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第26回共生進化機構先端セミナーをオンライン開催しました。

海産無脊椎動物の研究で知られる遊佐陽一博士(奈良女子大学)にご講演いただきました。

講演要旨:嚢舌類(のうぜつるい)はウミウシの仲間で,巨大細胞をもつ餌の海藻から細胞内容物を吸い取り,葉緑体だけを消化せずに自分の細胞の中で数日から数か月維持して光合成に利用する。これは盗葉緑体現象とよばれ,扁形動物の2種以外には,動物では嚢舌類だけがもっている特性である。今回のセミナーでは,まず盗葉緑体の意義や生態学的な波及効果についての研究を紹介する。盗んだ葉緑体の効果は,その個体自身だけでなく,世代や種を超えて及ぶことが明らかになった。また最近,嚢舌類の2種で,動物界で今まで知られていなかった完全な心臓を含む体全体の自切と再生が発見された。そこで,この大規模再生の実態や考えられる意義について述べ,その後の研究の進展について紹介する。さらに,嚢舌類を動物による光合成や再生のモデル生物として利用するために行っている,卵から成体までの完全飼育系の確立についても紹介する。