[情報環境] 共生社会に向けた人間調和型情報技術の構築

戦略目標

「人間と調和する情報環境を実現する基盤技術の創出」

研究総括

西田 豊明 (京都大学 大学院情報学研究科 教授)

前研究総括 (~平成25年12月)
東倉 洋一 (国立情報学研究所 副所長/教授)

概要

  本研究領域は、コンピュータなどの情報機器、ネットワーク、コンテンツなどで満ち溢れた情報環境において、実空間コミュニケーション、ヒューマンインターフェース、メディア処理などの要素技術を融合・統合し、 「人間と情報環境の調和」を実現するための基盤技術の構築を目指します。
具体的には、人間行動・実空間状況の取得・理解を行うセンサーネットワークやユビキタスコンピューティングによる実空間適応型認識技術、ロボットやユビキタスネットワークによる人間-機械コミュニケーションの円滑化技術、および、テキスト、音声、音楽、画像などの多様なメディアの解析、検索、集積、構造化などに関わるコンテンツ技術を連携・融合・統合した「人間調和型情報環境」を構築するための研究を推進します。さらに、人間とこれを取り巻く情報環境の調和的な相互作用を行う技術のブレークスルーを生み出す研究や、人間と情報環境の調和という視点を意識した認知プロセスの研究と情報環境構築技術の研究を、異分野融合課題として推進・発展させる研究も含みます。

領域アドバイザー

青山 友紀 慶應義塾大学 理工学部 訪問教授
淺川 和雄 (株)富士通研究所 フェロー
石井 裕 MIT Media Laboratory Tangible Media Group Associate Director of Media Lab 副所長
伊福部 達 東京大学 高齢社会総合研究機構 名誉教授
鈴木 陽一 東北大学 電気通信研究所 教授
前田 英作 日本電信電話(株)コミュニケーション科学基礎研究所 所長
前田 太郎 大阪大学 大学院情報科学研究科バイオ情報工学専攻 教授

平成21年度採択分

“食”に関わるライフログ共有技術基盤

研究代表者(所属)
相澤 清晴 (東京大学 大学院情報学環 教授)
概要
本研究では、これまで情報処理の対象として扱われることの少なかった「食」に注目したライフログ技術基盤 の研究開発を行います。画像などを用いた食事メディア処理、処理の可視化・健康支援インターフェース、潜在的コミュニティの発見や場の雰囲気の記録・再生 などの実空間コミュニケーション、ライフログの標準データ形式やプライバシー制御などの共通技術基盤などについて研究開発を行うとともに、健康管理の実証 実験も行います。

高速センサー技術に基づく調和型ダイナミック情報環境の構築

研究代表者(所属)
石川 正俊 (東京大学 大学院情報理工学系研究科 教授)
概要
kHzオーダーで実時間動作する高速センサー技術・提示技術を用い、インセンシブル(人間が感じ取れな い)ダイナミクスの完全検出と、感覚運動統合モデルに基づく同ダイナミクスの実時間可感化を実現する情報環境を構築します。時間密度が飛躍的に向上された 情報環境によって、人間を取り巻く実世界の確定的未来の可感化が可能となり、人間の認識行動系の学習促進や情報誘導に貢献することができます。

潜在的インターパーソナル情報の解読と制御に基づくコミュニケーション環境の構築

研究代表者(所属)
柏野 牧夫 (日本電信電話 (株) コミュニケーション科学基礎研究所 部長)
概要
円滑な対人コミュニケーションに不可欠でありながら軽視されてきた「潜在的インターパーソナル情報 (Implicit InterPersonal Information;IIPI)」(パートナー間の相互作用によって立ち現れる非記号的・無自覚的な情報)に着目し、脳活動、生理反応、身体運動など からIIPIを解読したり、情報環境側からIIPIを調整したり、あるいは脳に非侵襲的な刺激を与えたりすることによってコミュニケーションの質を高める 手法を開発します。

マルチモーダルな場の認識に基づくセミナー・会議の多層的支援環境

研究代表者(所属)
河原 達也 (京都大学 学術情報メディアセンター 教授)
概要
人間の知的活動の源泉ともいえる音声コミュニケーションをマルチモーダルな観点で分析・モデル化した上 で、セミナー・ポスター発表および会議を対象として、リアルタイムな支援や、効果的なアーカイブ化のための情報環境を構築します。主な話者の発話内容を音 声認識して言語解析を試みるという従来のアプローチだけでなく、聴衆の反応に着目したアプローチを導入します。

知覚中心ヒューマンインターフェースの開発

研究代表者(所属)
小池 康晴 (東京工業大学 ソリューション研究機構 教授)
概要
テレイグジスタンスの技術のように、環境と相互作用するインターフェースにおいては、入力側は精度良く環 境の状態を計測し、出力側では、あたかも物体を持っているかのように力を与えるなど、正確にその値を再現させようとしてきました。本研究では、複雑な装置 を用いることなく、脳の知覚メカニズムを解明し、あたかも物体を持っているような”イリュージョン”を積極的に活用する新しいインターフェースの開発とそ の応用を目指します。

日常生活空間における人の注視の推定と誘導による情報支援基盤の実現

研究代表者(所属)
佐藤 洋一 (東京大学 生産技術研究所 教授)
概要
人と調和する情報環境を実現するためには、情報環境側が人の注意が何に向けられているのかを理解したうえ で、適切なタイミングで適切な支援を提供できることが必要となります。本研究では、人の注意と密接に関係する注視に着目し、人と調和する情報環境実現のた めの基盤技術として、日常生活空間内における人の注視を推定する技術、および情報環境からの適切な働きかけにより人の注視をさりげなく誘導する技術の開発 を目指します。

行動モデルに基づく過信の抑止

研究代表者(所属)
武田 一哉 (名古屋大学 大学院情報科学研究科 教授)
概要
大規模な信号コーパスを利用して、情報と物理を統合する視点から人間行動の数理的モデルを研究します。 「認知・判断」と「判断・運動」の2つの離散/連続系に還元して行動を捉え、行動に内在する「状態」を理解しうるモデルを導出します。情報システムと人間 が、互いの状態を正しく把握できないことで生じる「過信」の検出に応用し、「振り込め詐欺」や「交通事故」の抑止に寄与しうる実用的な検出技術を構築しま す。

さわれる人間調和型情報環境の構築と活用

研究代表者(所属)
舘 暲 (慶應義塾大学 大学院メディアデザイン研究科 特任教授)
概要
実空間コミュニケーション、ヒューマンインターフェース、メディア処理が融合した、見て・触れる知的な情 報環境の構築を目指します。すなわち、実空間の触覚情報の取得と理解および触空間の伝達と人への能動的働きかけを可能とし、人が自然環境で所作し行動して いるような感覚で、遠隔コミュニケーション、遠隔体験、疑似体験を可能とし、デザインや創作などの創造的活動を実世界と同様に行える人間調和型の「さわれ る情報環境」を構築します。

平成22年度採択分

人の存在を伝達する携帯型遠隔操作アンドロイドの研究開発

研究代表者(所属)
石黒 浩 ((株) 国際電気通信基礎技術研究所 社会メディア総合研究所 室長)
概要
本研究は、何時でも何処でも人間の存在を伝達することができる通信手段として、携帯電話サイズの遠隔操作 型アンドロイド「エルフォイド(通称:ジェミノイド携帯)」を実現します。これによりユーザは遠隔地に自らの存在を送り、遠隔地にいる対話相手はユーザの 存在を目の前に感じながら人と話すように対話できるようになります。このジェミノイド携帯は、パソコンや携帯電話に加えて、人と情報環境を調和させる新し い情報メディアとなります。

音楽を用いた創造・交流活動を支援する聴空間共有システムの開発

研究代表者(所属)
伊勢 史郎 (東京電機大学 情報環境学部 教授)
概要
本研究は、音楽という世界共通言語を違和感なく交換できる情報通信環境の構築を行うことを目的とします。 演奏、建築音響エンジニアリング、音楽教育、音楽批評などの音楽の職能をもつ人々が、遠隔環境において三次元音場を共有しながら技能を実践することがで き、従来よりも創造的な音楽活動を可能とする聴空間共有システムを開発します。情報通信技術を用いた新しい形の音楽制作現場は一般市民にとっても新しいエ ンターテインメントとして体験可能な情報空間となります。

ロボットによる街角の情報環境の構築

研究代表者(所属)
神田 崇行 ((株) 国際電気通信基礎技術研究所 知能ロボティクス研究所 上級研究員)
概要
本研究は、ショッピングモールのような人が行きかう街角の広場や通路において、センサネットワークを用い て街角の状況や場所の使われ方を理解するという街角環境理解技術、ロボットが環境と調和して移動したり、人々に親和的に話しかけたりするためのインタラク ション技術を実現します。街角を移動して人々と対話するロボットが、環境に調和して様々なサービスを提供できるような「ロボットによる街角の情報環境」を 構築します。

文字・文書メディアの新しい利用基盤技術の開発とそれに基づく人間調和型情報環境の構築

研究代表者(所属)
黄瀬 浩一 (大阪府立大学 大学院工学研究科 教授)
概要
本研究は、文字・文書という身近で古典的なメディアを、高速文字認識・文書画像検索技術などの情報通信技 術を駆使し、新しいメディアへと変貌させます。具体的には、看板やポスターに基づいてナビゲーションを行ったり、評判情報などを瞬時に検索すること、読書 履歴や今読んでいる箇所に応じて、読者の理解を助ける情報を瞬時に提示することなどが可能となります。すなわち、古典的メデイアが、人に応じて語りかけて くる動的メディアに変貌します。

歩容意図行動モデルに基づいた人物行動解析と心を写す情報環境の構築

研究代表者(所属)
八木 康史 (大阪大学 理事・副学長/教授)
概要
本研究は、行動として歩行を取り上げ、行動と意図の関係を歩容意図行動モデルとして記述し、映像中の歩行 パターン(歩容)から「人の意図や心身状態、人間関係」を読み取る技術を構築します。さらに、意図に基づく情報提示の在り方を検討し、心を写す情報環境の 構築も目指します。本成果は、例えば、広域監視における犯罪予防、教育現場における心理ケアや指導支援、商店街での販売誘導等の様々な応用のための基礎と なります。

平成23年度採択分

コンテンツ共生社会のための類似度を可知化する情報環境の実現

研究代表者(所属)
後藤 真孝 (産業技術総合研究所 情報技術研究部門 首席研究員)
概要
本研究は、音楽や動画のようなメディアコンテンツを豊かで健全に創作・利用する「コンテンツ共生社会」の 確立に向けて、膨大なメディアコンテンツ間の類似度を人々が知ることができる(可知化する)情報環境を実現する技術基盤の構築を目的とします。さらに、創 作支援技術と鑑賞支援技術を研究開発することで、コンテンツの創作や鑑賞を誰もが能動的に楽しめる社会や、過去のコンテンツに敬意を払う文化、感動体験重 視型のコンテンツ文化の実現を目指します。

ペダゴジカル・マシン:教え教えられる人工物の発達認知科学的基盤

研究代表者(所属)
開 一夫 (東京大学 大学院総合文化研究科 教授)
概要
本研究は、急進的に発展する情報基盤技術を背景に、発達認知科学を基軸とした融合的アプローチによって人 間の学習を支援・促進する人工物を構成し、学習の本質を解明することを目的とします。具体的には、乳幼児と学童を対象とした行動実験、脳活動の計測、イン ターネットを用いた大規模調査など複合的手法を駆使して、人間の学習を支援・促進する人工物-ペダゴジカル・マシン-が持つべき様相を明確にし、実験シス テムを実践場面で試験的に運用することで、将来の教育場面に真に役立つ科学的基盤を整備します。

コンテンツ生成の循環系を軸とした次世代音声技術基盤の確立

研究代表者(所属)
徳田 恵一 (名古屋工業大学 大学院工学研究科 教授)
概要
音声対話システムでは、ユーザがシステムと対話したくなるような魅力的なコンテンツが重要となります。近年、コンピュータ上でのコンテンツを生成するため仕組みとして、Wikipedia、YouTube等、ユーザが主体となってコンテンツを作成する手法が成功を収めています。本研究では、このようなユーザによるコンテンツ生成を音声対話システムに導入し、それが実際に機能するための仕組みや条件を実証的に探究します。

局所性・指向性制御に基づく多人数調和型情報提示技術の構築と実践

研究代表者(所属)
苗村 健 (東京大学 大学院情報学環 教授)
概要
本研究は、多人数が集う場での利用を前提とした人間調和型情報提示技術として、人々の対面コミュニケー ションを重視しつつ、現実世界に情報世界を重畳する技術の実現を目指します。従来の重畳技術(拡張現実感技術)は、主に個々人の情報端末画面の中で行われ てきました。本研究ではその枠を超え、情報を光や音波に埋め込んで現実世界に対して局所性や指向性を制御しながら提示することにより、画面の中ではなく空 間的に展開された情報に人々が自由にアクセスすることを可能にします。

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