地中の根の見える化で、環境ストレスに強い作物を作る

ROOTomicsを利用した環境レジリエント作物の創出

(紹介動画)

紹介動画

研究代表者

宇賀 優作(農業・食品産業技術総合研究機構 作物研究部門 グループ長)

キーワード

環境レジリエント作物、根系形態、干ばつ、高温、イネ、ダイズ、X線CT、見える化、フェノタイピング


近年、地球規模の環境変動により世界中で干ばつや土壌荒廃が起こっています。このような不安定な環境下で持続的な食料生産を行うためには、環境ストレスに頑健な作物(環境レジリエント作物)の開発が必要です。環境レジリエント作物を開発するうえで、土中から養水分を吸収できる唯一の器官である「根」の改良は不可欠です。しかし、根は地中にあり観察が困難なため、どのような根の形(根系形態)に改良することが環境ストレス耐性に有利であるのかはよく分かっていません。本研究では、地下に隠れた根を「見える化」することで、環境ストレスに強い根系形態を明らかにし、得られた成果から、例えば「干ばつにはこんな根の形が適しています」と個々の環境に適した根系モデルを提案することを目指しました。この目的のため、以下のような成果をあげることができました。
1)干ばつを再現できる自動潅水制御システム…屋外での試験は気候の年次間差や地力ムラなど、様々な自然環境の影響を受けます。根系モデルを提案するためには、再現性のあるストレス環境で正確な表現型や環境データを取得する必要がありました。そこで、ポットの底面からの自動潅水により土壌水分を制御できる装置を開発しました。本装置を人工気象室に導入することで、屋外の季節に関係なく、干ばつや高温ストレスなどの過酷な自然環境を再現できるようになりました。
2)X線CTで作物の根を非破壊で可視化するシステム…根系は環境ストレスにより経時的に変化するため、この形態変化を根系モデルに取り込む必要がありました。しかし、従来の土から根を掘り出す破壊計測ではストレス前後の形態変化を経時的に追うことは不可能でした。そこで、ポット植えのイネやダイズの根系をX線CTで撮影した画像から三次元再構築し、根系形態を非破壊で経時的に計測できるシステムを開発しました。 3)環境ストレスに適応した根系モデルの提案…1)と2)で開発した栽培・計測システムを用いて、私たちは「どのような根系形態が環境ストレスに適しているのか」を解析しています。一例として、乾燥の影響を受け易い土壌表層に根が多いイネ品種は干ばつが起こると多くの根が深くなると同時に、地上部の生育が悪くなることが分かりました。これは、根を深くするためのコストが余計にかかった結果と考えられます。本結果から、干ばつに適した根系形態の最適解を見出そうと引き続き研究を進めています。
このように、私たちは、従来観察することが不可能であった地中の根のふるまいを明らかにしようと試みています。今後は、環境ストレス下で根に特異的に発現する遺伝子などを同定し、根系の改良に活用します。

もっと知りたい
 (後日終了報告書へのリンクを掲載予定です)

参考URL

https://rootomics.dna.affrc.go.jp/

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