[ソフトナノマシン] ソフトナノマシン等の高次機能構造体の構築と利用

ナノテクノロジー分野別バーチャルラボHP

戦略目標

非侵襲性医療システムの実現のためのナノバイオテクノロジーを活用した機能性材料・システムの創製」(PDF:25KB)

概要

 この研究領域は、ナノレベルでの分子構造や分子間相互作用の変化等を利用して働くソフトナノマシン等の高次機能構造体の構築と利用に係わる研究等を対象とするものです。
 具体的には、生体に学ぶソフトナノマシンの動作機構の解析・制御およびその原理を活用したソフトナノマシンの構築、利用に関する研究、タンパク質や合成 分子等の高次機能構造体によるソフトナノマシンの高効率エネルギー変換、エネルギー供給、情報の変換、伝達に係わる研究等も含まれます。なお、本研究領域 は戦略目標「情報処理・通信における集積・機能限界の克服実現のためのナノデバイス・材料・システムの創製」および「環境負荷を最大限に低減する環境保 全・エネルギー高度利用の実現のためのナノ材料・システムの創製」にも資するものとなります。

研究総括

宝谷 紘一(名古屋大学 名誉教授)

平成16年度採択分

バイオナノマシンの動的構造から機能発現への階層的理論モデリング

研究代表者(所属)
高田 彰二 (京都大学 大学院 理学研究科 准教授)
概要
最適な動作をするソフトナノマシンの創製のためには、手本として、バイオナノマシンの作動原理を総合的に 理解することが重要であり、そこには新しい理論モデルが不可欠である。本研究は、分子モーターなどのバイオナノマシンの多様な機能発現の機構を、動的な構 造情報に立脚して、理論的に解明することを目的とする。そのためにまず、1)配列情報と各分子の構造情報からバイオナノマシンの動的構造モデリングを行 う。次に、バイオナノマシンの階層性に着目して、原子レベルと粗視化レベルの両方から機能発現機構に迫る:すなわち2)粗視化レベルの大域的なエネルギー ランドスケープ論による機能発現の統計力学的モデリング、及び3)原子レベルの機能発現分子動力学シミュレーションを行う。主対象を、F0F1- ATPase、アクトミオシン、べん毛などとする。理論・モデル・シミュレーションによって個々の系の実験を説明するとともに、そのモデルから検証可能な 予測を行い、新しい実験、ソフトナノマシン創製に貢献する。
 

平成15年度採択分

高効率ナノモーターとしてのプロトンポンプの分子機構解明

研究代表者(所属)
二井 將光 (岩手医科大学 薬学部 教授)
概要
本研究では、ナノモーターF-ATPase(ATP合成酵素)とVATPase(リソソーム等のプロトンポンプ)のエネルギー変換機構と回転・調節機構を 解明します。F-ATPaseについては、ATP加水分解によるサブユニットの回転機構、特に回転がプロトン輸送に至る機構を明らかにします。さらにF- ATPase全体と膜サブユニット部分が膜電位/pH勾配駆動型のモーターであることを実証します。V-ATPaseについては、回転機構とともにイソ フォームによる調節機構を明らかにします。これら、ナノモーターの解析とプロトンポンプの研究を通じて高効率ナノモーターへの展開を目指します。
 

平成14年度採択分

生物ナノマシーン回転運動の一般化作動機構の解明

研究代表者(所属)
相沢 慎一 (県立広島大学 生命環境学部 教授)
概要
バクテリアのべん毛モーターは水素イオンの流れで回転する運動器官ですが、いまだにその作動原理はわかり ません。本研究では、バイオインフォマティクス手法でべん構成タンパク質の起源を探り、それぞれのパーツの由来および機能特性を明らかにすることで回転運 動の起源を探ります。この手法はべん毛モータのみならず、細胞表面上の物質輸送装置など種々のナノマシーンの作動機構解明にも役立つでしょう。
 

タンパク質分子モーターを利用したナノメカノケミカルマシンの創製

研究代表者(所属)
伊藤 博康 (浜松ホトニクス(株)筑波研究所 主任部員)
概要
生体内には、化学的エネルギーを力学的エネルギーに直接変換するタンパク質やRNAでできた分子機械があ りますが、分子機械を「力づくで化学反応を逆行させる」ことを人工的に実現した例は未だありません。分子機械に、力を加えて(力学的操作)化学合成を行わ せる、あるいは力により化学反応を制御するというナノメカノケミカルマシンを創り出すことを目指します。これまで予想されなかった機能を実現することによ り、ソフトナノマシンとしての分子機械のメカニズムの解明に資するだけでなく、バイオテクノロジーの新機軸の一つとなることが期待されます。
 

タンパク質トランスロケータの作動原理の解明

研究代表者(所属)
遠藤 斗志也 (名古屋大学 大学院 理学研究科 教授)
概要
生体膜を舞台とするタンパク質の精密配置を制御するのが、タンパク質トランスロケータです。本研究では、 トランスロケータによる局在化シグナル読み取りの仕組み、タンパク質通過用チャネルの機能、モータ機能の原動力、膜へのタンパク質組込みの仕組みの解明を 目指します。オルガネラや細胞表層機能の改変、新しいドラッグデリバリーシステムや膜を足場とした精密なタンパク質集積技術の開発などへの展開が期待され ます。
 

振動するバイオナノマシンの原理と構築

研究代表者(所属)
神谷 律 (東京大学 大学院 理学系研究科 教授)
概要
鞭毛繊毛は高速の波動運動を行う細胞器官で、原生動物からヒトにいたる多くの生物で細胞の運動や物質の輸 送に重要な働きをしています。本研究では、その波動を作り出している主要なタンパクを使って、高速振動を行うナノマシンを人為的に構築する方法を開発しま す。そのような微小振動装置は医療分野でドラッグデリバリーなどへの広い応用が考えられるとともに、工学分野で微小のアクチュエーターとして使われる可能 性を秘めています。
 

遺伝子デリバリーシステムとしての人工細胞核の創製

研究代表者(所属)
原口 徳子 ((独)情報通信研究機構 未来ICT研究センター 主任研究員)
概要
細胞核は染色体分離に先がけて崩壊し、染色体分離が完了すると染色体の周りに核膜が自己集合的に形成され ることにより、再形成されます。本研究は、まず、染色体の周りに核膜が形成される機構を明らかにし、さらに、その原理を利用し操作することにより特殊機能 を持った人工細胞核を創ることを目指します。これにより、遺伝子治療や薬剤投与などに役立つ特殊な機能をもった遺伝子デリバリーシステムの開発が期待され ます。
 

DNA分子モーターの動作原理の解明

研究代表者(所属)
原田 慶恵 ((財)東京都医学研究機構 東京都臨床医学総合研究所 副参事研究員)
概要
遺伝子の相同組換えは、2個のDNAモーターを含むタンパク質複合体によって行われます。2個のモーター 分子が協調的に働くことによって、2本のDNA2重鎖はこのタンパク複合体にほどかれながら取り込まれ、別のパートナー鎖と巻き戻された新しい2本の2重 鎖DNAが紡ぎ出されます。本研究では、この複合体の動きを顕微鏡で直接観察することによってその動作原理を明らかにし、複数分子からなるナノマシンシス テムの開発を目指します。
 

高次細胞機能構造体観察・制御技術の開発

研究代表者(所属)
藤吉 好則 (京都大学 大学院 理学研究科 教授)
概要
傾斜機構付き極低温電子顕微鏡と4D-Polscopeを開発して、神経細胞等の立体構造観察技術を確立 すると共に、棘突起や成長円錐等を動的に観察する技術を確立します。本研究では、脳・神経研究や細胞生物学的研究と分子構造研究を繋ぐ新技術の開発と、シ ナプス形成等に関する研究成果が期待されるのみならず、「新試料交換型極低温電子顕微鏡」と「Polscope」という100億円市場が期待できる装置も 開発します。
 

ゆらぎと生体システムのやわらかさをモデルとするソフトナノマシン

研究代表者(所属)
柳田 敏雄 (大阪大学 大学院 生命機能研究科 教授)
概要
生体の運動を担う生物分子モーターは、熱ゆらぎを巧く利用して効率よく働くという人工機械では見られない ユニークな性質を持っています。本研究では、蛋白質設計、1分子イメージング、ナノ計測、極低温電顕構造ダイナミクス、理論・計算機シミュレーション解析 そして運動再構成などの視点から、分子モーターが熱ゆらぎを利用するしくみを徹底的に追及します。そして、“ゆらぎ”を機能に利用するという素子のユニー クな性質が、生体システム特有の“やわらかさ”にどのように関わっているのかを、実験的そして理論的に検討します。これらの結果を基に、高分子ゲルなどを 使って、人工的に筋肉運動を再現するモデル系(人工筋肉)の構築を目指します。最終的には、 分子モーターで得られた知見をより一般化し、ゆらぎと生物シ ステムの“やわらかさ”についての統一的な概念をうち立てます。

 

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