[たんぱく質] たんぱく質の構造・機能と発現メカニズム(たんぱく質の機能発現メカニズムに基づく革新的な新薬、診断技術及び物質生産技術の創製を目指して)

戦略目標

遺伝子情報に基づくたんぱく質解析を通した技術革新」(PDF:14KB)

研究総括

大島 泰郎(共和化工(株) 環境微生物学研究所 所長)

概要

 この研究領域は、生命活動の中心的役割を担うたんぱく質の構造及び機能を明らかにしつつ、応用の可能性を探索する研究を対象とするものです。
 具体的には、たんぱく質の構造解析の高度化並びにたんぱく質の動的な構造変化に立脚する触媒活性や代謝調節、情報伝達等の生体反応、発生、免疫、神経 系、環境適応等の高次の生命現象のメカニズムの解明とその医薬、診断技術、物質生産への応用、変性・再生等の動的な構造と物性の変化の解析とその制御や改 良技術の展開、これら研究に資する新たな測定技術や研究手法の開拓を目指す研究等が含まれます。

平成15年度採択分

核酸合成に関わるたんぱく質複合体の構造と機能解析

研究代表者(所属)
荒木 弘之 (情報・システム研究機構 国立遺伝学研究所 教授)
概要
多くの生命現象では、複数のたんぱく質による複合体の形成とその複合体の構造変換(リモデリング)が重要 な機能を担っています。この研究では、染色体DNA複製の開始とRNAの核外輸送に関与するたんぱく質複合体に焦点をあて、これら複合体の形成と構造変換 の制御機構を明らかにします。さらにこれらの研究から、細胞内反応を制御する人工分子スイッチの構築やRNA輸送を制御する抗エイズ創薬の可能性を探ります。
 

細胞周期/チェックポイント制御たんぱく質の構造と機能の解析

研究代表者(所属)
佐方 功幸 (九州大学大学院 理学研究院 教授)
概要
順序立った細胞周期とそのチェックポイント制御は遺伝子情報の正確な複製と分配に必須であり、その制御の 破綻は癌を初めとする多くの疾病の原因となります。本研究では、G2/M転移の主役であるCdc2を正・負に制御するたんぱく質群及びこれらを制御する チェックポイントたんぱく質のリン酸化等による構造・機能の制御を明らかにし、G2/M転移の本質に迫ります。その成果は、G2/Mチェックポイントを標 的とした抗癌剤の開発等につながると期待されます。
 

FFRPたんぱく質群によるDNA・リガンド識別機構の解明

研究代表者(所属)
鈴木 理 ((独)産業技術総合研究所 脳神経情報研究部門 グループリーダー)
概要
微生物の環境変化への応答、代謝、増殖、さらには細胞間情報伝達を制御する重要な転写因子グループである FFRP(饗/餓・制御たんぱく質)群を研究対象とします。具体的にはFFRPのNドメインが塩基配列を系統的に識別する機構やCドメインが多様なリガン ドを識別する機構の解明、FFRPを標的として、その種特異性に基づき細菌種ごとに対処する新しい創薬戦略の開発、少数の転写因子により多数の遺伝子群の 環境的制御を可能とする機構の全体像の解明を行います。
 

生体防御におけるたんぱく質間相互作用と機能発現機構の解析

研究代表者(所属)
藤田 禎三 (福島県立医科大学 医学部 教授)
概要
本研究では、分子・原子レベルから細胞レベルまでを対象に蛋白質複合体の動的な構造変化に基づく生体防御 の調節機構を解明します。生体が、コレクチンとフィコリン依存性に自己と非自己を規定する認識機構、引き続くセリンプロテアーゼ活性化による補体活性化メ カニズムの解析、さらにファゴサイトーシスというダイナミックな細胞現象の場におけるNADPHオキシダーゼの活性化モデルなどから、機能発現のための複 合体の構造変換の実態に迫り、その結果として感染症や自己免疫性疾患に対する生体の新しいバイオマーカーと自然免疫増強による感染防御システムの確立を目 指します。
 

平成14年度採択分

ストレスの受容・認識とシグナル変換の分子機構

研究代表者(所属)
一條 秀憲 (東京大学大学院 薬学系研究科 教授)
概要
本研究は、ストレス応答性MAPキナーゼタンパク質群、特にストレスセンサーとしてのMAP3Kファミ リーの分子機構解明に基づく戦略的創薬基盤の開発を目指します。本研究により、ASK1ならびにストレス応答性MAPキナーゼタンパク質群の構造機能相関 に立脚した全く新しい薬剤開発への発展が期待されます。
 

タンパク質の細胞内ダイナミズムの原理と制御装置

研究代表者(所属)
伊藤 維昭 (大阪大学 蛋白質研究所 招聘教授)
概要
タンパク質が細胞の特定の場所に配置され細胞を形づくる際の、膜を越えた分泌輸送、膜組み込み、局在化、 構造形成、分解過程などをつかさどる細胞機構の実態解明を目指して研究を行います。本研究は、ポストゲノムの研究において、ゲノム情報、プロテオーム情 報、そして構造情報を有効に利用するために必須の基盤知識を提供するものとなります。
 

アミロイドーシス発症の分子機構解明

研究代表者(所属)
後藤 祐児 (大阪大学 蛋白質研究所 教授)
概要
本研究では、アミロイドーシス発症の分子機構を、蛋白質の動的立体構造や物性に基づいて原子レベルで解明 します。これにより、関係する疾病の治療基盤の提供に止まらず、蛋白質フォールディング機構の原理的解明、ゲノムにおけるアミロイド原性蛋白質の予測、ア ミロイド原性蛋白質を材料とするナノテクノロジーの開発など、多くの分野の開拓と進展への貢献を目指します。
 

細胞内モジュレータプロテアーゼの生理機能の解析

研究代表者(所属)
反町 洋之 ((財)東京都医学研究機構 東京都臨床医学総合研究所 プロジェクトリーダー)
概要
カルパインは様々な生命現象の制御を担う細胞内モジュレータ(変換・調節)プロテアーゼの代表であり、その機能不全により糖尿病や筋ジストロフィーをはじめ多くの疾患を引き起こします。カルパインの作用機序の分子機構を新規活性測定システムの開発などにより解析し、プロテアーゼによる生体制御機構の根本原理を解明します。本研究によりカルパインの関与する疾患の発症の分子機構を明らかにして、その診断・治療・予防に対し、モデルマウス開発をはじめ大きな寄与をなすことが可能となります。
 

異物排出トランスポーターの構造機能解析

研究代表者(所属)
山口 明人 (大阪大学 産業科学研究所 教授)
概要
異物排出トランスポーターは21世紀の病原細菌多剤耐性の主因です。本研究では、異物排出トランスポー ターのX線結晶構造解析を進め、その構造をもとにタンパク工学的手法を用いて異物認識排出機構を解明し、多剤耐性を克服する創薬につなげます。異物排出ト ランスポーターライブラリの中から、主要な3類型全ての構造を決定し、分子生物学的、物理化学的解析と併せて、トランスポーター複合体の解離会合、異物輸 送機構を全面的に解明し、阻害剤・回避剤の分子設計を目指します。
 

たんぱく質と膜が造る細胞内物流システム

研究代表者(所属)
吉森 保 (大阪大学 微生物病研究所 教授)
概要
細胞内にはたんぱく質に制御された膜の動きによって物質を輸送するシステム・メンブレントラフィックが存 在し、多彩な生体機能を担っています。本研究では膜との連携という観点からたんぱく質機能を捉え、分子イメージング等の最先端手法を駆使した解析を行いま す。具体的には未知の部分の多い物流経路オートファジーとエンドソーム系に焦点を当て、分子メカニズムの解明と同時に高次生体機能と疾患における役割を探 り、臨床医学に資する知的財産の創出を目指します。
 

平成13年度採択分

ユビキチン修飾による蛋白質機能変換機構の解析

研究代表者(所属)
岩井 一宏 (大阪市立大学大学院 医学研究科 教授)
概要
ユビキチンは基質タンパク質に結合してその機能を変換させる翻訳後修飾分子であり、分解のみならず多様な タンパク質機能を制御しています。本研究では、これまで明らかにしてきた酸化修飾を認識するユビキチン修飾系を中心に、広くユビキチン修飾系によるタンパ ク質機能変換機構の解析を進め、今後大幅な増加が予想されるユビキチン関連疾患の解明と治療法開発を推進しました。
 

ゲノム蛋白質の高効率・高精度NMR解析法の開発

研究代表者(所属)
甲斐荘 正恒 (首都大学東京 客員教授)
概要
構造ゲノム科学で必要とされるNMR構造解析法は、迅速性と精度を兼ね備え、且つ高分子量蛋白質へも適用 可能でなくてはなりません。本研究の最大の成果は、立体整列同位体標識(SAIL)法を開発し、従来のNMR構造解析の分子量限界を倍以上に拡張したこと にあります。SAIL法は今後、膜蛋白質や生物学的に重要な超分子複合体への応用を視野に含め、次世代の世界標準NMMR技術として大きな飛躍が国内外か ら期待されております。
 

X線1分子計測からのin-vivo 蛋白質動的構造/機能解析

研究代表者(所属)
佐々木 裕次 ((財)高輝度光科学研究センター 利用促進部門構造物性III 主幹研究員)
概要
蛋白質分子の動的構造情報/機能相関を詳細に解析するには、原子レベル以下の精度でin vivo 動的1分子構造情報が安定に得られ、同時に1分子機能計測も併用可能なX線1分子計測法が最も有効です。本研究では、上記測定法を膜蛋白質分子のin vivo 計測へ適用し、また計算科学を合体させた全く新しい蛋白質構造決定法を検討しました。敏速な蛋白質分子の構造・機能情報の取得を可能にし、医薬利用可能な成果を得ることができ、1分子技術、バイオ技術、そしてナノ技術を融合した新計測システムを実証しました。
 

ロドプシンをモデルとしたG蛋白質共役型受容体の構造・機能解析

研究代表者(所属)
七田 芳則 (京都大学大学院 理学研究科 教授)
概要
G蛋白質共役型受容体(GPCR)はヒトゲノム中に1000種程度が同定され、創薬分野における最も重要 なターゲット蛋白質です。GPCRの中で最も研究の進んでいるロドプシンのリガンド結合機構やG蛋白質活性化機構を原子レベルで解析し、その知見をもとに 一般のGPCRの構造・機能解析を進めました。また、リガンド結合能をもつロドプシンを発見しました。これらの知見をもとに、膨大なGPCRについて、ロ ドプシンをモデルとした機能解析の戦略を提供しました。
 

小胞体におけるタンパク質の品質管理機構

研究代表者(所属)
永田 和宏 (京都大学 再生医科学研究所 教授)
概要
細胞は異常な蛋白質が生じた場合、それらを監視して再生ないしは分解処理する品質管理機構を備えていま す。本研究では小胞体における蛋白質の品質管理機構について、1)蛋白質の正しいフォールディングを促進する機構、2)不良蛋白質を分解する機構、および 3)それら2つの機構に必要な因子をそれぞれ供給する機構の3つについて研究を進めました。本研究は、品質管理の破綻による神経変性疾患をはじめとする フォールディング異常病の病態の理解及び治療への道を開くものとなります。
 

タンパク質の動的複合体形成による機能制御の構造的基盤

研究代表者(所属)
箱嶋 敏雄 (奈良先端科学技術大学院大学 情報科学研究科 教授)
概要
タンパク質は他の分子との相互作用を通して様々に構造変化して、分子機能の発現と制御を実現しています。 本研究では、複数の分子と相互作用する多機能性タンパク質の分子複合体のX線構造解析を通して、分子認識と、その結果起こる構造変化を通した分子機能制御 の構造的基盤を明らかにしました。これにより、細胞機能の制御ネットワークにおけるシグナルの分岐や統合の分子的基礎を理解するとともに、創薬の糸口を探 りました。

 

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