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第32回共生進化機構先端セミナーを産業技術総合研究所つくば中央でオンサイト開催、同時にZoom配信するハイブリッド形式で開催しました。

バイオイメージングの第一人者である宮脇敦史博士(理化学研究所)にご講演いただきました。

日時:2024年2月14日(水)15:00~16:30
場所:産業技術総合研究所 つくば中央(茨城県つくば市)
https://www.aist.go.jp/aist_j/guidemap/tsukuba/center/tsukuba_map_c.html

講演要旨:細胞の中を動き回る生体分子の挙動を追跡しながら、ふと、大洋を泳ぐクジラの群を想い起こす。クジラの回遊を人工衛星で追うアルゴスシステムのことである。背びれに電波発信器を装着したクジラを海に戻す時、なんとかクジラが自分の種の群に戻ってくれることをスタッフは願う。今でこそ小型化された発信器だが昔はこれが大きかった。やっかいなものをぶら下げた奴と、仲間から警戒され村八分にされてしまう危険があった。クジラの回遊が潮の流れや餌となる小魚の群とどう関わっているのか、種の異なるクジラの群の間にどのようなinteractionがあるのか。捕鯨の時代を超えて、人間は海の同胞の真の姿を理解しようと試みてきた。
 バイオイメージング技術において、電波発信器の代わりに活躍するのが蛍光性や発光性のプローブである。生体分子の特定部位にプローブをラベルし細胞内に帰してやれば、外界の刺激に伴って生体分子が踊ったり走ったりする様子を可視化できる。蛍光や発光の特性を活かせば様々な情報を抽出できる。細胞内シグナル伝達系を記述するための同時観測可能なパラメータをどんどん増やすことを狙い、我々は、細胞の心をつかむためのスパイ分子を開発している。材料となるのは可視光を吸収あるいは放出するタンパク質である。そうしたタンパク質が、「光と生命体との相互作用」を巡る人類の発見から生まれ、それらの生物学的存在意義に関する我々の理解を超えて、ますます有用になっていく過程を広く考察してみたい。
 超ミクロ決死隊を結成し、微小管の上をジェットコースターのように滑走したり、核移行シグナルの旗を掲げてクロマチンのジャングルに潜り込んだりして細胞の中をクルージングする、そんなadventurousな遊び心をもちたいと思う。大切なのは科学の力を総動員することと、想像力をたくましくすること。そしてwhale watchingを楽しむような心のゆとりがserendipitousな発見を引き寄せるのだと信じている。

問い合わせ先:M-ERATO-International-Seminar-ml@aist.go.jp

主催:ERATO深津共生進化機構プロジェクト
https://www.jst.go.jp/erato/fukatsu/