「人工多能性幹細胞(iPS細胞)作製・制御等の医療基盤技術」

平成24年度 研究終了にあたって

「人工多能性幹細胞(iPS細胞)作製・制御等の医療基盤技術」研究総括 須田年生

本研究領域は、平成19年11月京都大学の山中伸弥教授らによってヒト人工多能性幹細胞(iPS細胞)が樹立されたことを受け、戦略目標「人工多能性幹細胞(iPS細胞)作製・制御等の医療基盤技術」の達成に向けた研究領域として平成20年度に発足しました。国際的に高いレベルにある我が国の幹細胞研究のポテンシャルを活かしつつ、iPS細胞を基軸とした細胞リプログラミング技術の開発に基づき、当該技術の高度化・簡便化を始めとして、モデル細胞の構築による疾患発症機構の解明、新規治療戦略、疾患の早期発見等の革新的医療に資する基盤技術の構築を目標としています。
この目標を達成するため、平成20年度から3ヶ年度にかけて計23課題を採択して来ましたが、そのうち、平成20年度採択の古関チーム及び平成21年度採択の斎藤チームの研究課題がそれぞれ平成24年度末と平成23年度末に終了することとなりました。

研究代表者 古関明彦((独)理化学研究所免疫・アレルギー科学総合研究センター)らの研究課題「ヒトiPS細胞の分化能と腫瘍化傾向を反映するマーカー遺伝子群の探索」は、当初より4.5年の研究期間で実際され予定通りの終了を迎えました。マウス及びヒトのNKT細胞からiPS細胞を誘導して、抗腫瘍活性の高いNKT細胞に再分化させる手法を確立したほか、マウスにおいてiPS細胞由来NKT細胞を用いたがん治療モデルの作製など新たな展開が見られ、iPS細胞を用いた細胞治療の可能性を示しました。ここで開発された基盤技術が今後の新しい医療に繋がっていくことを期待しています。

研究代表者 斎藤通紀(京都大学大学院医学研究科)らの研究課題「生殖系列におけるゲノムリプログラミング機構の統合的解明とその応用」は、2011年の多能性幹細胞から多能性幹細胞からのマウス生殖細胞形成過程の再構成に成功するなど国際的にも極めて高く評価される成果が創出されました。なお、本課題は、当初5.5年の研究期間で予定されていたが、JST戦略的創造研究推進事業ERATO「斎藤全能性エピゲノムプロジェクト」の中でさらに成果を発展させることとなったため、研究開始から2.5年の平成23年3月で終了することとなりました。CRESTが終了して現在はERATOへと移行していますが、研究そのものは極めて高い連続性を有しているので、今後も研究の円滑な推進と更なる発展が期待されます。

最後に、研究課題の選定と推進、評価等で日頃から適切な助言をいただく領域アドバイザーの諸先生に感謝します。

一覧に戻る