[生命と化学] 令和2年度採択課題

家田 直弥

体外から血流を光で操る分子技術の構築

研究者
家田 直弥

名古屋市立大学
大学院薬学研究科
講師

研究概要

体内をくまなく巡る血管によって形成される循環器系は生体機能を維持するための重要な器官です。本研究では、血管弛緩を誘発するシグナル分子である一酸化窒素の発生を光で制御できるような化合物を開発し、細胞レベルで一酸化窒素の動態を調べたり、動物個体レベルで血流を操る技術としての確立を目指します。この技術は循環器系疾患や、その他の血流改善によって改善される疾患の新たな治療パラダイムとして期待されます。

稲葉 央

タンパク質内包を基盤とした微小管の光制御による細胞操作

研究者
稲葉 央

鳥取大学
工学部
准教授

研究概要

細胞骨格の一種である微小管は、細胞の形状・強度・運動・分裂などの生命の根幹に関わる重要な役割を果たしています。これまでに、微小管内部に結合するペプチドを開発し、内部に様々な分子を導入することで微小管の構造や性質が変化することを見出してきました。本研究では、細胞中の微小管内部にタンパク質を導入し、その微小管内壁への結合を光刺激で制御することで、細胞の構造や機能を操作する新技術を開発します。

牛丸 理一郎

微生物農薬が生産する抗生物質の生合成機構に関する研究

研究者
牛丸 理一郎

東京大学
大学院薬学系研究科
助教

研究概要

微生物農薬として使用されるアグロバクテリウムは独自の抗生物質を生産することで、植物病原菌の発育を阻害します。一方、抗生物質生合成の化学的メカニズムの詳細は明らかになっていません。本研究ではアグロバクテリウムが生産するヌクレオシド抗生物質の生合成経路に焦点を絞り、生合成酵素の触媒機能と反応メカニズムを同定します。さらに、その生合成システムを利用した非天然型ヌクレオシド分子合成法の開発を目指します。

大山 智子

水媒介架橋による細胞機能発現を促す人工ECMの実現

研究者
大山 智子

量子科学技術研究開発機構
高崎量子技術基盤研究所
主幹研究員

研究概要

生体内の細胞は、周囲に存在する細胞外マトリックス(ECM)と呼ばれる生体分子ゲルによって機能を調整されています。本研究では、抽出や精製でバラバラになったタンパク質等の生体分子を再びつなぎあわせる新たな化学的手法を開発し、ECMの主要特性を再現・制御した人工ECMを創出します。生体内における本来の細胞機能や特定の細胞機能を引き出す人工ECMによって、細胞培養技術の刷新を目指します。

木村 駿太

多細胞性シアノバクテリアの細胞分化調節物質の探索

研究者
木村 駿太

宇宙航空研究開発機構
宇宙科学研究所
特任助教

研究概要

藍藻(シアノバクテリア)は、原核生物でありながら多細胞が連なって役割分担をしており、真核生物とは別個の進化を遂げた多細胞生物と言えます。一方で植物の葉緑体の起源生物である藍藻には、植物の細胞間コミュニケーションの最も原始的な例が保存されている可能性があります。本研究は、藍藻の細胞分化を調節する新規の活性化合物の単離・同定を行い、さらに他階層のモデル生物を用いて機能進化の解明に迫ります。

高橋 大輝

創薬展開を見据えた新たな方向性をもつオートファジー研究

研究者
高橋 大輝

東北大学
大学院生命科学研究科
助教

研究概要

私たちは選択的オートファジーを利用して細胞内物質を分解する手法「AUTAC」を開発しました。本研究では、AUTACをツールとして、オートファジーにおける細胞内相分離の関与に注目して研究を進めます。将来的には、化合物を使った相分離の制御に挑戦していきたいと考えています。

田良島 典子

抗体ー核酸結合体によるimmunogenic cell death誘導法の開発

研究者
田良島 典子

徳島大学
大学院医歯薬学研究部
准教授

研究概要

Immunogenic cell death (ICD、免疫原性細胞死)とは、免疫応答を誘発しやすいタイプの細胞死であり、がん免疫療法や感染症治療法への応用が期待されています。本研究では、新しい概念に基づく抗体-核酸結合体の設計により、狙った細胞に対して特異的にICDを誘導する手法を確立します。

友重 秀介

タンパク分解ツールボックスの確立

研究者
友重 秀介

東北大学
大学院生命科学研究科
助教

研究概要

タンパク質の分解を誘導する化合物「タンパク分解薬」は、選択的・迅速・可逆的にタンパク質を減少でき、生命科学研究や創薬への展開が期待されています。しかし、現時点では一般性が不十分です。生体内には多彩なタンパク質が存在するため、様々なメカニズムの分解薬から最適なものを選択できるのが理想です。そこで本研究では、異なるメカニズムで作用する複数の新規分解薬を創製し、タンパク分解ツールボックスを確立します。

野村 憲吾

食塩の美味しさを担う多細胞情報統合システムの解明

研究者
野村 憲吾

京都府立医科大学
大学院医学研究科
助教

研究概要

食塩(NaCl)のおいしさは、塩分の過剰摂取の根本的な原因ですが、口腔内で食塩のおいしさを担う仕組みはよくわかっていません。私は、特定の機能を持つ細胞を同定/操作するための技術戦略を確立することで、未知の塩味感知細胞(Cl感知細胞)を同定し、塩味を司る細胞機構の解明に取り組みます。最終的には、塩味を増強する化学物質の標的分子を得ることで、美味しく減塩できる社会の実現を目指します。

橋本 翔子

棍棒型ミクログリアの神経変性における機能解析

研究者
橋本 翔子

滋賀医科大学
創発的研究センター
特任准教授

研究概要

ミクログリアは、神経変性過程において重要であることが明らかにされています。しかし、「棍棒型」といわれる突起を長く伸ばした形態のミクログリアは、神経変性を呈するモデルマウスの神経変性領域において現れるものの、その実体は全く明らかにされていません。本研究では、棍棒型ミクログリアの遺伝子発現プロファイリングをベースとしたキャラクタリゼーションと、棍棒型ミクログリアの神経変性における機能解析を行います。

平田 哲也

糖脂質GPIの糖鎖構造多様化メカニズムの解明

研究者
平田 哲也

岐阜大学
糖鎖生命コア研究所
特任助教

研究概要

糖鎖修飾は主要なタンパク質の翻訳後修飾であり、タンパク質の機能や局在を制御します。主要な糖鎖合成経路は確立されつつありますが、糖鎖の大きな特徴である「多様性」を生み出す分子基盤は全くわかっておらず、糖鎖研究分野における最大の課題の一つです。本研究では、タンパク質の糖脂質修飾であるGPIアンカーの糖鎖部位の構造多様化メカニズムを、これまでにない細胞内輸送経路の観点から解明することに挑戦します。

福谷 洋介

共有結合修飾を伴う哺乳類嗅覚受容体の新規活性化機構

研究者
福谷 洋介

東京農工大学
大学院工学研究院
助教

研究概要

生物の嗅覚のニオイ知覚は、嗅覚受容体の活性化を誘導するニオイ分子との化学結合が起点となって起こります。ニオイ分子は無数に存在するため、数百種におよぶ嗅覚受容体の活性化機構も一様ではないと予想されます。そこで本研究では、哺乳類嗅覚受容体とニオイ分子間で生じる共有結合修飾に伴う新規活性化機構に焦点をあて、高活性ニオイ分子に応答する嗅覚受容体のタンパク質レベルの分子認識機構の解明に挑戦します。

本田 瑞季

化学的手法を用いて空間的な発現制御を解明する

研究者
本田 瑞季

京都大学
大学院医学研究科
特定助教

研究概要

脳は時空間的に厳密に定められた遺伝子発現やその制御システムにしたがって形成されるため、そのしくみを正確に理解するためには、空間情報にひもづくプロファイリング技術が必要です。そこで、本研究では空間的な発現制御を解明するための化学的技術を開発します。

牧野 支保

オートファジーによる選択的mRNA分解機構の解明

研究者
牧野 支保

東京大学
定量生命科学研究所
助教

研究概要

これまでオートファジーは主にタンパク質分解機構として解析されてきたため、種々の栄養飢餓に応じて分解されるmRNAの選択性や生理機能は不明です。本研究では、栄養飢餓の種類に応じたオートファジーの標的mRNAを同定し、そのRNA分解の生物学的意義を解明します。さらに、標的mRNAの局在変化を1分子レベルで観察し動態制御を明らかにします。RNA代謝におけるオートファジーの新たな機能的知見を創出します。

松田 研一

短鎖環状ペプチドの酵素・生物合成

研究者
松田 研一

北海道大学
大学院薬学研究院
講師

研究概要

短鎖環状ペプチドは優れた代謝安定性・組織移行性を示します。本研究では、短鎖環状ペプチドの合成に特化した新規なペプチド環化酵素ファミリーに着目し、その機能解析に基づく論理的な酵素改良を行い、生体触媒として開発すると共に、本酵素の合成生物学的利用法を提案します。これによりこれまで効率的な合成が困難であった短鎖環状ペプチドを、精度よく安定してかつ大量に合成できる環境調和性の技術の開発を目指します。

三浦 夏子

酵素群の細胞内集合による代謝制御機序の解明

研究者
三浦 夏子

大阪公立大学
大学院農学研究科
准教授

研究概要

真核生物の細胞内では様々な代謝酵素が集合体を形成します。この集合体は低酸素などの環境変化に応答して形成され、細胞の代謝を調節すると考えられています。小スケール低酸素培養系の検討を通して見出してきた「集合体形成には酵素の特定部位が重要である」という知見をもとに、本研究では酵素集合体の集合・離散を自在にコントロールできる分子ツールの開発を通して代謝制御を可能とする集合体形成の分子機序解明を目指します。

森川 久未

光による胚発生の時空間制御技術の開発 -1細胞追跡と遺伝子操作

研究者
森川 久未

産業技術総合研究所
生命工学領域
研究員

研究概要

胚発生は、三次元空間で時間と共にダイナミックに進行する現象であるため、生細胞において三次元空間と時間軸を考慮したイメージングや遺伝子操作などの解析手法が必須です。本研究では、私が開発した光操作型Cre組換え酵素を応用し、位置情報を基盤とした1細胞の細胞系譜追跡と、1細胞での遺伝子ノックアウト技術を開発します。これより、マウスとヒトの初期発生解明を目指した時空間制御型の細胞解析技術を確立します。

森川 桃

神経難病における酸化ストレスの細胞間伝播機構の解明

研究者
森川 桃

筑波大学
医学医療系
国立大学法人筑波大学特別研究員

研究概要

多数の神経細胞が同時に死滅していく神経変性疾患の病因には、細胞死シグナルの多細胞間伝播がかかわっていると予想されます。神経変性疾患の一つであるシャルコー・マリー・トゥース病の家系で細胞内分子モーターの点突然変異が同定されたため、変異分子モーターによるミトコンドリア含有小胞の細胞外放出メカニズム解明に的をしぼり、神経変性疾患の進行に深くかかわる細胞内物質輸送と細胞外小胞放出の新たな関係を構築します。

山岸 洋

細胞トラッキングのための生体適合性レーザー発振子の開発

研究者
山岸 洋

筑波大学
数理物質系
助教

研究概要

レーザー発振子を細胞内へ埋め込むことにより、細胞1つ1つにタグをつけトラッキングする技術が実現されつつあります。一方でレーザー発振子の素材を変更することは難しく、これまでは主にレーザー物理分野で実績のある半導体素子などが転用されてきました。本研究では細胞毒性の低減を目指し、生体適合性材料を用いたレーザー発振子の開発を行います。また、それを利用した長期細胞トラッキングに挑戦します。

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