[資源循環] 資源循環・エネルギーミニマム型システム技術

戦略目標

資源循環・エネルギーミニマム型社会システムの構築」(PDF:14KB)

研究総括

平田 賢 (芝浦工業大学 学長)

概要

 大量資源消費型文明社会を是正し、持続的発展を可能とする社会を構築するため、地球温暖化等の環境問題を克服し、資源循環・エネルギーミニマム型システムの構築を目指す研究を対象とするものです。
 具体的には、長期的な観点から、産業から民生に至る地球温暖化ガス放出を抑制する新たな技術の探索、生物機能を利用した水素等エネルギー源創 生、温暖化ガスの固定・分解等に関する研究、また、資源循環・エネルギーミニマム型システム構築のために必要となる製品設計技術や製造技術等に関する革新 的な研究等が含まれます。   また、環境問題は社会システムとも密接な関係があるため、総合システム技術に関する研究も含まれます。

平成12年度採択分

水を電子源とする人工光合成システムの構築

研究代表者(所属)
井上 晴夫 (首都大学 東京都市環境学部 学部長)
概要
地球温暖化の主因とされる二酸化炭素を化学的に固定するには還元剤(電子源)が必要である。しかし固定化 するための還元反応が新たな汚染物質を生成するのでは意味がなくなる。この研究ではエネルギー的にも物質循環の視点からも理想的な電子源としての水分子に 着目し提案者が独自の発想とアプローチで最近見出した錯体分子触媒による「水を電子源、酸素源とする人工光合成型エネルギー変換、物質変換システム」を構 築した。
 

電気化学エネルギー変換の擬似三次元界面設計

研究代表者(所属)
太田 健一郎 (横浜国立大学 大学院 工学研究院 教授)
概要
電気化学エネルギー変換システムである固体高分子形燃料電池の本格普及のために、酸素極の白金代替触媒の 開発と反応抵抗の減少を目的とした擬似三次元界面設計を行った。数多くの遷移金属炭化物・酸窒化物・酸化物が酸素還元触媒となることを見出した。また、熱 分散緩和法や光照射法などの新しい手法を用いて、擬似三次元界面による高効率化を達成し、白金使用量の大幅な削減が可能となることを見出した。
 

新規化学結合を用いるシリコン薄膜太陽電池

研究代表者(所属)
小林 光 (大阪大学 産業科学研究所 教授)
概要
半導体中の欠陥準位を消滅させる新規方法として、半導体をKCNやHCN溶液に浸漬して、CN-イオンを 欠陥準位に選択的に反応させSi-CN等の結合を形成する方法を開発した。新規欠陥消滅法を用いて、種々のタイプのシリコン太陽電池の変換効率をかなり向 上させることに成功した。Si-CN結合は、800℃の熱処理や放射線照射によって切断されないことがわかった。
 

家庭用燃料電池実現のための新たな高効率天然ガス改質システムの構築

研究代表者(所属)
高村 仁 (東北大学 大学院 工学研究科 助教授)
概要
本研究では、空気中の酸素を分離する酸素透過性セラミックス膜を利用した部分酸化式メタン改質器と高温プ ロトン導電体による水素ポンプ技術の構築を目的とした。13cc[STP]/cm2minの透過速度を有する複合体型酸素透過性セラミックスが開発され、 それを用いた小型酸素透過膜型改質器が試作された。さらに、人工周期構造を利用した選択熱放射による改質効率の向上と水素ポンプ高効率化のための電極構造 の開発が実施された。
 

コプロダクションによるCO2フリーなエネルギー・物質生産システムの構築

研究代表者(所属)
堤 敦司 (東京大学 大学院 工学系研究科 助教授)
概要
既存のエネルギー・物質生産体系を見直し、エネルギーと物質のコプロダクション化を図ることによって、エ ネルギーと物質の消費を極力抑え、環境汚染物質を一切排出しない新たなエネルギー・物質生産体系を構築することができる。 エクセルギー再生によるバイオマスからの水素と炭素のコプロダクションプロセスの開発を行った。また、水素と電力をコプロダクションする次世代石炭ガス化 複合サイクルシステム(A-IGCC/IGFC)を提案した。さらに、産業部門における化学品とエネルギーのコプロダクション化を目指して、エネルギー・ 物質生産システムにおいて、エクセルギー損失を最小にする、エネルギーインテグレーションによる新しいプロセス創生手法・評価手法を開発した。
 

資源回収型の都市廃水・廃棄物処理システム技術の開発

研究代表者(所属)
津野 洋 (京都大学 大学院 工学研究科 教授)
概要
本研究では、生ごみを下水道で収集する一元化システムにより、拠点で浮遊性固形物質を回収し高温メタン醗 酵によるエネルギー回収と高度処理による水資源回収を行い、また糞尿分離型トイレや余剰汚泥削減・燐資源回収技術により枯渇が懸念される燐を回収する技術 を開発しました。各要素技術について、実用化に必要な情報を提示することができ、それらを組み合わせた一元化下水道システムは、エネルギー、物質循環や地 球温暖化の観点からも有効であることが示されました。
 

平成11年度採択分

機能環境流体を利用した資源循環・低エミッション型物質製造プロセスの創製

研究代表者(所属)
生島 豊 ((独)産業技術総合研究所 超臨界流体研究センター 副センター長)
概要
二酸化炭素の排出削減や新たな二酸化炭素再利用技術をもたらすだけでなく、機能環境流体という新規な概念 を導入することにより環境に優しい物質合成法を創製した。本成果は、超臨界状態を中心に水、二酸化炭素を利用した有機物質製造法、無機材料製造技術に関す る。次世代に向けた無機材料合成、エネルギー関連、化学製品関連、材料関連分野で新産業創出につながることが大いに期待される。
 

超小型ガスタービン・高度分散エネルギーシステム

研究代表者(所属)
鈴木 健二郎 (芝浦工業大学 エネルギーフロー研究センター センター長)
概要
固体酸化物形燃料電池とガスタービンのハイブリッドシステムに着目して、そのフィージビリティーを検討 し、構成要素の高機能化に向けての研究と、その設計資料となるデータベースの構築を行った。その結果、このシステムが個性化社会に適合し、エネルギー環境 負荷の低減に有効な高度分散電源として有望であることを明らかにし、燃料電池については低温化と長寿命化、マイクロ燃焼器の安定化、再生熱交換器の高効率 化に資する研究成果を得るとともに、燃料電池の熱管理ツールとタービン翼間流れの予測ツールを開発した。
 

植物系分子素材の高度循環活用システムの構築

研究代表者(所属)
舩岡 正光 (三重大学 生物資源学部 教授)
概要
生態系において完全循環系を形成している植物体を機能性分子に切り替える要素技術として,新たに常温,常 圧で機能する相分離系変換システムを開発した。さらに,天然リグニンの長期循環機能を生かす新規リグニン系素材(リグノフェノール)を設計,その機能的な 循環活用システムを提示した。これらは新たな植物系分子素材工業を導き,光合成を基盤とする,化石資源に依存しない持続的な循環型社会システムの確立へと つながる。
 

社会的受容性獲得のための情報伝達技術の開発

研究代表者(所属)
安井 至 (国際連合大学 副学長)
概要
環境技術は市民社会に受容されなければなりません。現時点で市民社会と環境専門家がそれぞれ持つ環境情報 の乖離は、質的にも量的にも深刻な状況にあります。本研究は、トレードオフの記述が可能なライフサイクルアセスメントを仲介として、市民社会へ「情報その もの」と「情報を理解するスキル」とを同時に伝達することによって、真に優れた環境技術が受容されるような社会を形成できると考え、技術開発とその実証を 行いました。
 

高温運転メタノール直接型燃料電池の開発

研究代表者(所属)
渡辺 政廣 (山梨大学 クリーンエネルギー研究センター センター長)
概要
高効率、無公害のメタノール直接型燃料電池(DMFC)は、ポータブルや移動動力電源等として、巾広い用 途が期待されている。そこで、電池の高性能化、高品位廃熱利用が可能な高温作動(~150℃)DMFC の実現に向け、高性能アノード、カソード合金触媒の設計・評価と反応機構解明、メタノールクロスオーバー抑制型電解質膜、高温作動型電解質膜の開発を実施 し、新型膜/電極接合体の作成・試験に成功した。
 

平成10年度採択分

エネルギーの効率的変換をめざした界面イオン移動の解明

研究代表者(所属)
小久見 善八 (京都大学 大学院 工学研究科 教授)
概要
リチウム二次電池、燃料電池などの電気化学的エネルギー変換デバイスの高効率化に向けて、界面で起こるイ オンダイナミクスの解明を目的とした。固体、液体、気体の関与するエネルギー変換界面で起こる反応の素過程を実験的、理論的手法を用いて調べ、界面反応の 速度を決定する要因を明らかにすることにより、ハイブリッド自動車用電源などの高出入力型エネルギー変換デバイスの開発指針を得た。
 

高リサイクル性を有する森林資源の開発

研究代表者(所属)
小名 俊博 (九州大学 大学院 農学研究院 助教授)
概要
リサイクルによるパルプ繊維の劣化と損失を原料から改善するため、高リサイクル性かつ高成長性を有した樹 木を迅速に同定・選抜する技術及びその自動化装置の開発に成功した。選抜、交雑、植林を繰り返すことにより、各種特性をさらに向上させる可能性を証明し た。森のリサイクルと紙のリサイクルを一体化することにより、大気中CO の固定量を増加し、省エネルギーを達成しながらパルプ繊維を通じて、資源循環型社会の実現が可能であることが判明した。
 

温暖化ガスにかかわる永久凍土攪乱の抑制技術

研究代表者(所属)
福田 正己 (北海道大学 低温科学研究所 教授)
概要
シベリア永久凍土では森林火災やパイプラン敷設などの永久凍土攪乱に起因して、二酸化炭素やメタンガスが 放出している。これらの温暖化ガス放出を抑制するために、森林火災の発生実態現地観測を実施し、現状では、シベリアタイガが温暖化ガスの吸収源ではなく、 発生源であることを確認した。また衛星画像解析による火災の早期検知・延焼予測システムを確立し、火災の抑制によって、二酸化炭素発生量を軽減させること が可能となった。併せて現地実規模実験結果によって、パイプラン敷設建設の安全指針を提案した。
 

エネルギーミニマム型高分子形成システム技術の開発

研究代表者(所属)
馬越 淳 ((独)農業生物資源研究所 特待研究員)
概要
生物はエネルギーを極めて有効に利用し、その成分である高分子の製造を行なっている。生物が作る高分子の 構造形成のメカニズムを解明した。カイコや樹木プロトプラストは巧みな方法で高分子鎖を精密に配列制御して、イオンを用いて構造形成を行なっていることを 明らかにした。カイコやクモは大気中の二酸化炭素を繊維の中に固定することを世界で最初に見つけだした。生物の構造形成を解明し、エネルギーミニマム型高 分子生産システム技術の基礎を構築した。
 

乾燥地植林による炭素固定システムの構築

研究代表者(所属)
山田 興一 (信州大学 繊維学部 教授)
概要
研究目的は乾燥地における持続的植林による炭素固定システム構築である。主研究対象地として西オーストラ リア、レオノラ(年間降雨量230mm)を選び、50km四方の実験地を設定した。そこで土壌、樹木、気象に関する広範な調査を行うとともに、乾燥地緑化 のための集水、土壌構造改良、樹種選定手法を提案し、実証実験を行った。その結果炭素固定効率が40倍のシステムが開発された。固定コストは約 15,000円/t-C、西オーストラリアでの炭素固定ポテンシャルは6億t-C程度であると推算された。

 

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