田んぼのイネの振る舞いを予測したい!

野外環境と超並列高度制御環境の統合モデリングによる頑健性限界の解明と応用

(紹介動画)

紹介動画

研究代表者

永野 惇(龍谷大学 農学部 准教授)

キーワード

イネ、トランスクリプトーム、遺伝子発現、環境制御、光合成、温度、光、概日時計


生物本来の生育場所であり、主たる農業生産の場でもある野外では、温度や光などが刻一刻と複雑に変化します。そして、野外環境下における生物の遺伝子発現を予測することは、生物学における大きなチャレンジです。もしそれが可能になれば、野外での生物の振る舞いを自在に設計する技術へと近づくため、その有用性は極めて大きいと言えます。本研究は、野外環境と制御環境における遺伝子発現の統合的理解と、トランスクリプトームを介した形質予測のための基盤技術の確立を目指して実施されました。
まず基盤技術として、多検体RNA-Seqの新規手法(Lasy-Seq)を確立し、数千検体のトランスクリプトームデータをルーティンに取得することができるようになりました。そこで、イネの染色体断片置換系統を大規模に圃場で栽培し、栽培期間を通じて毎週、2時間おき24時間の日周サンプリングを行いました。そして、これらのサンプルを前述の手法で解析し、6シーズン分、9000サンプル以上の野外トランスクリプトームデータを取得しました。これらのデータと気象データから、独自に開発したライブラリ(FIT)によって気象-トランスクリプトーム間の回帰モデルを得ました。さらに、このモデルによって、学習に用いていない時点、地点、遺伝子型のトランスクリプトームを予測可能であることを示しました。また、新規に開発された迅速光合成測定装置(MIC-100)を用いて、3シーズンの生育期間網羅的な光合成測定を行い、15000データ点以上のガス交換の測定値を取得しました。そして、これらの光合成の測定値と、FITによる予測トランスクリプトームデータから、時期、系統の違いによる光合成の違いを予測できることを示しました。
これと並行して、多条件の温度、光を並列に制御できるグロースチャンバーシステムを開発しました。このグロースチャンバーを用いて、様々な明期温度、暗期温度、日長の組合せの73条件における日周トランスクリプトームデータ、約1000サンプル分を取得しました。このデータと、野外圃場で得たトランスクリプトームデータを用いて、両方のデータを学習に用いた時に環境データからトランスクリプトームを予測する精度が向上するか、検討を行いました。その結果、適切なデザインで取得した野外データと制御環境データを組み合わせることで、少ない学習サンプル数でより頑健な予測が可能なモデルが得られることが分かりました。

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参考URL

https://ps.agr.ryukoku.ac.jp/naganolab/
http://web.tuat.ac.jp/~crop/index.html
http://bbc.agr.nagoya-u.ac.jp/~graft/

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