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第19回共生進化機構先端セミナーをオンライン開催しました。

昆虫による虫こぶ形成に関する最新知見について、徳田誠博士(佐賀大学)にご講演いただきました。

講演要旨: 植食性昆虫の中には、植物組織を単に摂食するだけでなく、自身の生存のために様々に改変して利用するものが知られている。昆虫による虫えい(ゴール)形成はその典型例である。古くから、虫えい形成にはオーキシンやサイトカイニンなどの植物ホルモンが関与していることが指摘されており、近年の研究から、昆虫自身が体内でこれらの植物ホルモンを合成していることが明らかになってきている。昆虫における植物ホルモン合成能の起源を明らかにする目的で、さまざまな陸生節足動物の体内に存在する植物ホルモンを定量した結果、これまで想定されていたよりも広範な陸生節足動物が体内に植物ホルモンを有していることが明らかになった。とくにオーキシンは、分析したすべての陸生節足動物から高濃度で確認された。一方、サイトカイニンは一部の分類群でのみ確認され、虫えい形成者における内生量が有意に高いことが明らかになった。また、演者らによる最近の研究から、虫えい形成者以外の植食性昆虫も植物ホルモンを用いて植物を操作していることが強く示唆されている。これらを含め、演者らが現在取り組んでいるこれらの研究について紹介する。