植物に学ぶ「変動する環境に対応するしくみ」

フィールド・エピジェネティクス:環境変動下での頑健性の基盤

(紹介動画)

紹介動画

研究代表者

工藤 洋(京都大学 生態学研究センター 教授)

キーワード

ハクサンハタザオ・シロイヌナズナ・インナチュラ・分子フェノロジー・クロマチン・エピゲノム・ヒストン修飾・DNAメチル化・長期季節記憶・植物工場


地球上のバイオマスや炭素収支の相当部分を野生植物が占めるため、「地球環境の変化による生態系サービスの劣化に対応」する観点から、自然生態系での植物頑健性を理解することが重要です。また、自然生育地における野生植物は、人間による播種・植え付け・施肥・病害虫管理を受けることなく継続的に維持されており、そこで見出される頑健性のしくみは、「地球環境が変動する中での極端気象にも対応できる持続的農業」が取り入れるべき対象として有望です。複雑な自然環境下で頑健な応答を達成するために植物が持っている、エピジェネティックな機構を明らかにすることが本研究のねらいです。
工藤グループは、世界初めてとなる野外生物集団での長期統合エピゲノムデータを取得し、角谷グループでは動植物を通じてほとんど研究されていない種類のエピゲノム修飾を狙った分子遺伝学的解析を行ました。その結果、植物の頑健性を理解するための新事実が次々と発見されました。その代表例として、(1)短期安定と長期変動が両立した季節変動型ヒストン修飾、(2)長期環境応答に方向性を与えるラチェット制御、 (4)ウイルス継続感染による季節依存的病徴と防御、 (5)配列特異的なDNAメチル化喪失を引き起こすタンパク質、(6)コード領域における抑制クロマチンの機能におけるH3K4me1の役割、(7)近接して逆方向に転写される遺伝子におけるH3K4me1の役割、(8)コード領域の抑制クロマチン確立機構をあげることができます。
これらの新規制御機構は、エピゲノム設計・改変の両面で有用です。中でも、変動環境中でも安定発現を保つエピゲノム構造やヒストン修飾による季節ゲーティングなどは、遺伝子発現調節の技術として重要と考えられます。また、私たちが開発した多検体ヒストン修飾検出技術は、作物や野生植物のエピゲノム研究に貢献しており、後半から参加した福田グループにより、植物工場の管理温度の最適化を目指した研究に用いられました。さらに、イネの冷害における温度記憶、ササの周期開花の記憶の共同研究にも活用されています。今後、論文発表の後に公開するエピゲノム・トランスクリプトーム統合季節動態データベースによって、特定の遺伝子について発現とエピゲノムの長期変化のデータの活用を図ります。

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参考URL

植物分子フェノロジーデータベース
http://sohi.ecology.kyoto-u.ac.jp/AhgRNAseq/
工藤研究室ホームページ
https://www.ecology.kyoto-u.ac.jp/~kudoh/
角谷研究室ホームページ
http://www.bs.s.u-tokyo.ac.jp/~iden/
福田研究室ホームページ
https://www.omu.ac.jp/eng/bioproduction/folder/index_3.html

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