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- [次世代AI・数理情報] 2025年度採択課題

東京科学大学
情報理工学院
大学院生
大規模深層学習モデルの学習コストは指数的に増大し、単一の研究拠点でモデルを一から学習することが現実的ではなくなっています。ただし複数拠点で独立して学習されたモデルを単に結合すると、知識の干渉による忘却などにより、性能が低下してしまいます。本研究では、行列ノルムに基づく正則化を高速で計算する手法を開発することで、複数の研究拠点が協力して大規模モデルを学習するための協調型の学習基盤を構築します。

理化学研究所
革新知能統合研究センター
基礎科学特別研究員
大規模AIを持続可能な技術にするために,数理的原理の明らかなモデル圧縮化手法の開発が待たれている.本研究では,現代AIの中核技術であるトランスフォーマーの微分方程式モデルに着目し,方程式が持つ数理構造とモデル学習する法則の関係を明らかにすることで,予測可能な圧縮技術の開発を目指す.技術開発の鍵は,モデル内に潜む擬ユークリッド幾何的な構造を活用可能にするための最適輸送理論を新たに構築することにある.

早稲田大学
大学院先進理工学研究科
大学院生
本研究は、実環境における部分観測性の制約下でのSim2Real転移手法を開発し、Physical AI実現における技術的課題の解決を目的とする。具体的には、(1)観測次元適応型データ生成手法の開発、(2)物理整合性保持型学習フレームワークの構築、(3)制御理論に基づく安全性保証機構の導入に取り組む。これらの統合により、シミュレーションから実環境への効率的な知識転移を自律移動ロボットで実証する。

筑波大学
人間総合科学学術院
大学院生
バーチャル体験におけるユーザの没入感向上には、身体運動の様々な動作要素を反映したリアルな触覚フィードバックが不可欠である。本研究では、多様な物体と動作条件下で収集した大規模触覚データセットと、低遅延な生成AIアーキテクチャによって、ユーザの動作にリアルタイムに反応する触覚生成AIを開発する。これにより、あらゆるバーチャル環境においてリアリスティックな触覚刺激を提供する触覚エンジンの実現を目指す。

東京大学
大学院情報理工学系研究科
大学院生
本研究では、人々が日常的な歩行中に撮影する歩行者視点映像から高精度な自由視点画像合成の実現を目指します。復元を目的としない街中で撮影される映像は情報不足・視差不足や動物体の映り込みといった課題があります。以上の課題に対し、3D基盤モデルや生成モデルといった大規模データで学習されたモデルを活用することで解決を目指します。以上により、誰もが手軽に3Dコンテンツを作成・共有できる社会の実現を目指します。

東京科学大学
情報理工学院
大学院生
一般に、大規模言語モデルは大量のデータを学習することにより性能が向上することが知られています。他方、法律応用分野では、既存の大規模法律データセットによる単純な学習のみでは、法律分野でAIを活用するために十分なモデル性能が達成できないことが知られています。本研究では、法律の意味に着目した学習データの構築とモデル学習を提案します。

東京大学
大学院工学系研究科
大学院生
音素は物理的特徴ではなく、相互の関係性に基づく表現だとする構造的音韻論によれば、我々人間が話者によらず音声の意味を理解できるのは、発話を全体の構造として認識しているためだと言えます。本研究では、構造的音韻論の技術的実装である「構造的表象」を再訪し、話者不変の特徴量を抽出可能な音声の自己教師あり学習モデルの構築に挑戦します。本研究は、人間の認知に近い音声言語処理の実現に貢献することが期待されます。

北陸先端科学技術大学院大学
先端科学技術研究科
助教
本研究では、連続的な構造をもつ現実課題(設計、物流、制御等)の難しさを、裁合せ問題、美術館問題、アンチスライドパズルなどのパズル的問題としてモデル化した上で、実数変数の決定問題として定式化する。これらに対して、ERやEARと呼ばれる計算量クラスへの所属性と完全性を示すことで、実社会の複雑な課題の容易性と困難性の境界を理論的に解析する。また、記号計算ライブラリを活用した汎用ソフトの開発にも取り組む。

早稲田大学
理工学術院基幹理工学研究科
大学院生
クラスタリングの性能評価は視覚的評価が主流ですが,大規模データ解析ではクラスタリングの品質を定量的に自動評価する技術が必要です.本研究では数理生物学のスプリットやダイバーシティという組合せ論の概念に着想を得て,グラフ構造を反映したクラスタ分離度や凝集度の指標と高速な計算手法を開発します.開発した指標を変数選択や異種データ統合に応用し,クラスタリングのAutoML展開で次世代AIに貢献を目指します.

東京大学
大学院情報理工学系研究科
大学院生
記憶機構をAIに導入する試みは近年活発に展開されているが、過去の記憶を訓練中に再生するだけではなく、記憶が過去の訓練の情報を反映するような記憶ー学習相互作用系は理論と実装の両方の面で発展途上にある。本研究では、記憶―学習相互作用系を最適化理論に基づいて解析し原理解明する。また、その知見を用いて相互作用系の効率化と自律化を目指す。

大阪大学
大学院基礎工学研究科
大学院生
本研究では、日常空間でのシームレスな虚実融合の実現に向け、市販クラスの小規模なプロカム系を高効率なAIで制御することで、投影対象へのマーカ付与や煩雑な事前校正処理が不要な動的高速追従投影を実現します。また動的追従投影システムを、明室でも視認性の高い映像投影が可能な投影型照明システムと統合することで、投影された模様がまるで実物体そのものの模様であるかの様にユーザに知覚させることを目指します。

東京大学
大学院情報理工学系研究科
大学院生
半導体の微細化限界が近づく中、製造ばらつきを積極的に利用する「アナログAI」は、AI計算の高速化と省電力化を可能にする。しかし既存実装は数千パラメータ規模に留まり、現代のAIモデルでの有効性は未知である。本研究は、市販DRAMの規約を逸脱した使用による非決定的な振る舞いを活用し、物理リザバー計算を実現する。これにより特殊ハードウェアなしに数十億パラメータ規模のアナログAIを世界初実証する。

京都大学
数理解析研究所
助教
本研究では、強化学習の中核をなすベルマン演算子を圏論的な視点から抽象化し、様々なモデルの演算子を含む統一的な理論基盤を構築する。これにより、従来ヒューリスティックに設計されてきた学習手法群を理論的に統一する。さらに、抽象化を活かし、形式検証などの他分野で発展した効率的な不動点探索手法を適用することで、従来では困難であった設定においても、効率的かつ理論的保証のある学習手法の開発を目指す。

東北大学
言語AI研究センター
助教
AIは人間の意思決定においてますます重要な役割を担うようになっています。信頼できるAIを構築するには、人々が誤解を抱いたときどのように対応すべきかを理解することが欠かせません。本研究では、統計学を題材に、人間の誤解を特定し解消するための方法を探究します。そのために、典型的な誤解をまとめたデータセットを構築し、学習者の誤解を診断して個々にフィードバックを提供する学習支援システムの設計に取り組みます。

理化学研究所
量子コンピュータ研究センター
特別研究員
量子アルゴリズムには古典アルゴリズムを大きく上回る高効率計算が期待されていますが、その求解が現実に高い需要を持つ非線形ダイナミクスへの有効性はいまだ限定的にしか示されていません。本研究では、量子力学と多項式計算の表現の対応関係に注目してこの量子アルゴリズムを拡張することで、量子コンピュータにより解決可能な非線形微分方程式の新たな問題クラスとその解法を発見することを目指します。

東京大学
大学院工学系研究科
大学院生
本研究は、社会・経済のような不確実性の高い領域において、未知の状況への推論を支援する構造的アナロジーAIの構築を目的とする。既存の大規模言語モデルは意味的な類似には強いが、論理構造の類似性の把握には限界がある。そこで本研究では、専門家の推論コーパスから論理構造に基づく推論グラフを構築し、AIエージェントがこれを探索することで、類似構造を持つ推論パスを導出し、未知の事象への仮説的推論を可能にする。

九州大学
大学院システム情報科学研究院
助教
Simulation-based Inference(SBI)とは、シミュレータのパラメータを実観測から同定する機械学習手法である。多くのSBIは時系列シミュレータを対象とするが、その時系列性を適切に活用できていない。本研究では、シミュレータの時系性を活用した効率的なSBIを確立する。また、時系列性を利用して統計的推論を行う時系列統計解析との接点を見出し、時系列統計解析とSBIの融合を試みる。

富山大学
学術研究部社会科学系
講師
本研究の目的は確率解析を用いた生成モデルの次世代高速化技術の実現です。確率微分方程式を用いる高品質なデータ生成モデルは実装の計算負荷が課題となっています。本研究では確率微分方程式の高速な数値計算法を活用し、生成モデルの計算速度の飛躍的な向上を図ります。 既存AIの計算能力の限界を打開する高速化フレームワークの構成を通じ、高精度なデータの求められる医療・経済の現場のデータ生成課題解決を目指します。

京都大学
大学院情報学研究科
大学院生
自律型ロボットが人間と協働するには、動作の「意図」を自然に伝える能力が求められる。本研究では、能動的推論の枠組みに基づき、空間内の注目対象を表す空間注意の予測誤差に応じて、視線移動を模倣した首動作を生成する制御を実現する。行動によって知覚を補正し、内的状態を動作で語るという本手法は、従来のAIに不足していた説明可能性や社会的インタラクション能力に対して、構造的かつ実装的な革新をもたらすものである。

富士通(株)
富士通研究所
研究員
数理最適化は、組織や個人の高度な意思決定を支援するために広く活用されてきました。しかし、数理モデルを構成するパラメータに内在する不確実性への対処は依然として重要な課題です。本研究では、過去に観測された意思決定の履歴に基づいて最適化モデルのパラメータを推定する意思決定指向学習に取り組みます。これにより、数理最適化と機械学習を有機的に統合し、データ駆動型の新しい意思決定支援の枠組みを実現します。

東京都立大学
システムデザイン学部
助教
ウェブメディアを通じて誤信念や極端な思想に走るユーザの行動や思考過程を解明することを目的に、認知科学の理論を LLM と統合した認知的 AI エージェントを開発し、言語をベースとした認知活動の歪みをシミュレーション可能にします。特に、ユーザの一挙手一投足やその背後にある思考の移り変わり、認知的な不安定さといった機微を詳細に再現することを目指し、健全なデジタル環境のデザインに貢献します。

東京大学
大学院工学系研究科
大学院生
都市内土地利用のダイナミクスの解明に向けて、住民・政府・デベロッパー等の意思決定の相互作用の推定が必要です。本研究ではオープンデータから土地と交通の時系列ネットワークを自動生成し、合成ミクロ居住地移転データと統合します。この多主体・時系列の行動データにより、データ駆動と均衡理論を融合した動学立地モデルを推定し、土地利用と人口移動を高精度に予測します。さらに、モデルに基づく都市制御基盤を構築します。

東京科学大学
情報理工学院
助教
大規模言語モデル(LLM)には、処理する系列・文脈が長くなるにつれて性能が低下するという限界がある。本研究では、この限界を克服するため、モデル自身が短文脈処理における中間表現や出力結果を手かがりに、自律的に長文脈処理能力を獲得・高度化する方法を創出する。これにより、長い文脈に対しても正確に処理できるLLMを実現するのとともに、LLMが文脈を処理するメカニズムの解明に挑戦する。

東京大学
大学院工学系研究科
大学院生
当年度の研究では、楽譜の深層的理解基盤と演奏者の表現様式モデルを確立する。楽譜に書かれた記号だけでなく、RAG技術で得られる音楽理論や時代背景などの暗黙的な知識をLLMに統合させる。また、演奏者の個人データから、楽譜記号と音響的ニュアンスの関係を対照学習で深く理解し、定量的にモデル化する。これにより、将来的なAI伴奏システムにおける、多角的・意味論的な表現理解の基盤を確立する。

大阪大学
大学院工学研究科
大学院生
がん治療や核融合など様々な分野での応用が期待される中性子ですが、各々に理想的な中性子スペクトルの生成には膨大な時間と手間を要します。本研究では、目標とする中性子スペクトルに対して、それを実現するためのモデレータの材料構成および幾何情報を逆算可能な 物理法則を加味したAI を構築し、理論・実験ともに確かな裏付けのあるモデルの実現を目指します。

東京大学
大学院人文社会系研究科
大学院生
共有地管理から排出ガス規制まで、個人と全体の利益が対立する状況の解決には、対話による合意が求められますが、より良い合意を促す対話の設計原理は不明です。本研究は、人間の発話などを再現するAIエージェントを開発し、それを環境としたシミュレーションにより効果的な対話の仕組みを発見します。AIエージェントと人間の誤差を考慮することで、より良い社会の仕組みを現実的かつ効率的に設計する研究の端緒を開きます。

京都大学
大学院情報学研究科
特定助教
重い物体の全身による巧みな操作は困難な課題であり、AIとロボティクスの統合による解決が期待される。本研究では、タスクに内在する空間的・時間的階層性に着目し、複数のタイムスケールとモダリティにまたがる感覚処理と運動制御の実現を目指す。そのために、力学系の潜在表現に基づき、階層構造の獲得と情報伝達を可能にする枠組みを開発する。これにより、人間らしい運動生成を実現する実ロボットの学習理論を構築する。

東京大学
大学院総合文化研究科
大学院生
LLMの内部機序を人間の認知・脳情報データと沿うようにファインチューニングするという方法論(認知内部機序チューニング)を確立し、普遍的・直感的な解釈性と性能を両立したLLMを構築することを目的とします。目的達成のため、1. LLMの内部機序と認知・脳情報データ対照のための情報理論的基盤の確立 2. 認知・脳情報データによるLLMの内部機序の解釈 3. 認知内部機序ファインチューニング を実施します。

東京大学
大学院情報理工学系研究科
大学院生
計算理論の基盤となる問題のひとつである「グラフ彩色問題」の近似アルゴリズムに関する研究を行う。Kawarabayashi, Thorup, Yoneda (2024) は 3 彩色可能なグラフを多項式時間で O(n^0.1975) 彩色するアルゴリズムを提案したが、この結果を改善することを目指す。それをもとに、3 彩色可能なグラフのローカルな特徴やグローバルな特徴を新たに見出す。

産業技術総合研究所
人間情報インタラクション研究部門
主任研究員
深層学習の進歩により音楽の生成・解析は高度化していますが、音響や歌詞などの音楽情報とダンスや演奏などの実世界の身体動作を扱う仕組みは整っていません。リズムやメロディ、歌詞の語感が、身体の動きや表情といつどのように対応するのかを定量化し、創作や教育に活用できる統合モデルが必要です。本研究では、音響・歌詞とダンス・歌唱・演奏動作を統合的に解析し、その対応を可視化・検索・生成できるAI基盤を構築します。