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第37回共生進化機構先端セミナーをオンライン開催しました。

単細胞藻類の多様性と進化の研究で知られる大沼亮博士(神戸大学)にご講演いただきました。

講演要旨:
藻類は、非光合成生物であった祖先が光合成生物を取り込み、細胞内共生を成立させることによって誕生した。この「藻類化」は真核生物の様々な系統で独立に起こっているが、この進化過程については多くの不明な点が残されている。盗葉緑体現象はもともと光合成をしない生物が藻類を取り込んで、その葉緑体を細胞内に維持し、光合成に用いる現象を指す。盗葉緑体性の生物は取り込んだ藻類と一時的に細胞内共生関係を結ぶため、盗葉緑体現象は藻類化の進化の中間的段階であると解釈される。
私はクリプト藻から葉緑体を盗むNusuttodinium(ヌスットディニウム)属の渦鞭毛虫類を用いて藻類化の進化の解明を試みている。ヌスットディニウム属の渦鞭毛虫類はクリプト藻をまるごと取り込むが、クリプト藻オルガネラの維持において種間で違いがある。Nusuttodinium poecilochroumは葉緑体以外を消化し、盗葉緑体のサイズの変化は伴わない。一方で、N. aeruginosumは葉緑体に加えて、クリプト藻の核も維持し、細胞内で盗葉緑体を拡大させる。後者はクリプト藻の核の転写活性を維持し、クリプト藻核の維持が共生の長期化に寄与していることも明らかとなった。また、後者は共生中の栄養授受において植物・藻類との共通点があるため、現在は一時的な共生中の物質輸送の解明を試みている。
本セミナーでは我々が行ったヌスットディニウムにおける研究と盗葉緑体生物を加味した藻類化の進化モデル、これからの研究構想についてお話する。