[分子複合系] 分子複合系の構築と機能

戦略目標

分子レベルの新機能発現を通じた技術革新」(PDF:13KB)

研究総括

櫻井 英樹 (東北大学 名誉教授)

概要

 有機分子や無機分子等から成る分子複合系の構築ならびにそれに基づく新しい物性や機能の発現を目指す研究を対象とするものです。
 具体的には、有機分子や無機分子等が分子内あるいは分子間でさまざまな相互作用を行い、新規の物性を発現することに着目し、これら分子の設計、分子複合 系の構築、静的および動的な相互作用の解明、さらにはこれらの知見に基づく新しい機能材料の創出に関する研究が含まれます。

平成12年度採択分

次世代合成のための多機能集約型触媒の構築

研究代表者(所属)
香月 勗 (九州大学 大学院 理学研究院 教授)
概要
触媒活性が高く、かつ耐久性に優れた触媒の開発と酸素分子などの小分子の活用は「グリーン合成」の達成の ために不可欠です。本研究では、高度な不斉認識能、新規活性種の発生、さらには小分子活性化などの多機能をもつ新規触媒を開発し、各種の高原子効率的な環 境調和型物質変換法を導入することができた。これらは、有機合成の今後の新たな発展に寄与するものと期待される。
 

一次元孤立微小空間構造の組織化と機能発現

研究代表者(所属)
清水 敏美 ((独)産業技術総合研究所 界面ナノアーキテクトニクス研究センター センター長)
概要
分子をボトムアップ的に自己集合させて繊維状の有機ナノチューブを簡便に合成した。その従来にない 10~20ナノメートルの一次元孤立微小空間構造を利用してファブリケーション(形態・構造制御)とマニュピレーション(基板等への固定化、配列・組織 化)を実現するとともに、水相ナノ空間の物性や構造を解明した。さらに、球状タンパク質などのナノ物質をそれらの有機ナノチューブ中空シリンダー中へ包接 できる機能を見いだした。
 

化学エネルギー変換素子の構築

研究代表者(所属)
田中 晃二 (自然科学研究機構 分子科学研究所 教授)
概要
金属錯体上での水分子の酸塩基平衡反応を利用した新規酸化反応触媒系の開発により、O V近傍での有機化合物の触媒的に酸化に成功した。また、有機化合物の酸化反応に適切な還元反応を組み合わせることにより有機化合物の酸化反応で放出される 自由(化学)エネルギーを電気エネルギーに直接変換しうるシステムの構築を行った。
 

混合混成型巨大炭素パイ電子系の創出

研究代表者(所属)
戸部 義人 (大阪大学 大学院 基礎工学研究科 教授)
概要
次世代の機能性物質なりうる新奇なパイ電子系を創出する目的で、sp2混成炭素とsp混成炭素から構成さ れる、一次元、二次元あるいは三次元的に広がった多様な構造を有する巨大炭素パイ電子系を合成し、それらの物性と機能について調べた。特に、有機合成化学 の最新の手法を用いて新奇構造創製のための合成ブロックを開発するとともに、高反応性の共役sp混成パイ電子系の構造変換により、従来合成できなかった巨 大パイ電子系を構築し、特異な構造に起因する特異な物性を見出した。
 

有機ナノ結晶の作製・物性評価と多元ナノ構造への展開

研究代表者(所属)
中西 八郎 (東北大学 多元物質科学研究所 教授)
概要
有機化合物のナノサイズの結晶作製法として、簡便で汎用可能な再沈法を探求・確立し、共役化合物を中心 に、サイズ・形状・分散制御したナノ結晶を作成して物性評価することで、金属や半導体のナノ結晶とは異なる有機系ナノ結晶に固有の特性と発現機構を明らか にした。さらに、多元物質からなるナノ構造体への展開を含め材料化手法について研究し、これらの新物質系に特徴的な物性を見出すことができた。また、再沈 法により作製されたナノ結晶を用いた光デバイスの開発という実用化への展開がなされた。
 

平成11年度採択分

高次構造天然物の全合成:制癌活性物質の探索と創製

研究代表者(所属)
桑嶋 功 (北里大学 生命科学研究所 教授)
概要
各種の高次構造天然有機化合物の全合成を通じて、新規制癌活性物質の探索及び創製を行う目的で、タキソー ル、インゲノール、マジンドリン、ボレリジン、GKK103A2 等の効率的全合成法を開発した。また、カズサマイシンの全合成を通じて絶対構造を決定し、タキソールのそれを大幅に上回る極めて高い制癌活性を明らかにす るとともに、その誘導体合成も行った。この中から、カズサマイシン自体よりも安定で、高度な制癌活性を示す誘導体が発見される等、次世代制癌剤の開発への 高い可能性を示した。
 

ハイブリッド型生理活性分子の高効率構築法の開発

研究代表者(所属)
鈴木 啓介 (東京工業大学 大学院 理工学研究科 教授)
概要
天然有機化合物の中には、ハイブリッド構造を有するものがあり、特異な生理活性を示すものが多い。しか し、こうした分子は、既存の方法の単なる組み合わせでは合成できないことが多く、関連領域の進歩の妨げとなっている。本研究では、主に(1)芳香族、 (2)糖、(3)ヘテロ原子の三要素を含む複合型分子をとりあげ、高効率合成法の開拓を研究してきた。その結果、アリールC- グリコシド類、プラジミシン(抗HIV化合物)、複合型カテキン類などの高効率合成法を開発することに成功した。
 

無機ナノ結晶・高分子系の自己組織化と生体組織誘導材料の創出

研究代表者(所属)
田中 順三 ((独)物質・材料研究機構 生体材料研究センター センター長)
概要
細胞の時系列に従い特異的に組織化された無機・有機複合系細胞外マトリックスを材料科学的視点からナノ領 域での自己組織化過程と捉えて構築した。無機ナノ結晶と高分子の相互作用を利用した複合体による硬組織誘導材料の開発を進めた。生体骨と類似した組成・構 造をもった複合系を人為的に構築して、本当の骨と同様な代謝に組み込まれることを実証した。また、再生医工学を用いて軟骨・靱帯・神経組織などを再生させ るナノ複合体の構築に成功した。
 

有機・無機複合光電子移動触媒系の開発

研究代表者(所属)
福住 俊一 (大阪大学 大学院 工学研究科 教授)
概要
有機・無機複合系を用いて、光励起種と配位不飽和金属錯体と錯形成させることにより、種々の有機化合物と の光電子移動触媒反応を精密制御することにより高効率かつ高選択性を有する新しい物質変換手法を確立し、高効率エネルギー変換系として応用展開した。特に 天然の光合成における電子移動過程を分子レベルで再現することが可能となっただけでなく天然の光合成反応中心のエネルギーおよび寿命をはるかに超えるもの も得られた。
 

自己生成する高分子ナノ秩序体:高次構造制御と機能発現

研究代表者(所属)
吉川 研一 (京都大学 大学院 理学研究科 教授)
概要
単一の高分子よりナノ秩序構造体を、自己組織化により生成させる基本的な設計手法を新たに提唱し、ドー ナッツ、丸棒、糸巻き、パーリングなどの多様なナノ結晶体が自己生成することを明らかにした。長鎖DNA分子で、このようなナノ結晶を、効率よく生成させ ることを実証している。関連する成果として、DNAの折り畳みに100%のキラル選択性を実現させる条件を確立することに成功している。以上のような「ナ ノ結晶創出の新原理」の発見は、ナノテクなど科学技術に貢献するものと期待される。また、セントラルドグマを基本とする現代の生命科学に新風を吹き込むも のともなっている。
 

平成10年度採択分

生体のエネルギー変換・信号伝達機能の全構築

研究代表者(所属)
小夫家 芳明 (奈良先端科学技術大学院 大学物質創成科学研究科 教授)
概要
生体のエネルギー獲得、脳・神経の信号伝達機能を自己組織化法により構築した。イミダゾリルポルフィリン を構成単位とするスペシャルペアを用いて光合成系の電荷分離系の役割を解明し、大環状アンテナ機能モデルを構築した。人工光合成反応系を組み上げ、分子エ レクトロニクス材料、優れた非線形光学材料を発明し、新しい研究分野を開拓した。人工イオンチャネルの電荷、親水性の制御によりイオン選択性及び電位依存 性機能を獲得した。
 

次世代物質変換プロセスの開拓

研究代表者(所属)
高橋 保 (北海道大学 触媒化学研究センター 教授)
概要
次世代物質変換プロセスとして、炭素-炭素結合切断とその有機合成への利用法の開発を行った。炭素-炭素 結合切断の方法として、メタラサイクルの結合切断を選択的に行い、2つの非対称アセチレンと1つのニトリルから全置換ピリジンで全ての置換基が異なる生成 物をSingle product として、ワンポットで合成できることを示した。今、世の中で知られている方法としては、本研究で開発した方法が唯一の方法である。また、新しい炭素-炭素 結合を切断し、2炭素部分をベンゼン誘導体に、3炭素部分をピリジン誘導体へ変換する反応を開発した。本研究ではさらに可溶性ペンタセンの合成、ペンタセ ン薄膜の製造にも成功している。
 

複合体形成に基づく膜タンパク質の機能制御

研究代表者(所属)
橘 和夫 (東京大学大学 院理学系研究科 教授)
概要
海産毒分子に見られる梯子状ポリエーテル構造と膜タンパク質の分子認識、およびこれに伴う後者の構造変化 の機構解明を目的に、有機合成および複合体形成観測の方法論開発の両面から研究を行なった。ここで確立した新規なエーテル環相互の連結法を用いて天然物2 種の全合成を達成した。また、従来法である電気生理手法に替え、シナプトソームと電位感受性蛍光剤を用いるチャネル開口の観測法を構築した。
 

エネルギー変換機能を有する無機超分子系の構築

研究代表者(所属)
堂免 一成 (東京工業大学 教授)
概要
太陽エネルギーを水素エネルギーに変換することを目的として、光エネルギーを用いて水を水素と酸素に分解 する光触媒系の構築を行い、数多くの金属酸化物が紫外光照射下で水を高効率に分解する光触媒となることを見出した。特に研究の後半においては可視光応答型 光触媒の開発に重点をおいて研究を推進し、窒素を含む化合物(オキシ)ナイトライドが可視光で水を分解する光触媒となることを発見した。
 

らせん協調ハイパー高分子の創製と構造・物性・機能の相関

研究代表者(所属)
藤木 道也 (奈良先端科学技術大学院大学 物質創成科学研究科 教授)
概要
右らせん⇔左らせん転移を起こす光学活性ポリシランの発見をもとに、1.らせん反転現象の基礎的理解とら せん反転機構の知見、2.らせん反転・増幅効果に対する分子設計指針、3. 稀薄溶液、凝集体、液晶、固体薄膜での光学活性反転・増幅制御、4. 走査プローブ顕微鏡によるらせん反転ポリシラン分子鎖直接観察、5. 光学活性の反転、増幅、発生を起こすオリゴシラン、超分子ポリシラン、らせんパイ共役高分子の設計・創成に成功した。

 

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