作物の先制育種に資する予測モデル構築を目指して

データ科学に基づく作物設計基盤技術の構築

(紹介動画)

紹介動画

研究代表者

平山 隆志(岡山大学 資源植物科学研究所 教授)

キーワード

オオムギ、圃場環境、ライフコースオミックスデータ、状態形質、成長トラジェクトリ、ニューラルネットワークモデル、作物デザイン、茎頂メリステム、画像解析、植物ホルモン解析


将来予測される地球温暖化による農業生産への悪影響を回避する方策の一つは、予測される環境に生育を最適化した作物を予めデザインし作出することです。作物デザインには、作物の形質に影響する遺伝要因と環境要因の相互作用を理解し、その知見に基づいて農業形質を精度良く予測するモデルの構築が必要ですが、そのための有効な手法はこれまで提案されていません。近年の機械学習に基づくデータ科学の急速な進歩は、複雑な事象のモデル化を可能にし、生命科学でも威力を発揮しています。データ駆動的アプローチにより野外環境における作物の遺伝要因と環境要因の理解と、それに基づく作物のデザイン技術の開発が可能になりつつあります。
私達は、遺伝要因と環境要因の相互作用を理解するため作物の成長過程の状態の違いを「状態形質」と定義し、その原因となる遺伝要因や環境要因を同定と関連する作物のゲノム情報と圃場の環境データから、農業形質を高精度で予測する人工知能モデルの構築を試みました。具体的には、複数系統のオオムギを2地点の圃場で複数年生育し、圃場の環境データとともに、オオムギの発芽から開花までの成長データと画像データに加え、毎週の葉の遺伝子発現データ、植物ホルモンデータを収集しました。また、これとは別に、茎頂メリステム(成長点)の形態データと遺伝子発現データを収集しました。これらのライフコース時系列データを用いて成長トラジェクトリを描出することで、成長過程における系統間や年次間の違いを分析し状態形質を葉と茎頂メリステムそれぞれで抽出することに成功しました。そして、これらの状態形質に関連する遺伝要因の違いを開花の予測モデルに組み入れることで、予測精度が顕著に高まることを確認し、状態形質の有効性を実証しました。
農業形質の発現までの成長または生理状態の特徴的な変化を状態形質として抽出し、それに関連する遺伝要因や環境要因を利用することで、ゲノム情報や環境データから農業形質を予測するモデルの高精度化を達成し、作物デザインの技術開発に大きく貢献しました。また、本研究課題の遂行過程で、オオムギゲノム構造の多様性の解明、茎頂メリステムの解析技術の開発、1細胞解析におけるデータ解析手法の応用、簡便な圃場画像取得方法の開発、低温応答性に関する遺伝子座の同定などに成功し、植物科学の進展に貢献しました。

もっと知りたい
 (終了報告書へ)

参考URL

https://www.rib.okayama-u.ac.jp/ers/index-j.html
https://www.csrs.riken.jp/jp/labs/birt/index.html
https://hiroyukitsuji.tumblr.com/
https://www.ume-lab.com/

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