、アクチュエーション、通信、表示、エナジーハーベスティングといった異なる機能をどのように融合し、システムとしての効率性や性能を高めるのか、原理に立ち返りつつ、集積化・システム化までカバーし、情報システム基盤イノベーションに繋がりうる挑戦的な研究を募集します。特に電子、量子、スピン、イオン、物質相変化、素子構造、物理系ネットワーク構造などの多様な情報担体の活用法を探索し、それらを効果的に制御するデバイス動作原理、デバイス構造、回路構成、システムアーキテクチャ、またそれらの信頼性保証技術などを追求する独創的な提案を歓迎します。
 本研究領域では、どのような情報担体やデバイス機能を対象とするかは問いません。電荷を情報担体としても構いません。また、研究提案のコアとなるブレークスルー技術は、情報担体そのものであっても、情報担体の特性を引き出すデバイス技術であっても、それらの集積化・システム化技術であっても構いません。ただし、単体デバイスにおける機能創出に留まる研究は対象としません。必ず集積化あるいはシステム化まで研究期間内に発展しうる研究を対象とします。

 以下に具体的な研究課題を例として示しますが、これらに限らず情報担体やデバイス技術、集積化技術等をコアとしてシステム化まで関連分野を垂直統合し、CPSやIoT社会への貢献、環境エネルギー問題、超高齢化問題、安全・安心な生活の実現といった社会課題への貢献を目標とした提案を広く歓迎します。

・新材料や新デバイス構造を基盤として、情報担体の特性を最大限に引き出す革新的なコンピューティング技術の開発
・大規模なデータを高速かつ省エネルギーでリアルタイムに処理する集積デバイス・システムの開発
・センシングとコンピューティングの融合、ロジックとメモリの融合などの効率的な情報処理による集積IoTデバイス技術の開発
・情報担体・新原理デバイスのCMOSチップ搭載による集積化・システム化
・電子、スピン、光、分子、イオンなど多様な情報担体間の変換を高効率に実現するトランスデューサ技術の開発
・単一デバイス内において情報の取得・演算や制御を同時に実現するアクチュエータ等の自律型デバイス開発
・物理系ネットワーク構造等の広い概念での情報担体の物理的・数理的解析による新しいニューラルネットワークやコンピューティング技術の開発
・多様な環境や生体との調和性を保ち、かつ高い堅牢性を持つ多機能性集積デバイスの開発
・情報担体の高度活用を可能にするプロセス技術や集積化技術の開発
・従来型デバイスの機能拡張による新たなアプリケーションの開拓

3.応募にあたっての留意点

(1)目標設定と記述内容
 提案にあたっては、解決したい社会課題や機能の目標を設定し、ボトルネックを明確にした上で、下記について明確に記述してください。また、その学術的・社会的意義を示してください。
1.情報担体:何が情報担体で、従来の情報担体の情報表現・情報操作と何がどのように異なるのか?
2.デバイス技術およびその集積化技術:情報担体の特性を引き出すためにどのような材料でどのようなデバイスを構築・集積し、どのような機能を発現させるのか?
3.システム化技術、あるいはすでに確立されている周辺技術との接続可能性
4.既存技術とのベンチマーク
5.研究終了時の達成目標とその後の社会実装を目指す戦略
6.研究終了時の実デバイス・実システムによるデモンストレーションの概要

(2)研究開発体制
 本研究領域は、Society5.0などの次世代情報処理社会で活躍するデバイス・システムの創出を掲げており、研究開発体制としても材料・デバイス・システム・アプリケーションなど多様なレイヤーの有機的な融合を果たした提案を求めます。研究代表者においては、自身のチームのコア技術の価値を最大限に高めるよう、多様なレイヤーの共同研究者と連携してシナジー効果を生み出しうる研究開発体制を構築し、幅広い視点でマネージメントすることを強く期待します。この中には単にデバイス創出だけでなく、学理としての情報担体の深耕や、集積化・モジュール化・システム化への展開も広く含みます。また、提案の成果が我が国の産業競争力の向上に資するよう知財戦略や適当な産業界との連携についても吟味した提案を望みます。

(3)社会実装への展開
 研究終了後の成果展開戦略として、研究の最終フェーズで実デバイスによる機能実証の実施を必須とします。集積化した実デバイスによる新規機能のデモンストレーションやプロトタイプシステムのデモンストレーションなど実証形式は問いませんが、社会実装へ向けたロードマップと照合し最大限のインパクトを持つ実証計画を提案書に記載してください。

4.領域運営方針

 本研究領域では、成果最大化や社会実装に向けた取り組みとして以下の運営方針を掲げます。
・同時期に開始されるさきがけ「情報担体とその集積のための材料・デバイス・システム」領域と緊密に連携して領域運営を行います。
・ブレークスルーとなる革新的なコア技術を有する若手研究者同士が積極的に異なるレイヤーの共同研究者とチームを組み、シナジー効果を生み出し革新的な成果を挙げることを奨励します。
・領域主催イベントにより、各種レイヤー間の融合の機会の提供することを計画しています。
・共同研究者に企業が含まれることは必須とはしませんが、社会実装を目指すには研究のチーム化と企業との連携が不可欠となりますので、研究開始後に知財やオープンイノベーションに関する研究推進ノウハウを共有する研究会を実施し、さらに企業を含めた研究開発環境の構築(コンソーシアム等)を検討します。具体的には、産業界の方からの研究計画への関心を喚起することを目指して、採択後まもない段階で広く研究計画を説明する機会の提供などを予定しています。

5.研究期間と研究費

 当初研究費は1課題あたり、総額3億円(直接経費)を上限とします。また、研究期間は 2020年度から2025 年度(5 年半以内)とします。

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