ニュース

第33回共生進化機構先端セミナーをオンライン開催しました。

昆虫類の形態発生や斑紋形成の分子機構の研究で知られる安藤俊哉博士(京都大学)にご講演いただきました。

講演要旨:生命は進化の過程で様々な幾何学的な機能形態を獲得してきた。肉眼で観察できるマクロなスケールでは、飛翔を可能にするコンドルの羽の形態や、環境に紛れ込む魚や昆虫の擬態模様といった幾何学的な機能形態を生命は進化させてきた。一方、顕微鏡レベルのミクロなスケールでは、ハスの葉の超撥水性を呈する微細突起構造や、クジャクの煌びやかな装飾を実現する微細光学結晶といった洗練された機能形態を獲得してきた。このような生命の幾何学的な機能形態は、ランダムな形態の選択肢の中からピックアップされてきたわけではなく、形態の可変性の限界の中で、環境適応による特殊化への要請とのバランスに基づき実現してきたと推測される。講演者は進化発生学の観点から、生命の体の形づくりを制御する遺伝子の機能変遷に着目することで、幾何学的な機能形態が獲得される法則性を解明することを目指して研究を進めている。本講演では、これまで講演者が取り組んできた昆虫のマクロなスケールからミクロなスケールの幾何学的機能形態(蛾の櫛状の触角・テントウムシの斑紋・ハエの嗅感覚毛クチクラの防水通気性ナノポア構造)の獲得進化に関わる遺伝子を同定した研究例を紹介するとともに、現在開発を進めている大規模に染色体の構造を操作する研究アプローチに基づく生命進化研究の新展開について議論する。