ニュース

第31回共生進化機構先端セミナーを産業技術総合研究所つくば中央でオンサイト開催、同時にZoom配信するハイブリッド形式で開催しました。

形態進化発生学の研究で著名な倉谷滋博士(理化学研究所)にご講演いただきました。

日時:2024年1月10日(水)16:00~17:30
場所:産業技術総合研究所 つくば中央(茨城県つくば市)
https://www.aist.go.jp/aist_j/guidemap/tsukuba/center/tsukuba_map_c.html

講演要旨:反復説とは、生物の発生プロセスが進化系統樹と沿うような形で分岐・発展してゆく、かなり理想化された進化のモデルをいい、これを唱えたのが19世紀ドイツの2人の生物学者、フォン=ベーアとヘッケルであった。このようにして獲得された反復的な発生をパリンゲネジスと呼ぶが、多くの場合、発生プロセスはさまざまな変形を受け、進化過程をそのままの形で繰り返さないことの方が多い。このように擾乱・変形を受けた発生プロセスをカエノゲネジスと呼び、その要因には大きく2つの様式、ヘテロクロニー(異時性)とヘテロトピー(異所性)があり得る。ヘテロクロニーの一種、アルシャラクシスは発生過程の初期が変形することによって進化的新機軸の獲得が可能になるという学説であり、ロシアの発生学者、ゼヴェルツォッフによって提唱された。しかし、アルシャラクシスがパリンジェネティックなプロセスの変形によって可能になるという、二次アルシャラクシスの現象も仮定できる。そのプロセスを説明するのが遺伝学者のシュマルハウゼンとウォディントンによる安定化選択、もしくは遺伝的同化である。比較形態学が分子遺伝学と結合して進化発生学が可能になったのであれば、進化発生学の次の段階の発展は、本格的な遺伝学の取り込みを必要とするだろうと予想される。このトークでは、演者がこれまでのキャリアで遭遇した様々な進化発生現象を盛り込みながら、進化という時間の中で、発生プログラムがどのように変化していったのかを考察する。

問い合わせ先:M-ERATO-International-Seminar-ml@aist.go.jp

主催:ERATO深津共生進化機構プロジェクト
https://www.jst.go.jp/erato/fukatsu/