野外向け計器と作物生長予測による高度栽培制御

フィールド向け頑健計器と作物循環系流体回路モデルによる形質変化推定技術に関する研究

(紹介動画)

紹介動画

研究代表者

三宅 亮(東京大学 大学院工学系研究科 教授)

キーワード

養分計、画像処理、マイクロ流体回路、同化、転流、蒸散流、光合成、窒素


作物は、生長の過程で養分吸収量が刻々と変化するため、狙った品質の作物を得るためには、生長にともなう養分吸収パターンを想定し、短い間隔で施肥量を調整するなどの栽培方法が望まれます。一方、国土が南北に長く変化に富んだ気候の下、山間・平野部など多様な耕作地を持つ日本では、地域や季節毎に栽培環境が異なるため、画一的な養分吸収パターンのみを想定するだけでは狙った品質を得ることが困難と考えられます。理想的には、現場で作物の生長状態を逐次把握しながら、施肥などの栽培条件をきめ細かく変更・調整することが望まれます。そこで、本研究では、以下の3つの目標を定めました:(1)野外に常時設置して作物近傍の光合成環境変化を逐次取得することを可能にする軽量環境計、作物体内の栄養状況を把握するための小型養分計、作物の外観形質の変化を捉えるための作物形状画像計を開発すること、(2)これらの機器よる観測値を基に、作物の近未来の生長を予測するための、作物体内の水分吸い上げや光合成産物の転流などの循環系を基本とした生長モデルの開発を行うこと、(3)最終的に、このモデルと実際の生長量を同化させることで養分吸収状態や形質変化を推定し、異なる環境や気候の下でも狙った作物品質へ誘導するための方法や、それを具現化するための栽培制御システムを提案すること。これらの目標に向け、照度、圧力、気温、湿度、CO2濃度、風速の同時計測が可能、手のひらサイズで軽量、外装にソーラーバッテリーを付けた無給電駆動の環境計を開発しました。また養分計測に関しては、作物から低侵襲に100ナノリットルほどの微量の試料液を直接抽出する超微細採取機構と、従来の液状試薬に代わり野外の高温状態でも劣化しない独自の固形試薬を備えた小型(50㎜角)の養分計を開発しました。作物形状画像計については、異なる方向からの画像と葉色板等を組み合わせることで、作物の生長量(葉面積、草高)、葉色値などの計測を自動で行う画像処理技術、及びそれらを組み込んだ簡易型の画像計を開発しました。循環系モデルについては、環境計からの環境データ及び画像計からの生長データを入力値として、近未来の体内窒素濃度変化や生長量の予測を行う、マイクロ流体回路解析技術を応用したモデルベース型のシミュレーターを開発しました。そして、最後に上記の計器とシミュレーターを組み合わせた栽培方法の有効性の検証を行ったほか、半開放の栽培施設を想定した栽培制御システムを提案しました。

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参考URL

https://microfluidics.jp/

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