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第27回共生進化機構先端セミナーをオンライン開催しました。

内部共生進化の研究で知られる宮城島進也博士(国立遺伝学研究所)にご講演いただきました。

講演要旨:真核生物による葉緑体つまり光合成能の獲得は、真核細胞内へのシアノバクテリア(光合成を行うバクテリア)の一次共生(紅藻、緑藻、植物の共通祖先)の他、それによって生じた真核藻類の二次共生により(褐藻、渦鞭毛藻、ミドリムシなどのそれぞれの祖先)様々な系統で独立に何度も起きたことが知られています。また、細胞内に取り込んだ単細胞藻類を数週間から数ヶ月間、葉緑体のように利用した後に消化する単細胞生物(盗葉緑体性生物)、長期にわたって任意共生させる単細胞生物が多くの系統で見つかっており、葉緑体の成立は、単細胞真核細胞による単細胞藻類の捕食、一時的保持、恒久的保持という順の進化の結果だと考えられています。
 細胞内共生体による光合成は、宿主真核細胞に独立栄養能を与える一方で、活性酸素種の発生により宿主細胞に酸化ストレスを与えます。本講演では、光合成酸化ストレスに対する対処機構が、光合成生物の捕食の段階から進化した可能性を紹介します。また、近年の研究により、光合成真核生物は成立当初まで混合栄養性(光合成と捕食の両方を行う)であったことが明らかとなりました。つまり、光合成による独立栄養と、捕食による従属栄養を両立させそのバランスを変化させる能力が、光合成能の獲得を可能としたと考えられます。そこで我々は、このような代謝の可塑性を調べるためのモデル研究系の開発を進めており、その進捗についても紹介します。